レジデンシャルプロキシ

(2026.07.25 No.209)
”レジデンスなんたら”といった住宅販売の広告をよく見かけます。
なので、レジデンシャルプロキシと聞くと、なにやら高級なイメージの住宅サービスのように感じます。
この高級感を装うプロキシがやっかいな問題を引き起こしています。
●総務省と警察庁の対応
総務省と警察庁は7月21日に、
「家庭用IoT機器を悪用したサイバー攻撃への官民一体となった対策の推進について」
を発表しました。
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01cyber01_02000001_00293.html
https://www.npa.go.jp/news/release/2026/20260716001.html
この発表では、
・現在問題化している「レジデンシャルプロキシ(RP)」に対する対策をまとめた文書[1]と
・社会全体での対策の推進のため、多岐に渡る主体が連携して対応を協議する「レジデンシャルプロキシ対策アライアンス」[2]の設立
を明らかにしています。
●提供されるものと提供するもの
街頭で、販売員らしき人から、
”自動車に興味はありませんか?”
”アンケートにご回答いただければ景品を差し上げます”
”メールアドレスを登録して、今後も続けてアンケートに回答いただけるのであれば、さらに金券を差し上げます”
などと誘われるケースはありがちです。
そういう勧誘を受けても、さほど警戒心は抱かないのではないでしょうか。
目的が不審ではないので、メリットとのバランスを考え、メールアドレスを提供することに抵抗感が少ないためです。
●レジデンシャルプロキシのビジネス
RPは住宅にひも付いたIPアドレスを集め、提供するサービスです。たとえれば許諾契約を結んで電話番号を集めた電話帳サービスです。
RPのビジネスでは、
・インターネットでの価格調査、ニーズ調査
・広告配信状況の調査
・検索順位(SEO)の地域別確認
などが標榜されています。
世界的に住宅IPのデータベースが充実していれば、上のような市場調査にとって強力なツールになります。
有力なRP業者であるBrightData社は2万社以上の顧客を持ち、その中には有名企業や大学も含まれています。そのサイト[3]をみると、登録されているIP数は、
ブラジル 約530万IP
インド 約520万IP
アメリカ 約400万IP
ドイツ 約160万IP
イギリス 約100万IP
以下・・・・
日本 約51万IP
などとされ、195カ国に及びます。
●ダークサイド
しかしRPに集積されたIPが不正アクセスの温床になっています。
[4]によれば2022年頃からRPによるサイバー犯罪の話題が増え始めています。
企業や金融機関などの多くでは、住宅IPからのアクセスは善良な個人からのアクセスとして見なしています。
そこを狙って、RPのIPアドレスが不正者のIPアドレスの身代わりに使われてしまうという問題です。たとえば海外から不正者がRPを経由してアクセスすれば、国内のIPからアクセスしているように見えます(図1)。
RPの登録者は”海外のテレビ番組が無料で視聴できる”などの言葉で誘われて、契約します。その際、不要な(不正な)ハードウェアやソフトウェアが知らないうちに導入される危険性があります。

●対策
[1]に掲げられている対策を掲げると、
○提供元不明のソフトウェア、アプリ、無料 VPN 等を安易に利用しない
○収益をうたう通信帯域提供サービスやアプリを安易に利用しない
○不審な動画ストリーミングデバイス等のIoT機器を使用しない
○OS、ファームウェア等を最新の状態に保つ
といったものです。
すべて正しいものばかりです。
しかし”横断歩道を渡るときは信号を守って、左右よく見てからにしましょう”レベルの教えのように、筆者は感じます。
もう少し現実的な議論は総務省の検討会[6]で議論が進められています。(あいにくほとんどの討議資料はその性格上、非公開となっています。)
この検討会で対策の提言案[7]がまとめられ、8月初めまで一般から意見募集をおこなっているところです。
”タダほど高いものはない”ということわざには深い意味があります。■
[1] 「家庭用IoT機器を悪用するレジデンシャルプロキシの現状」 https://www.soumu.go.jp/main_content/001082707.pdf
[2] 「レジデンシャルプロキシ対策アライアンス」の設立について https://www.soumu.go.jp/main_content/001082736.pdf
[3] BrightDataレジデンシャルプロキシ https://brightdata.jp/proxy-types/residential-proxies
[4] トレンドマイクロ「レジデンシャルプロキシとCAPTCHA解決サービスを悪用するサイバー犯罪-パート1」 https://www.trendmicro.com/ja_jp/research/24/a/1-how-residential-proxies-and-captcha-solving-services-become-agents-of-abuse.html
[5] NICT「家庭用IoT機器を悪用するレジデンシャルプロキシの現状をまとめたファクトシートを公表」(2026年7月21日) https://www.nict.go.jp/press/2026/07/21-1.html
[6] 「巧妙化・複雑化するサイバー攻撃への対策の在り方に関する検討会」(第1回~第4回) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/komyoka_fukuzatsukasuru/index.html
[7] 「家庭用IoT機器を悪用するレジデンシャルプロキシの対策について(提言)案」(2026年7月21日) https://www.soumu.go.jp/main_content/001082936.pdf
.jpg)
