シンママ、シンパパ

(2026.07.31 No.211)
なんでも言葉を省略するのが日本人の特質かもしれませんが、シンママ(シングルマザー)・シンパパ(シングルファザー)はまさしくひとり親家庭の世帯主を意味する日本独特の言葉です。
総務省は7月31日に「ひとり親家庭等の支援に関する調査<結果に基づく通知>」を公表しました。2025年7月~2026年7月の期間の調査にもとづきます。
前回と同様、総務省の行政評価局が行政の実態を調査して、主たる担当である「こども家庭庁」に対して要請をおこなったものです。
●背景
調査報告書[1]によれば、ひとり親家庭等は約134万世帯で、一般世帯に比べて年間就労収入が低く、養育費の受給率も約28%と低い状況です。
これに対して国が推進しているひとり親家庭等に対する支援の認知状況や利用状況は、総じて低いと見られています。
そこで、地方公共団体における実態を調査するとともに、アンケート・インタビューを実施しました。
●調査結果
都道府県(5)、市区町村(28)を対象として調査した結果は次の通りです。
①アンケートにより4つの支援事業の認知度と利用希望を把握した結果、「需要はあるが知られていない」実態がみられた。
②児童扶養手当の現況届について、
・国の通知では対面以外の提出も可とされている
・また、電子申請での提出を希望するひとり親家庭等が半数以上である
・しかし対面のみとしている地方公共団体があるなど、地方公共団体における取組と、ひとり親家庭等が求める支援にギャップが存在している。
●総務省からの提言
このため、こども家庭庁、法務省に対し、
①SNS等の活用促進や、情報掲載の工夫事例の提供などにより、地方公共団体の周知活動を支援すること
②児童扶養手当の現況届について、対面以外の方法による提出の周知を行うこと
を要請しました。
●ひとり親家庭の現状
実態をまとめると、
- 母子世帯 119.5 万世帯、父子世帯 14.9 万世帯
- 母子世帯数は、1988年の 84.9 万世帯から、およそ30年間で約1.4倍に増加
- 母子世帯の約半数が非正規雇用であり、父子世帯と比較して平均年間就労収入が半額程度(236万円)
- 母子世帯における養育費の受給率は3割未満
- ひとり親家庭等の相対的貧困率(注)は 44.5%と高い状況(わが国の相対的貧困率は、全体が 15.4%、こどもが 11.5%)。
- OECD 加盟国における相対的貧困率のOECD平均は、全体が 11.4%、こどもが 12.4%、ひとり親家庭等が 31.1%となっており、国際的にみても高い状況。
(注)大多数の人より経済的に貧しい状況を指します。世帯の所得がその国の等価可処分所得(手取り収入を世帯人数で調整したもの)の中央値の半分(貧困線)に満たない状態と定義します。日本の場合、貧困線は単身家庭で127万円[2]、四人家族で254万円[3]。
●わが国の問題の縮図
このような状況をみると、ひとり家庭の問題はわが国が抱える問題の集約のように感じられます。
・そもそもひとり親家庭は離婚等の増加が原因(社会的な問題)
・養育費の受給率が低いのは離婚時の取り決めの実効性が乏しいことが原因(法律的な問題)
・ひとり親家庭、特に母子家庭の収入が低いのは雇用条件の問題(雇用問題)
・収入増をはかるための教育訓練の問題(就労教育の問題)
・子どもを預かる等の体制の不備(見守り支援の問題)
等々です。
今、給付とか消費税減税の話題が出ていますが、ひとり親家庭にとってどれほどの意味があるか考えてみる必要があります。

●役所の対応
「児童扶養手当」や「医療費助成」をはじめとして、厚生労働省[4]やこども家庭庁[5]などはさまざまな角度からひとり親家庭の支援を施策として実行しています。東京都も専門のサイトを開設しています[6]。
それらはそれぞれきめ細かく設計されていて、有効性も期待できるものかもしれません。
しかし、今回の調査報告書には、実際に役所の窓口で手続きする際のいろいろ問題が指摘されています。
おおまかに言うと、手続き自体の「言葉の難しさ」と、「オンライン化の遅れ」の問題です。
役所の人員数の減少と、申請者の増加のために、窓口で丁寧に対応をするというのはもはや限界に近づいています。
●AI対応への期待
2020年以降はパソコンやスマートフォン越しにオンライン会議を開催することにも慣れてきました。
忙しいひとり親家庭にとって、役所に出向くこと自体が大きな負担になりますので、オンライン化の徹底を推進すべきでしょう。そのほうが役所にとってもコスト削減ができます。
数少ない役所の人的リソースを、本当に対話を必要とする悩みを抱えた対象者に向けるべきでしょう。
また用語の難しさや手続きの煩雑さは、AIがサポートすることでかなり改善できるのではないかと考えます。
役所の担当者でもすべての施策の細かい点を把握しているわけではありません。無尽蔵の資源を持つAIこそ正確なナビゲーションができそうです。
個々のひとり親家庭ごとに異なる背景や条件がありますから、それらをふまえて対話形式でAIに相談するのがよさそうです。支援策のお勧めを作ったり、申請書の自動作成くらいまではやってくれそうです。
なにより24時間対応してくれます。
●シン・○○
シンママ、シンパパという言葉もそのままではなく、
「シン・ママ」、「シン・パパ」
と書き換えると、なにやら新しい雰囲気を感じないでしょうか。■
[1] 総務省「ひとり親家庭等の支援に関する調査 結果報告書」 https://www.soumu.go.jp/main_content/001084750.pdf
[2] 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/14.pdf
[3] 豊岡市における相対的貧困率の算出について https://www.city.toyooka.lg.jp/res/projects/default_project/_page/001/007/153/soutaitekihinnkonnlitsu2.pdf
[4] 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000062967_00003.html
[5] こども家庭庁 https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya
[6] 東京都 https://www.single-ouen-navi.metro.tokyo.lg.jp/
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