何がめでたい

(2026.09.27 No.225)
総務省は、「敬老の日」(9月21日)を迎えるに当たって、統計からみた我が国の高齢者のすがたについて取りまとめました。
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukei02_01000021.html
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1490.html
●絶妙な年中行事
総務省統計局は毎年のこどもの日(5月5日)と敬老の日(9月第3月曜日)にあわせて、それぞれ日本のこどもの人口統計と、高齢者の人口統計のトピックスを発表しています。
春と秋の時期は年中行事として絶妙の間隔とタイミングですので、統計局の担当者は成果発表のために毎回しっかり準備していることでしょう。
「国民の祝日に関する法律」における「敬老の日」は、
多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う。
と定義されています。
統計データの上ではどのような高齢者の姿が見えるでしょうか。
●”高齢化”のお国ぶり
統計局の発表[a]では次の通りです。
・65歳以上人口は3624万人と前年に比べ2万人の増加
→総人口に占める割合は29.6%と過去最高
・日本の65歳以上人口の割合は、世界で最高(39か国中)
諸外国と比較すると、わが国の高齢者の状況がよくわかります。

日本はもちろん世界一の高齢国と言ってよいですが、65~74歳の層の比率(約11%)はあまり変わらないことを考えると、特に75歳以上(いわゆる後期高齢者)の比率の高さが目立ちます。
下図は1950年以降の高齢者比率の推移を示します。

人口推移は急速には変わりませんので、2070年まで予測してもそれほど外れないものです。
日本は団塊の世代の後に人口が増えていないため、1980年以降に高齢化の波が他の国より比較的早く出現したと見られます。高齢者の寿命が伸びたことも影響しているのでしょう。
中国、韓国、イタリアなども後を追う形で高齢化の波が現われて、2070年には日本を追い越す見込みです。
一方、他の欧米諸国(米、英、仏など)は極端な高齢化の波が見られず、同じような緩やかな増加傾向です。
図2を見て、人口構成から社会の成り立ちまで想像されて、なかなか面白いものです。


●老骨に鞭打って
高齢者の就業状況は下記のようにまとめられています[2]。
・65歳以上の就業者数は、22年連続で増加し943万人と過去最多
・就業者総数に占める65歳以上の就業者の割合は、13.8%と過去最高
・65歳以上の年齢階級別就業率は、いずれも過去最高に
・日本の65歳以上の就業率は、主要国の中でも高い水準
・65歳以上の役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は76.1%
・主な産業別に65歳以上の就業者数をみると、「卸売業,小売業」や「医療,福祉」などで多い
70~74歳に限ると3人に1人は働いている勘定です(36.2%)。(75歳以上は8人に1人。)
この傾向は昨年(2025年)の発表とあまり変わっていません。
最近はずっとこの状況が続いているということです。
●働く理由
わが国の高齢者(65歳以上)の就業率が高いのは、いろいろ理由が考えられます。
高齢社会白書[3]にはその理由を調べた結果が載っています(60歳以上の2,188人回答)。
「収入を伴う仕事をしている理由」
・収入のため:55.1%
・能力を生かせる/仕事が面白い/人とのつながりのため:計20.2%
・体によいため:20.1%
一番の理由は”生活資金のために働かざるを得ない”と言えるでしょう。しごく当然の理由と考えられます。
第二の理由は”労働は生きがい”です。外に出て、何か働くことによって社会と結びついている、役立っているという実感がほしいというわけです。

●政策の効果はあったか?
2013年に導入された「高年齢者雇用確保措置」(高年齢者雇用安定法第9条)によって、企業は65歳までの安定した雇用を確保するように義務づけられました。
この措置が高齢者の働きにどのような影響を与えたかについて、いくつかの論文が書かれています[4][5]。
いずれも、ある程度の政策効果は認められるが、限定的あるいは条件付きの結論となっています。やらないよりは良かった、くらいの評価と言えます。
●何がめでたい
”多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う。”
敬老の日の定義はたいそう優しい文章です。
しかし現実の社会は優しくはありません。
作家佐藤愛子氏が著書に「九十歳。何がめでたい」と名付けて、祝うばかりではない憤懣を書いています。
他方、「三十歳。何がうれしい」という本が出てきてもおかしくなさそうです。20~40歳台の世代の声があまり聞こえてきません。SNSの中でささやかれて埋没しているのでしょうか。
世代間の意識のずれ、不安や不満などがもっとあからさまに出てきたほうが、社会の変革にはよいのではないかと思います。■
[1] 高齢者の人口(人口推計、World Population Prospects) https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topi149_01.pdf
[2] 高齢者の就業(労働力調査、OECD.Stat) https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topi149_02.pdf
[3] 令和7年半高齢社会白書 第1章 高齢化の状況 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2025/html/zenbun/s1_3_1.html
[4] 近藤絢子他「論文プレビュー:企業に向けた政策で高齢者就業は促進されるのか?」(2019.11.21)、東京大学政策評価研究教育センターCREPEフロンティアレポートシリーズ https://www.crepe.e.u-tokyo.ac.jp/material/crepefr11p.html#cha
[5] 北村智紀「厚生年金の支給開始年齢引き上げと2013 年高年齢者雇用安定法改正の高齢者雇用に与える効果」、統計研究彙報第75号(2018年3月) https://www.stat.go.jp/training/2kenkyu/ihou/75/pdf/2-2-751.pdf
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