人口と地域(1)~こどもの意見
(2023.05.07)
4月28日に財務制度審議会の財政制度分科会が開催されました。
(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20230428zaiseia.html)
すでにこのブログでは「歳出改革部会」(4月24日開催)の「成長」議題を取り上げましたが、今回は親会議にあたる「財政制度分科会」のほうです。こちらの討議テーマは「人口・地域」でした。
●主な議題
ここでは、次の3つのサブテーマが討議されました。
- 少子化総論
- 東京一極集中・税源偏在と地方財政に関する課題
- 少子化が進展する中での教育の質の向上
今回の記事では「1. 少子化総論」の内容に絞って書くことにします。
●母親の学歴とこども数
少子化総論では、人口減少の全体状況や、母親の学歴別出生数を米国と比較したものが掲げられていました。
ここで面白いのは、米国では高学歴女性が持つこどもの数が1980年代以降、増え続けているという現象です。日本でも2015年までは高学歴女性のこども数も減少していましたが、2021年には若干増加が見えたとのことです。現在のところ、日米とも母親の学歴によるこども数の差はほとんど見られなくなったようです。
民間の家事・育児サービスの利用による育児の市場化(marketization)の拡大が、高学歴女性のキャリアと家庭の両立を実現させ、出生率を他の女性と同等に引き上げているとの推測です。(下図は分科会資料より引用。)
●出産退職は2億円の損
次は金銭についての、やや深刻な話です。
日本では、女性が出産・育児でキャリアを中断することに伴う機会費用は相当な額にのぼっていることが示唆されます(久我尚子氏調査)。
正規雇用で出産しない女性と、正規雇用から出産退職して無職の女性との生涯所得(退職金含む)の差は2億2千万円と試算されています。(同様の金額比較は「こども家庭庁 発足」の記事でも書きました。)
●こどもの生の声
内閣府のユース政策モニターという仕組みがあります。小学校5年生~29歳までの281名に参加してもらい、「結婚・子育てに関すること」について生の声を集めました(2022年12月実施)。一部を引用します。
- 結婚は、したいと全く思えない。(小学生/女性)
- 子供は欲しいが、仕事と子育てを両立できる自信がない。(中学生/女性)
- 結婚や出産に対するイメージが悪いので、子どもを持ちたくない。(正社員・正職員/女性)
- 結婚、子育てにメリットを感じない。特に子育ては魅力よりも経済的な不安の方が大きい。(正社員・正職員/女性)
- 結婚したいと思う人が、経済的理由から断念するようなことがない社会になって欲しいと思う。(パート・アルバイト・派遣社員・契約社員/女性)
- 出会いのなさ、不安定な所得等、結婚しない・できないことの要因が数多く存在すると思う。(正社員・正職員/男性)
- 男性は育休制度を使っている人が少ないこと。性別役割分担のイメージがまだ消えないこと。クラスで聞いてみると、将来結婚をしたいと思う人が、年齢を重ねるごとに少なくなっていくこと。(高校生/女性)
若い年代の、特に女性の考え方は悲観的なようです。一方、小中学生の男子もちゃんと考えています。
- 街中での孤独感は減り、子育てする親子が安心して外出でき、「親が幸せそうに子育てしている」から「子どもがいる幸せ」を周りの若者達も感じ、広がるのではないか。(中学生/男性)
- 出会いのきっかけのお手伝い、出会いの場所を増やす等。子供を産んだら、お金がかかるので若い人が結婚に前向きになれる政策を考えて欲しい。(小学生/男性)
こういうモニターに参加する本人もその保護者も元々”意識高い系”と思われますので、多少のバイアスはあるかもしれません。しかし、SNSなどを介して、こういう率直な意見の交換がもっと幅広くできるのではないかと思います。”当事者”の気持ちは大切にされるべきです。■