交通違反による社会貢献

(2026.09.30 No.226)
9月15日に令和8年度地方財政審議会が開催され、
「令和8年度9月期交通安全対策特別交付金の額の決定」
について審議されました。
この内容は道路交通法附則第21条の規定に基づき、交通安全対策特別交付金の交付に際し、審議するものでした。
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/chizai/02zaisei02_04001397_00968.html

●地方財政審議会とは
地方交付税、地方譲与税、各種交付金、地方公共団体の翌年度の歳入歳出総額の見込額等に関し、
法令によりその権限に属させられた事項を審議し、
総務大臣に必要な勧告をする

という役割があり、5名の委員によって審議されます。

地方財政にとって一番金額が大きい項目が「地方交付税」(2026年度約19兆円)ですが、その他いろいろな名前の資金があり、それぞれ法令によって地方財政審議会に諮ることになっています。

●「交通安全対策特別交付金」とは
交通反則通告制度に基づき納付される反則金収入を原資として、地方公共団体が単独で行う道路交通安全施設整備の経費に充てるための財源として交付するものです[1]。
交付金の使い道は道路交通安全施設の設置です。
(例示)
・信号機
・道路標識
・横断歩道橋
・さく(ガードフェンス、防護柵)
・道路反射鏡(カーブミラー)

図1. 交通安全対策特別交付金の流れ([1]より引用)

●法律・政令・省令
まず「道路交通法」[2]によって、
・交通安全対策特別交付金(附則第十六条)、
・交付の基準(附則第十七条)、
・交付の時期及び交付時期ごとの交付額(附則第十八条第一項)
などが定められて、
・その結果について地方財政審議会の意見を聴く(附則第二十一条)
ことになっています。
今回の審議会の議題がこれにあたります。

さらにこの法律を実行する具体的な条件を政令[3]と省令[4]によって規定しています。

●交付額はどうなるか?
道路交通法ではこの交通安全対策特別交付金を毎年3月(2月~7月の収納分による)と9月(8月~1月の収納分による)の2回に分けて交付することになっています。

資料[5]にあるように、具体的な交付額の算出は少し複雑ですが、要するに、
・交通事故の発生件数:重み2
・人口集中地区の人口:重み1
・改良済道路の延長:重み1
で分配する形です(政令[3])。
また上記の件数や道路長に誤りがあった場合の再計算の方法も指定されています(省令[4])。

けっこうめんどうな計算となりますが、各都道府県への”公平な”分配のためには必要な段取りなのでしょう。

●実際の交付額

2026年9月分の総額は180億円でした。
これを1,470団体(都道府県・特別区・市町村)に配分します。
一番交付額が大きかった東京(11億)から最少の鳥取(4千5百万)までの幅があります。
年間予算で考えるとこのおよそ倍の額が交付されることになります。

●交通違反が減ると交付金も減る?
交付金の原資は交通の反則金です。違反件数(金額)が多いほど原資が増えます。
逆に住民が安全運転を意識して違反が減ると、整備予算が減ることになります。

しかし交通違反の件数と、道路の安全整備は必ずしも因果関係があるように見えません。
はたして現在の交付の考え方は理にかなっているのでしょうか。

9月15日の地方財政審議会でも次のような質問が出ました。

(委員)交付金の算定にあたり、交通事故件数、人口集中地区人口及び改良済道路延長を配分指標としているが、それらの指標を用いることは適切なのか。

(回答)地方公共団体における交通安全施設整備事業の決算額と各配分指標との間には高い相関関係があることから適切であると考えている。

具体的にどういう相関関係かははっきりしませんが、事故件数、人口、道路長が交通安全に大きく影響するだろうということは想像できます。

●実際に安全整備費はどうなっているか?
では具体的にどのくらい反則金が収納されているか(反則件数)、どのくらい交通事故が発生しているかを年別に示したものが下図です。

図2. 反則告知件数と交通事故発生件数の推移([6][7]より筆者作成)

また反則告知件数に比例して交通安全対策特別交付金も変動します。交付金以外に国土交通省などが道路の交通安全施設に対する投資をおこなっていますので、総合的に見る必要があります。
下図はその両方の資金の推移を図示したものです。

図3. 交通安全施設等投資総額(交通安全対策特別交付金含む)の推移([8][9]より筆者作成)

これらのグラフからわかるように、たしかに反則件数の減少とともに特別交付金は減少していますが、それにかわって国土交通省などの整備費用が増えていて、総額ではかなり増額されていることが見えます。

ひとまず全国の道路の安全対策については着実に手が打たれているものとして安心できそうです。

●反則すれば社会貢献?
反則金が交通安全施設の整備に使用されていることはあまり知られていないのではないかと思います。
だからといって交通規則を破ることは推奨されません。

さいわい図2をみるかぎり、反則件数も交通事故件数も年々減少しているようです。これは喜ばしい傾向でしょう。

最近では、老人による暴走事故、モペッド(moped)や自転車など軽車両による事故、野生動物との衝突事故なども目立ってきた気がします。
反則金の決め方やその使い道についても、そのような社会の変化にあわせて柔軟に考えてゆくのがよいと思います。■

[1] 令和8年度地方財政審議会(9月15日)資料 https://www.soumu.go.jp/main_content/001093017.pdf
[2] 道路交通法(昭和三十五年法律第百五号) https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105#Mp-Ch_3-Se_2-At_22_2
[3] 交通安全対策特別交付金等に関する政令(昭和五十八年政令第百四号) https://laws.e-gov.go.jp/law/358CO0000000104/
[4] 交通安全対策特別交付金の算定に関する省令(昭和六十二年自治省令第十三号) https://laws.e-gov.go.jp/law/362M50000008013/
[5] 交通安全対策特別交付金制度の概要(平成29年度) https://www.soumu.go.jp/main_content/000513271.pdf
[6] 内閣府「交通安全白書」 https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/index-t.html
[7] e-Stat「交通事故の発生状況 」 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00130002&tstat=000001027457
[8] 警察庁「内閣府、総務省及び財務省所管交通安全対策特別交付金に関する情報開示」 https://www.npa.go.jp/policies/budget/tokubetsu/index.html
[9] 警察庁「交通安全施設等投資額及び交通安全施設等の推移」 https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/seibi2/annzen-shisetu/institut/2026_shisetsusuii.pdf

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