行楽のリスク

(2026.08.08 No.213)
本日(8月8日)から日本全体がいわゆる盆休みに入ります。家族とともに国内外を旅行するという人も多いことと思います。
しかしさまざまな事故がなぜかこのような行楽シーズンに発生しているような印象もあります。人がおおぜい行き来するため、事故の発生も増えるという理屈でしょうか。

●夏の記憶
たまたま目にした運輸安全委員会のホームページ[1]を見て、昭和から平成、令和にかけての大きな事故の記憶がいろいろよみがえってきました。

とりわけ1985年8月に発生した日航ジャンボ機墜落事故については、当時、ちょうど筆者も実家に帰省して親族と談笑していたときにニュースが流れて、お通夜の雰囲気になったことを思い出します。

●気になった報告
7月30日に運輸安全委員会が事故等調査報告書(2024年5月に発生した遊覧ヘリコプターのハードランディング)を公表しました[2]。

遊覧飛行中のヘリコプターがエンジン故障のために不時着を試みましたが、ハードランディングとなり、操縦者と乗客2名が重傷を負ったという事故でした。(乗客は香港からの観光客。)
事故の直接の原因はヘリコプターのエンジン部品の破損でした。

この事故自体は原因究明がおこなわれ、今後同じような事故は防止できる見通しが立ちました。

ただ気になったのはこの事故の場所、会社名でした。

●似た事故状況
今年1月に阿蘇山火口に遊覧ヘリコプターが墜落し、乗員と乗客計3名が行方不明になった事故が発生しました[3]。(乗客は台湾からの観光客。)

このヘリコプターの遊覧コース、ヘリコプターの機種、そして遊覧観光の運営会社(以下、T社)とも先の2024年事故と同じでした。

墜落場所が火口の不安定な危険地帯であるため、今だに3名の救出ができず、機体の回収もおこなわれていません。
地元自治体やT社とも今後の対策の決め手を欠いた状況といわれます[4]。
運輸安全委員会の調査官も現地に入りましたが、機体を見ることができていませんので、当然、事故原因も不明なままです。火口でこのような墜落事故が起きた例はこれまでなかったとのことです。

●観光へのダメージ
1月以来、阿蘇火口への立ち入りは禁止されて、観光客は激減しています。火口観光を期待している観光客にとっては残念ですし、観光に依存している業者にとっては死活問題です。

そして事故原因の解明ができないままですので、全国で同様の遊覧飛行をおこなっている業者に対して指導もできません。

●冒険とリスク
T社は社名に Enterprise と付けて、海外仕込みのリゾート事業を推進しています。特にアクティビティ事業としてヘリスキーやスカイダイビングなどヘリコプターを使ったさまざまな体験を売りにしています。
おそらく海外の人にとってはこのくらいの冒険が満足度が高いようです。
インターネットで調べると、とても危険な観光スポットに人が押し寄せている光景が出てきます。もはや観光ではなく、肝試しと言ってよいでしょう。

●平穏無事の尊さ
そこまで冒険的なことに挑戦しようとする日本人はまだ少なそうです。旅先では楽しく有意義に過ごし、無事に帰宅できることを願っているのが大多数のはずです。

その行楽客が命を預けているのが運行業者ですから、業者には安全を第一に優先してもらいたいものです。
知床半島での遊覧船事故、修学旅行先での海難事故等々、楽しい旅行が悲劇を生んだ例は最近でも多いです。

偶然ですが、熊本県の話題が2回続きました。■

[1] 運輸安全委員会沿革 https://jtsb.mlit.go.jp/enkaku.html
[2] ロビンソン式R44Ⅱ型(回転翼航空機)の事故[ハードランディングによる搭乗者の負傷](熊本県阿蘇市、令和6年5月13日発生) https://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/detail.php?id=2386
[3] 調査中の案件 https://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/detail2.php?id=2444
[4] くまもと県民テレビ 【独自】「金銭的に…」阿蘇火口で大破の遊覧ヘリ 引き上げできない事情(2026年6月5日) https://news.ntv.co.jp/n/kkt/category/society/kk73cd5a21c72544e1a8fd2db6a10918e1

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