自転車と公共交通

(2023.05.11)
5/8に国交省から「サイクルトレイン・サイクルバス導入の手引き~国内外の参考事例集~」が公表されました。
(https://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_001665.html)

サイクルトレイン・サイクルバスとは、自転車を解体せず、そのまま車内又は車外サイクルラックに搭載し、輸送する鉄道・バスを指します。
外国では、すでに鉄道・バスに自転車がそのまま乗り込める形式があり、日本国内でも先進的に取り組んでいる例が見られます。
そのような事例を集めた参考資料です。

●事例のポイント

  • 自転車を解体しないで、そのまま車内に持ち込めるか、または車外ラックに入れられるタイプの事例
  • 導入目的と利用層についての事例
  • 法令・計画の位置付けの事例
  • 導入・運用の留意点の事例
  • 国内における事例をカルテ化

●通勤・通学者にとって

  • 都市近郊であれば、最寄りのバス停まで歩くか、駅まで自転車で行くかという通勤通学スタイルが思い浮かべます。しかしすでに駅の駐輪場問題が生じています。現在の大都市圏の通勤電車の状況では、サイクルトレインの導入には少し無理がありそうです。
  • ただし地方のローカル線ではどうでしょうか。学生の通学時間帯しか走らない列車に、自転車用車両を連結して、通勤・通学用として展開することは可能かもしれません。自宅から駅まで遠い人、あるいは駅から勤務先や学校まで遠い人が列車を利用するきっかけにはなり得ると思われます。

●旅行者にとって

  • 地方の旅行では、幹線区間からいったんはずれると、とたんに不便になります。タクシーかバスかとなりますが、便はよいとはいえませんし、費用や時間の制約も出てきます。
  • それに対して、天候さえよければ、自転車で周遊したいという(健脚の)観光客がきっと出てくるように思えます。自転車によって行動範囲が拡がると同時に行動の自由さ、時間の自由さも得られるからです。
  • 駅と駅の間が長い、限られた地域しか走っていない、時間間隔が大きいといったローカル鉄道(バス)の不便さが、自転車利用によってかなりカバーできるのではないでしょうか。
  • そのような自転車による自由行動は、外国人観光客からも人気が高くなりそうです。

●自転車の問題点

  • 今、自転車の走行そのものの危険性が問われています。都市部での脇見走行や歩道走行など、密度の高い地域ならではの問題が増えています。
  • 地方でも自転車走行に向いた道路ばかりではないという危険性があります。農道かトラック道路か、といった二極化した状況が見られ、サイクリングに適した道路はまだ整備が追いついていません。少なくとも大型トラックが行き交う国道に、自転車が押し寄せるのは、避けなければなりません。
  • したがってサイクルトレイン・サイクルバスの開発と並行して、道路や自転車走行の安全性確保を着実におこなう必要があります。自転車走行のマナー教育はじめ、自転車レーンの設置、サイクリング・モデルコースの整備、自動検知など安全走行技術の開発など、やれることは多いと思います。

●地方にとって
サイクルトレイン・サイクルバスの考え方は、これまで地方に展開(投資)してきた交通インフラを維持し、さらに新たなビジネスの機会ととらえるとともに、環境にやさしい生活を実現していくという何重にもうれしい取組みではないかと考えます。客がいないから廃線にするというのではなく、今までの資産を使って新しい客を作るという発想です。

自転車ごと電車に乗り、終着駅から先は自由気ままな行程をたどれる、というイメージを思い浮かべると、つい旅行に出たくなります。■

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