第二の人生

(2026.10.06 No.227)
10月2日に内閣官房内閣人事局から次の2つの発表がありました。
①「国家公務員法第106条の25第1項等の規定に基づく国家公務員の再就職状況の報告(令和8年4月1日~同年6月30日分)」を公表しました。
②「国家公務員法第106条の25第2項等の規定に基づく国家公務員の再就職状況の公表について(令和7年4月1日~令和8年3月31日分)」を掲載しました。

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/106-25-1/r08/houkoku_1002.html
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/106-25-2/r08/kouhyou_1002.html

国家公務員は退職後に再就職した場合に届出を提出することになっており、その集計結果(離職時の年齢、離職時の職場、再就職先の組織名・職務内容など)を示したものです。
①は4半期ごとの速報、②は年度単位でまとめた情報です。

●国家公務員の再就職問題
民間企業と同じく、国家公務員にも定年があります。
定年後の再就職先を探すのはなかなかたいへんです。自分のスキル、経験、収入見込み、さらにやりがいといったさまざまな要素が絡んできます。

とはいえ、公務員が勝手に再就職先を探すことは許されていません。
昔から”天下り”が官民癒着の利権構造の元凶と批判されてきました。

1990年代道路公団接待汚職や防衛庁調達実施本部問題などにより、天下り・官民癒着問題が公務員制度改革の課題になった
2000年代前半道路公団・公共工事等をめぐる談合・再就職問題などにより、公共事業への疑念が拡大
2005~06年橋梁談合など大型談合事件により、天下り幹部による官製談合が問題視された
2006年防衛施設庁官製談合事件により、「OBの再就職先確保」と「公共工事の配分」との結びつきが明らかになった
2007年緑資源機構事件は農林水産省を巻き込む談合事件となり、農水大臣の自殺と緑資源機構の解体に発展
2007年6月再就職(天下り)規制と能力実績主義を柱とする国家公務員法等の一部を改正する法律案(閣法第 96 号)が成立。再就職等監視委員会と官民人材交流センターが設置。
2017年文部科学省のOBによる組織的な再就職あっせん(天下り)問題が発覚。公務員法の抜け穴をふさぐ改正がおこなわれた。
表1. 天下り・汚職・談合に関わる事件

●3つの規制と届出義務
この法律改正によって国家公務員には次の義務が課せられました(国家公務員法第106条の2~4)[1]。
1.「現職によるあっせん規制」
2.「在職中の求職活動規制」
3.「OBによる働きかけ規制」

具体的には下図に示されている通りです。

図1. 3つの規制([2]より引用)

また再就職に関する情報を届出する義務もあります(図2)。届出義務違反については、懲戒処分・過料の対象となります(たとえば1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金。)

図2. 再就職情報の届出制度([2]より引用)

再就職等規制違反については、再就職等監視委員会や任命権者の調査を経て、懲戒処分等の厳格な対応が行われています。違反行為が認定されて、違反者が再就職先を退職することとなった事例もあるそうです。

●速報と年度報告
今回の発表①は2026年度第1四半期分の再就職届出をまとめたものです。各省庁ごと、再就職先ごとの集計、及び具体的な再就職者リストです。
この届出は本省の課長補佐クラス以上のいわゆる管理職職員が対象です。特定地方警務官(”たたきあげ”で昇任し、警視正以上の階級にある警察官)、独立行政法人で国家公務員に準じる職員も含みます。

●再就職先はどのように変化したか
今回の2025年度報告を公務員法改正直後の2009年度版と比較してみました。

2009年度[3]2026年度
・届出合計1,413件
・再就職先は
  公益法人:462件(32.6%)
  営利法人:258件(18.2%)
  自営業:241件(17.0%)
・自営業(いわゆる士業)が比較的多い
・届出合計1,742件
・再就職先は
  営利法人:646件(37.1%)
  一般社団法人又は一般財団法人:326件(18.7%)
  その他の非営利法人:206件(11.8%)等
・営利法人への再就職が増加している
表2. 2009年度と2025年度の届出比較([3]等から作成)

下図は両年度の再就職先の区分です。

図3. 再就職先(2009年度届出)([3]より筆者作成)
図4. 再就職先(2025年度届出)(②より筆者作成)

●国家公務員の離職年齢は変わってきたか
また離職時の年齢を比較してみると、下図のようになります。
2009年度は59歳と60歳がピークで、それに向けて54歳頃から急速に伸びています。40歳台と61歳以降にもありますが、目立つほどではありません。

一方、2025年度も同様な形ですが、61歳、62歳もいくぶん数があります。これは公務員の定年延長の効果でしょうか。
また40歳台、50歳台もそれなりの数に見えます。転職がこれらの中堅世代に少しずつ拡がっていることがうかがわれます。

図5. 離職年齢(2009年度届出)([3]より筆者作成)
図6. 離職年齢(2025年度届出)(②より筆者作成)

●官民人材交流センターは活用されたか
2009年度と2025年度を比較すると、届出をした人のうち、官民人材交流センターを利用したとする人が、17.2%(2009年度)から3.6%(2025年度)と減少しています。
センターの活動は着実に実施されているようですが、利用者が少ない理由はよくわかりません[4]。民間の人材あっせん会社とも連携しているので、あっせんの質・量とも遜色ないと思われます。
おそらく自分の人脈を使って再就職先を探しているのかもしれません。規制を受けるのはあくまでも「利害関係企業等」への求職活動ですから、無関係な企業等への個人的なアプローチは可能です。

●さまざまな第二の人生
届出にあった1,000名余の再就職先のリストを眺めていると、国家公務員の第二の人生がいろいろ見えます。
法務省や財務省などで専門的なスキルを持っている人は、弁護士、税理士などの肩書で転職しています。
厚生労働省の人は医療法人の医師や事務局長、特許庁の人は弁理士事務所等に転身しています。
やはり専門の資格を持っていると転職には強みになります。

しかし在職中に直接、所管した業界ではなく、少しだけ離れた分野に再就職している人のほうが多いのではないでしょうか。
国家公務員は数年ごとに職場を異動しますから、多方面の業界を知っていることが、第二の人生には有利に働きそうです。■

[1] リーフレット「国家公務員が知っておかなければならない「再就職に関する規制」と「再就職情報の届出制度」」 https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/2601_saishushoku_manual.pdf
[2] リーフレット「転職や再就職のために求職活動をしようとする職員の方へ」 https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/2601_kyushokukatsudo.pdf
[3] 2009年度 https://www.soumu.go.jp/main_content/000087706.pdf
[4] 令和7年度内閣府官民人材交流センターの事務の運営状況等に関する報告 https://www8.cao.go.jp/jinzai/pdf/gaiyo_public/kikaku_r7unei.pd

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