政治に続く道

(2026.10.09 No.228)
10月2日に国土交通大臣の会見において「簗農林水産大臣について」質問が出ました。
https://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin261002.html#gm3
9月30日付けの週刊誌に、当時の自由民主党・簗筆頭副幹事長(以下、Y議員)が“利益誘導&恫喝”発言を連発、などという記事が掲載されたことについての質問が大きな波紋を呼びました。
●発端
話題の対象となったのが栃木県の道路整備予算です。
4月の配分決定の結果を見ると、特定の2自治体の配分額が大きく減っているとされました。
この2自治体の首長は1月の衆議院選挙においてY議員を応援しませんでした。
最初のきっかけとなった週刊誌ネタは、5月にY議員が非公開の会議において、応援しなかった当該2自治体の道路整備予算を削ったと発言したものを指します。
実は選挙後の2月に、Y議員から当該の2自治体の「社会資本整備総合交付金」の配分について、国交省へ問い合わせがあったという事実も認められました。
選挙が1月、Y議員の問い合わせが2月、交付金配分の決定が4月、となると、”意趣返し”と勘ぐられてもしかたありません。
●国土交通省の見解
道路を所管する国土交通省の道路担当課から、大臣会見に続いて10月6日にメディアへの説明がおこなわれたという次第です。
要旨は次の通りです[1]。
・当該の2自治体については、それぞれの自治体単独での事業費は昨年度比で26.2%減、54.1%減となっている。
・しかし両自治体を含むエリア内における市町事業と県事業の合計額は、それぞれ20.5%増、22.0%増と、むしろ配分額は増えている。
・国から交付金を配分しているが、各自治体が作成する整備計画単位で決定しているものである。
・したがって各整備計画の中の事業単位の配分額については、各自治体(この場合は栃木県)の裁量に委ねられている。
・2月にY議員から問い合わせがあったことは事実であるが、具体的な予算配分については回答していない。
すなわち2026年度の予算配分は全国の整備計画の進捗度・重点度に応じておこなっており、細かい配分は県に任せているという説明です。
この2自治体への具体的な交付額については[1]の資料にあります(下記)。たしかに自治体単独では減少が目立ちますが、関係する県の交付額を合わせるとプラスになっています。

●「社会資本整備総合交付金」とは
センセーショナルな話題だけで終わるのは寂しいので、もう少し道路整備について勉強してみようと思います。
国土交通省は道路だけでなく、港湾、鉄道、その他の重要なインフラ設備を管轄しています。
インフラそれぞれの特徴が大きく違うため、ともすればバラバラに整備予算を付ける傾向がありました。
そこで2010年に整備予算を「社会資本整備総合交付金」という形に一本化し、総合的な整備を進めることにしました[2][3][4]。(下図参照。)

続いて「地域自主戦略交付金」(2012年度まで)、「沖縄振興公共投資交付金」、「防災・安全交付金」の枠が作られました。
現在では「防災・安全交付金」のほうが増加しており、「社会資本整備総合交付金」はじょじょに減っている状況です。

●交付金の配分
社会資本整備総合交付金の道路事業に対する基本的な考え方として、
”民間投資・需要を喚起する道路整備により、ストック効果を高め 、活力ある地域の形成を支援するとの考えの下、広域的な道路計画や災害リスク等を勘案し、以下の事業に特化して策定される整備計画に対して重点配分を行うこととする。”[5]
とあります。
また事業の目的や内容によって補助率が規定されていること、自治体の財政状況に応じて引上率が調整されていること、など細かい制約条件が付いています。
交付金のスケジュールはおおまかに以下の通りです。
・社会資本総合整備計画の提出: 12月~2月
・事前評価書の提出: 12月~2月
・交付金額の内定通知: 3月
・実施に関する計画等の提出: 4月~2月
・交付申請: 4月~2月
いずれにせよ、全国の自治体から寄せられた整備計画書を決められた期間内で丹念に精査し、都道府県・市町村単位に交付金を内定するといった作業は相当にたいへんだろうと察します。
担当者としては、まず(1)あらかじめ決めた条件に入っているかどうかによって施策のメリハリを付けた上で、(2)全体として極端な偏りがないかチェックする、という段取りで進めたではないかと想像します。
(1)は省として今年の目玉は何かを説明するため、(2)は全体としてのバランスを重視している姿勢を示すため、にそれぞれ必要な段取りです。
●政策と政治
一般的にいえば、
政策は「社会の課題を解決するために、何を、どのように実施するか」
であり、
政治は「社会の方向性や資源の配分をめぐって、誰が、どのように意思決定するか」
となります。
政治家はまさに政治をおこなう人という意味になります。
事業仕分けによって「コンクリートから人へ」の理念が徹底され、2010年度予算案では公共事業関係費全体が約18%という歴史的な大幅削減を受けました。
こういうものが”政治”でしょう。
その結果、公共事業が整理、統合されて、今見ている「社会資本整備総合交付金制度」が生まれました。
もっとも、その直後に発生した東日本大震災によって、復興のための事業や各地の防災事業が強化され、逆にコンクリートを重視せざるを得ないという流れになってしまいました。
政策も政治も、自然や社会の変化に大きく影響されるということです。
震災のようなきわめて大きな変化だけでなく、ゴシップのようなつまらない話も影響します。
週刊誌のとばっちりを受けて、急いで交付金集計表を確認して説明文書を書く羽目になった国交省担当者は誠にお気の毒でした。■
[1] 国土交通省「道路予算に係る週刊誌報道を受けた精査結果について」(2026年10月6日) https://www.mlit.go.jp/road/content/002025983.pdf
[2] 社会資本整備総合交付金と防災・安全交付金の概要 https://www.mlit.go.jp/page/kanbo05_hy_000213.html
[3] 社会資本整備総合交付金による総合的支援のイメージ https://www.mlit.go.jp/page/content/002000089.pdf
[4] 交付金制度の変遷 https://www.mlit.go.jp/page/content/002000093.pdf
[5] 社会資本整備総合交付金、防災・安全交付金における配分の考え方(令和8年度) https://www.mlit.go.jp/page/content/001996389.pdf
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