熱中する時代

(2026.06.27 No.205)
総務省は6月23日に、
「令和8年5月の熱中症による救急搬送状況」
を公表しました。
https://www.soumu.go.jp/main_content/001078118.pdf

消防庁では各都道府県の消防防災の管轄部門宛に”熱中症による救急搬送人員”の報告を依頼し[1]、毎年5月~9月の期間に週ごと、月ごとに集計した結果を公表しています。

●国の熱中症対応
昔は日射病とか熱射病とよばれていたので、こちらの名称のほうがなじみがあるのですが、広く”環境”や”行動”の要因によって体温調整がうまくゆかなくなる症状を熱中症とよぶようになりました。2000年頃からこの名称に統一されたようです。

国は熱中症予防に必要な対策を総合的、計画的に推進するため、2021年から「熱中症対策推進会議」を開催し、環境省が事務局となり、厚生労働省、文部科学省など11省庁がこれに参加しています。「2030年に熱中症死亡者半減」を目指しています[2]。

環境省、厚生労働省、気象庁、総務省消防庁、こども家庭庁などではそれぞれ熱中症の予防・対策の情報を公開しています[3]。

●対策の効果は上がったか
2021年から熱中症に総合的に取り組んできましたが、果たしてその効果はあがっているかが問いになります。

今回の消防庁の救急搬送の状況(図1)をみると、好転しているとはいえません。
また熱中症による死亡者数(図2)も令和に入ってから高止まりしているように見えますので、安心できません。

図1. 熱中症による救急搬送人員の推移(2008~2026年)([4]より引用
図2. 熱中症による死亡者数の推移(2007~2015年)([5]より引用)

●どのような年代が、どこで、どのように
2025年夏期の状況をまとめた発表[6]から年齢区分、傷病程度、場所が読み取れます(図3)。

図3. 熱中症による救急搬送状況(令和7年)([6]より引用)

圧倒的に高齢者(65歳以上)が多く、搬送された時点で比較的軽度の症状が多いという結果です。また場所は住居が多く、道路やその他の屋外が続いています。

都道府県別でも特徴が現れています(図4)。

図4. 2025年都道府県別救急搬送人員(熱中症)([6]より引用)

ここでは熱中症の搬送者数は東京及びその近郊の県、名古屋、大阪、福岡が多いのが目立ちます。コンクリートやアスファルト道路の照り返しが熱中症のリスクを高めます。
また茨城県、埼玉県、千葉県、兵庫県あたりが続いていますが、これらは農地も多い地域です。屋外での農作業によるものでしょうか。
屋外・屋内でなにかに”熱中”していると、熱中症リスクを忘れてしまうのでしょうか。

●平均気温は確実に上昇
気象庁のデータ[7]は東京の平均気温を約150年間にわたって記録したものです。5月だけをみたものと、年平均気温をみたものを並べました。
これを見るかぎり、明治時代と比較して約4℃ほど気温が上昇しています。
東京という都市では、近代化とともに田畑や土の道路の減少が進み、熱が放散しにくくなったことも理由の一つになるでしょう。

図5. 東京の気温推移(1876-2026)([7]をもとに筆者作成)

●屋外活動ができなくなる未来
最近ではISO国際標準になっている「暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature:WBGT)」(気温に湿度、日射等を加味した指標)が熱中症予防に使われています。
この暑さ指数にしたがって「熱中症警戒アラート」が発表されます。28℃を越えると厳重警戒となります。
今世紀末には西日本の8月はWBGTが31℃を越えるため、ほとんど「原則運動中止」となる予想も出ています[8]。

●欧州の熱波
折しも今年の欧州は熱波に見舞われていて、エアコンをめぐって政治論争まで起きているそうです。エアコンが普及すると、かえって地球温暖化が進むという理屈です。

わが国ではもう少し現実的な姿勢をとって、高齢者には積極的にエアコンを使用するように勧めています。■


[1] 消防庁「夏期における熱中症による救急搬送人員の調査」の開始について(依頼)(2026年4月22日) https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r8/heatstroke_chousa_kyu119.pdf
[2] 熱中症対策実行計画(2023年5月30日閣議決定) https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/rma_doc/20230530/ap_main.pdf
[3] 各省庁の熱中症関連サイト https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/
[4] 消防庁「令和8年5月の熱中症による救急搬送状況」(2026年6月23日) https://www.soumu.go.jp/main_content/001078118.pdf
[5] 第9回熱中症対策推進検討会(2026年3月11日)資料4-1 熱中症による死亡者数について https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/sg_pcm/R0701/doc04-1.pdf
[6] 消防庁「令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」(2025年10月29日) https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r7/heatstroke_nenpou_r7.pdf
[7] 気象庁・過去の気象データ 東京(東京都)日平均気温の月平均値 https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/monthly_s3.php?prec_no=44&block_no=47662
[8] 第1回熱中症対策推進検討会(2026年11月28日)資料3-2 日下博幸「日本の気候の現状について」 https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/sg_pcm/R0401/doc03-2.pdf

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