甘い話はチャットで
(2023.04.07)
4月4日に消費者委員会の「デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ」第12回が開催されました。
(https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/digital/012/shiryou/index.html)
議題はチャット機能を利用した広告や勧誘の問題について、です。そもそもこの「デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ」(以下、WG)は、消費者委員会の下部組織にあたり、2022年4月の成年年齢引下げによる、若年層の消費者トラブル拡大への懸念から発足したものです。その被害の防止及び救済の観点から検討することを目的としています。
●トラブルの実状
最近、SNSをきっかけとした次のような苦情が目立ってきたようです。
”副業と聞いていたがFX自動売買ソフトの勧誘だった”
”安価な情報商材を購入し、さらに高額な契約を勧められたが、約束のサポートが無い”
”オンラインサロンを解約したいが、住所や電話番号等がわからない”
”メッセージで次々とダイエットサプリ等を勧誘された”
”カウントダウン表示などで焦らされて契約してしまった”
”副業の内容が不十分なままマニュアル購入を勧誘される”
”画面共有アプリを使って次々と借金を指示された”
●電話とSNSは違う?
このWGではSNSや電話を使った勧誘・販売の問題点を整理して、2022年8月に中間的な報告書をまとめました(※1)。
その後、2023年1月からWGを再会して、SNSのメッセージによる勧誘と電話による勧誘の類似性と規制のあり方を中心に議論を進めています。
要するに、電話による勧誘についてはさまざまな規制がかかっているのに対して、SNSのメッセージ(チャット)による勧誘には特に規制がない、という点を問題視しているわけです。法律や業界規制の話となると、SNSと電話は違うものらしい。
●罠のはまり方
整理すると、次のようなステップで罠にはまるということらしいです。
①検索サイトやSNS内検索、動画配信の広告などから、
②業者のサイトに誘導される(「0円スタート」ボタンを押す)
③チャットが立ち上がり、業者のアカウントが表示される(LINEの「友だち追加」ボタンを押す)
④チャットを通じて業者とやりとりする
⑤業者のサイトで申込・決済
この①~⑤のいずれのステップでも、消費者保護のために規制が必要とされています。
●販売業者の立場
一方、通信販売の業界団体(公益社団法人日本通信販売協会)側は規制に実効性を持たせることと、過剰規制にならないような配慮を求めています。問題は「不当な勧誘行為」であって、「通信販売そのもの」ではないこと、SNS提供事業者による取組みや消費者教育も必要であること、などを述べています。
まじめな通信販売事業者にとっては迷惑千万な話です。しかし、世の中には技術の最先端をゆく詐欺まがいの者がいるのは常です。商売の仕組みや技術をよく知っていて、そのすき間を利口に突いてくるのは、あきれるばかりです。
”「消費者委員会」を名乗り投資の勧誘等を行う電話に御注意ください。”(※2)には苦笑いするしかありません。■
※1 消費者委員会「デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ報告書」(2022年8月) https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2022/doc/202208_digital_houkoku.pdf
※2 消費者委員会 https://www.cao.go.jp/consumer/about/1028.html