北方領土

(2026.05.29 No.201)
今回はこれまで取り上げてこなかった北方領土の問題について触れたいと思います。
5月15日に内閣府・北方対策本部で「北方領土隣接地域における地域一体となった啓発促進策の検討に関する有識者会議(令和8年度第1回)」が開催されました。
https://www8.cao.go.jp/hoppo/shiryou/kaigi/yuushikisya.html

北方対策本部は1972年に設置された本部で、その概要は内閣府ホームページに掲載されています[1]。

●北方領土問題のおさらい
1945年に旧ソ連によって占拠された北方四島、すなわち歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島、国後(くなしり)島、択捉(えとろふ)島について、ロシアとの平和条約を締結して日本への返還を求める活動です。
日本政府としては、歴史的事実と国際法上の根拠によってこの問題の解決を主張しています。

●北方対策本部の活動内容
対策本部としては、
「広報・啓発」
「四島への訪問活動」
「元島民への援護」
などの活動を主軸として、毎年度約17億円の予算をとって活動しています。
そのうちの14億円余は独立行政法人「北方領土問題対策協会」※の運営費です。

※北方地域に関する諸問題についての国民世論の啓発並びに調査及び研究を行うとともに、元島民に対し援護を行う、内閣府所管の独立行政法人[2]。

5月に入ってから連続して発表された広報は対策本部の活動を示しています。
「北方領土隣接地域における地域一体となった啓発促進策の検討に関する有識者会議(令和8年度第1回)」(5月15日)[1]
「北方領土に関する要請」(5月19日)[3]
「北方領土隣接地域への修学旅行誘致促進のための下見ツアーの参加者募集について」(5月20日)[4]
https://www8.cao.go.jp/hoppo/kyoiku/pdf/shitami2026.pdf

●有識者会議の中身
その名の通り、北方領土の”啓発活動”をどのように進めるのか、外部の有識者(5名)に議論してもらう場として、2025年度から開催されています。北海道・1市4町・関係団体・関係省庁もオブザーバー参加しています。2025年度末には1年間の討議結果を「中間取りまとめ」という形で公表しています[5]。

啓発活動の主軸は根室市はじめ関係自治体に外部の関心を向けるかにあります。そのために北方領土問題の広報だけでなく、観光ルート開発、修学旅行コース開発などを積極的におこなっています。

●関心の偏り
北方領土問題対策協会によって毎年度「北方領土に関する全国スピーチコンテスト」が開催されていて、全国の中学生が応募しています。
大臣賞や特別賞の受賞者名簿を見ると、出身地が島根県、佐賀県、宮崎県などの地域が多く、東京都はじめ大都市圏の生徒は見当たらないようです(応募者全体については不明)。生活環境の違いか、教育方針や指導教員の分布の違いかはわかりませんが、この世代の関心の偏りはあるかもしれません。

このコンテストに限らず、北方領土については大半の日本人は無関心になりがちです。自分の家族が関係しているとか、社会に影響が出ているといった身近な話題ではないためです。

図1. 世論調査結果([6]より引用)

図1は2025年度有識者会議資料からの引用で、若い世代ほど北方領土への関心が薄いことを示しています。

同様に竹島問題や北朝鮮拉致被害に対しても、明らかに日本の主権がないがしろにされていて、マスメディアで繰り返し報道されているにもかかわらず、個人レベルでの関心は高いとはいえないでしょう。

●要求の継続という戦術
北方領土、竹島、拉致被害のいずれも今のところ外交上の決め手はありません。
わが国としては、ただひたすら抗議や返還要求を声に出すことしかできません。そして残念ながら、今のところ相手の姿勢はまったく変わりません。
(沖縄の米軍基地問題は安保条約という糸口があるだけマシといえるくらいです。)

しかしこのような意見表明をし続ける姿勢が次の段階への必要条件です。意見表明すらしなくなれば、日本がこれらの領土問題を放棄したと見なされるわけです。

●意識の変化はあるか
領土とか条約といった取り決めは、現実の国際情勢においてはいとも簡単に力によって破られるということを、第二次世界大戦とその直後だけでなく、最近のウクライナ侵攻でも私たちは見てきています。

さらに隣国の武力的な圧力について報道が多くなってきています。SNSを通じて過激な意見も多数出回っていることでしょう。
下図は最近よく見かける”南北を反転させた東アジア”の地図です。
ふだん見ている世界地図ではなく、こちらの地図を見ると、じわじわと日本の地政学上のリスクが感じられるのは不思議です。

図2. 南北反転の東アジア地図(Googleマップより引用)

[1] 北方対策本部について https://www8.cao.go.jp/hoppo/shisaku/honbu.html
[2] 独立行政法人北方領土問題対策協会 https://www.hoppou.go.jp/index.html
[3] 「北方領土に関する要請」(2026年5月19日)
https://www.cao.go.jp/minister/2602_h_kikawada/photo/2026_010.html
[4] 「北方領土隣接地域への修学旅行誘致促進のための下見ツアーの参加者募集について」(2026年5月20日) https://www8.cao.go.jp/hoppo/kyoiku/pdf/shitami2026.pdf
[5] 「中間とりまとめ」 https://www8.cao.go.jp/hoppo/shiryou/kaigi/pdf/260515_shiryou2.pdf
[6] 有識者会議・令和7年度第1回(2025年4月30日)資料3 内閣府北方対策本部説明資料 https://www8.cao.go.jp/hoppo/shiryou/kaigi/pdf/250430_shiryou3.pdf

Follow me!