Climate Techのインパクト評価

(2023.04.24)
4月20日に環境省は、Climate Techのインパクト評価・マネジメントに関する検討会について公表しました。
(https://www.env.go.jp/press/press_01443.html)

環境省では、気候変動関連技術(Climate Tech)への投資促進に貢献することを目的とし、気候変動関連技術に投資を行う際に環境インパクトを評価するフレームワークについて議論を行う検討会を設置しました。
すでに第1回の検討会が2023年3月29日に開催され、今後、秋までに全3回程度開かれる予定になっています。
すでに環境省としては、2020年7月に「インパクトファイナンスに関する基本的考え方」、2021年3月に「グリーンから始めるインパクト評価ガイド」(※1)を策定・公表しました。

●インパクト・ファイナンスとは
環境、社会、経済のいずれの側面においても
・重大な負の影響(Negative Impact)を適切に緩和・管理することを前提に、
・少なくとも一つの側面において正の影響(Positive Impact)を生み出す
ような意図をもって行われる投融資を指します。

●何が難しいか
Climate Tech のスタートアップ投資は、技術的な評価や、最終的に企業の価値にも関係する可能性があると考えられる環境インパクトのポテンシャル評価が難しい、政策動向の注視が必要である等、実際に投資する際に直面する壁が多くあります。

●何を議論するか
次のような骨格で議論を進める予定です。
・評価の対象:気候変動の解決のための技術(Climate Tech)等を開発するスタートアップ
・対象とする環境影響:CO2 削減効果(ポテンシャル)
・受け取り手:スタートアップ投資を行う投資家、スタートアップ
・ゴール:以下2点を示すことにより、Climate Tech スタートアップの投資活性化及び環境インパクト(CO2 削減)の最大化を目指す
(A)投資検討時における CO2 削減効果の評価フレームワーク
(B)投資実行後に CO2 削減を実現する上で求められるマネジメント方策

●さまざまなフレームワークの形
環境技術のインパクト評価については、すでに欧米で提案されているものがいくつかあります。それぞれ用いる項目や見る角度が異なります。
・Project FRAME
・IRIS+ Framework
・ECT Framework

●第1回の討議内容
議事録から主な発言を意訳しました。

  • 客観的なエビデンスがなければいけないというわけではなく、透明性のある推定でもよい
  • 海外において、例えば報告に関する要求水準が厳しい EU では、ステージ毎に明確に基準を分けて評価している。シードやアーリーはマーケットの規模やユニット単位においてインパクトの大きさをチェックしており、より大きな投資となる場合はリジットに評価していた
  • スタートアップ側でリソースが限られる中で CO2 削減効果の算出は投資家が負うのかどうか
  • オーナーシップは企業側で持つべきではないか
  • 投資側、投資先企業のどちらがオーナーシップを持つかという点について、欧米の場合はファンド側が試算し、比較可能性を担保している一方、ステージが進み IPO を検討する段階では内製化することも必要になる
  • 次の論点に整理してはどうか。 「Relevance(重要性)」、「Evidence」、「Consistency(一貫性)」、「Intentionality(意図性)」
  • CO2 削減効果を見ることが主眼であるが、他の環境負荷についても触れるべきではないか、という意見に対して、実務家からTheory of Change(ToC)(※2) のステップで CO2 削減効果以外のインパクトも特定されるはずなのでそこで整理することができるのではないかという声もあった
  • 投資後のマネジメント方策について、日本国内では評価自体が目的になっているところがあるが、欧米のファンドは評価結果をいかに事業に活かし企業価値を向上させるかを重視している

●議論の方向性
おそらくゼロから新しいフレームワークを作る時間的余裕はなさそうですから、すでに開発された上記のフレームワークを取捨選択して、アレンジすることになると予想します。そこまでは少しも問題ではなく、むしろそれを使って、実際に投資家が評価できるかどうかにかかっています。国内のファンドにそのような評価の経験が乏しいことが問題でしょう。■

※1 「グリーンから始めるインパクト評価ガイド」 https://greenfinanceportal.env.go.jp/pdf/pif_taskforce_text.pdf
※2 ToC:事業がどう社会変革に寄与するかを、理想から逆算で因果関係で説明した体系です。米国で開発された手法です。■

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