土地の話

(2026.07.17 No.208)
7月10日に国土交通省から3つの白書がまとめて発表されました。
「土地白書」[1]
「首都圏白書」[2]
「交通政策白書」[3]

ここでは国土の基本情報である「土地白書」に注目しました。

この白書は土地基本法(平成元年法律第84号)にもとづいて、
 令和7年度の土地に関する動向
 令和7年度に講じた基本的な施策
 令和8年度において講じようとする基本的な施策
について第221回国会(特別会)に報告されたものです。

●東京、大阪の土地価格は上昇
たいていの人が関心を持つ土地の値段についての情報です。
土地価格の動向は地域によって差が大きいので、地域別にみる必要があります。

まず三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)については、
・全用途平均・住宅地・商業地いずれも5年連続で上昇
・東京圏、大阪圏ではいずれの数値も上昇幅が拡大
・名古屋圏はいずれの数値も上昇幅が減少

東京、大阪の上昇が加速しているのに比べて名古屋の勢いがやや低下しているようです。
下図は全国、東京圏・大阪圏・名古屋圏、地方大都市、地方圏その他に区分した上昇率のグラフです。

明らかに名古屋圏の失速が見えます。
また地方圏はほぼ横ばいですが、その上昇率は物価上昇率より低いので、実質的には減少と見られます。

土地価格の勢いはやはり東京圏、大阪圏の大都市集中によるもので、その他の地域は横ばいに近いと考えてよいでしょう。

図1. 地価変動率の推移([1]より引用)

●土地取引は減少傾向
令和8年度の企業の土地投資は全産業にわたって減少傾向です。
業況感を示すDI(DiffusionIndex)もマイナスを示しています。

●宅地の供給は減り続けている
2022年度の全国における宅地供給量は4,099ha(2020年度比9.4%減)となっています。
さらに開発許可面積や土地区画整理事業認可面積も年々減少しています。
最近の少子高齢化や単身者増加といった社会背景から、もはや新たな宅地は必要とされていないと考えてよさそうです。
このことは「圏域別新設住宅着工戸数の推移」のグラフにおいて、着工戸数が減少していることからも裏付けられます。

●工場の面積は増加している
「工場立地件数及び立地面積の推移」を見ると、件数はほぼ横ばいですが、面積は著しい増加となっています。
一工場当りの面積が大きくなっているという状況です。
わが国の経済状況を考える上で面白い現象です。

●都市部のオフィスは売り手主導
2024年度を境に都市部のオフィスの賃料は上がり、空室率は下がり続けています。
特に東京都心(5区)の変動は大きい。
オフィスについては売り手主導と言えるのではないでしょうか。

●新築マンションの価格は天井
東京圏、近畿圏とも平均価格は2023年度より急上昇を続けています。
しかしマンションの在庫戸数と契約率については、首都圏は2023年度より在庫増加と契約率低下がみられます。近畿圏も2025年度から同じ傾向がみえ始めました。

●中古マンションはなお高騰
2025年度まで中古マンションの成約件数と成約平均価格は上がり続けています。まだ落ち着いていない状況です。

●海外投資家の不動産投資は急増
2025年は2兆1,445億円であり、前年比で約128%増加しました。また、国内不動産投資額に占めるインバウンド投資額の割合は34.5%であり、これも前年の17.1%と比べてほぼ倍増となっています。
海外投資家の動きは急速です。

●増加する低未利用土地・不動産
政府として頭の痛いのは空き地・空き家の問題です。
いくつかの課題に分解してみると、
・所有者登記、相続等の法制度
・固定資産税等の税制
・空き地・空き家利用の方策
のようになるでしょう。

法整備については遅きに失すると言われても仕方ないですが、無策のままよりは少しは進展しています。
今後はそれらの制度を実際に適用していく速度と、空き地・空き家が増えていく速度の競争となります。
他方、空き地・空き家の再利用については地方自治体やNPOが工夫しながらいくつかの試みを実施しています。
こういう取り組みと、若い世代が住居を得にくいという問題とをうまくつないでいくことができれば、一石二鳥の成果が得られそうです。

●理想的なダイエット方法
土地というのは国家を構成する最も基本的な要素です。
土地白書はわが国の基本要素の現状を数値で示してくれます。
大都市、特に東京圏で土地の獲得競争がある反面、それ以外の地方は従来の維持にやっととどまっている、あるいは減退していることも明らかになりました。

末端の組織まで生き生きとしながら、無理なく全体がスリムにやせるという理想的なダイエット方法はないものでしょうか。■


[1] 令和8年版「土地白書」について https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo02_hh_000001_00116.html
[2] 令和8年版「首都圏白書」の公表について(令和7年度首都圏整備に関する年次報告) https://www.mlit.go.jp/report/press/kokudoseisaku03_hh_000275.html
[3] 「令和7年度交通の動向」及び「令和8年度交通施策」(交通政策白書)について https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo12_hh_000526.html

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