e-Tax

(2026.08.22 No.217)
8月19日に発刊された財務省の広報誌「ファイナンス」8月号に、
「特集 令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」
が掲載されました。
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202608/202608c.html#article
”確定申告の現状を知りたい”、
”e-Taxシステムがどのくらい使用されているかを知りたい”
という、二つの関心からこの広報誌を読んでみました。
●所得税
申告人員は2,353万人で緩やかな増加傾向にあります。
そのうち半分以上は「還付申告」の人です。
申告納付額がある人は628万人、その申告納税額は4.7兆円で、いずれの数値も増加しています。
その内訳として、事業所得者(事業によって所得を得た人)のほうが、それ以外の人(給与所得の人など)に比べて対前年比の増加率が高くなっています。
事業が儲かっているということでしょうか。
なおR6年に「申告納税額のない人」が目立って増加しているのは、定額減税によって「納税額ゼロ」の人が急増したためと考えられます。

●土地・株式等の譲渡税
土地等の譲渡所得については申告人数、所得金額とも対前年比で増加しています。
株式等の譲渡所得については、申告人数と所得金額とも対前年比で減少しています。
ただし申告人数のうち、実際に所得金額がある人の数は微増となっています。
●経済・社会における変化
上のような確定申告の状況をみると、わが国の経済・社会の動きが多少とも浮かび上がってきます。
つまり”フロー”(事業所得や給与所得など)は名目的には改善し、土地や株式などの資産形成も活発になっていると見えます。
しかし、その恩恵は均一ではなく、事業所得者に比べると勤労所得者の所得増加は低い状況です。
さらに踏み込んだ言い方をすると、わが国の経済は、
『みんなが豊かになっている』というより、
『資産を持つか持たないかによって差がつく』局面にある
とも言えるのではないでしょうか。
●e-Taxの普及状況
この特集記事の目的は、以上のような経済分析よりも、むしろ国税庁が推進している”e-Tax”の浸透をアピールすることにあります。

現在、申告者数2,353万人に対して、e-Tax利用者は1,814万人(対前年比+4.8%)で77.1%の利用率となっています。
この数値を見るとe-Taxは着実に普及しているようです。
内訳は、
・自分でパソコンやスマートフォンを使って申告した人 40.3%
(さらにスマホ申告はその半数以上)
・税理士による代理送信 21.5%
・確定申告会場等での作成 15.3%
申告者の4割が自力でe-Tax申告し、残りは税理士の入力や会場で補助を受けながら入力をおこなっているという状況です。
スマホの扱いに慣れていて、タイパ(タイム・パフォーマンス)を重視する人にとって、混雑する確定申告会場に出向く意味はありません。

●非e-Taxな人たち
確定申告会場や地方公共団体の会場に出向いて、そこでe-Taxで申告した人は15%ほどいます。
これらの人はe-Taxの操作に不慣れながら、係員に支援されて入力をおこなったということでしょう。
しかし、e-Taxをまったく使わない人が全体の23%もいます。
つまり税務署への持参・郵送で確定申告をした人(13%)や、確定申告の会場に来て書面申告した人(9%)を指します。
前者の方々はずっと以前から自分なりの方法で申告書を作成するやり方をとっている人でしょう。
後者は確定申告自体に不慣れで、会場で記入指導をしてもらいたいのだろうと想像します。あるいはマイナンバーカードを保有していないとか、ID・パスワードの準備ができていないなど、e-Taxを使いたくてもできない人たちも含まれていたことでしょう。
このような非e-Taxな人たちは年々減少しているようなので、確定申告会場の混雑に対応する職員の負担も確実に減少していることでしょう。


●勉強ツールとしてのe-Tax
誰にとっても確定申告というのはめんどうなことでしょう。
長くサラリーマン生活を続けた人は、大半は給与収入のみですから、確定申告も不要(注)でした。会社の年末調整という便利なサービスが細々した申告を支援してくれたので、所得や控除という意識が薄くなりがちでした。
(注)給与収入が年2,000万円を超える場合や、副業などの所得が年20万円を超える場合は確定申告が必要。
かく言う筆者も確定申告にまじめに取り組んだのは会社退職後でした。
記入する数値がどのような意味を持つのか、どの項目とどの項目がつながっているのか、一つ一つ記入しながら税金の基本的な知識を得ました。
ここで集計された所得額が翌年度の住民税や保険料に影響するということも知りました。
e-Taxの便利なところは、申告する前に何度でも修正ができることです。
誤った数値を入力して、とんでもない納税額になったりすると驚かされます。
あるいはわざと所得額を倍にしてみるとか、半分にしてみるとかして、税金の額がどのくらいになるか試すことも可能です。
e-Taxはそういういろいろな試行ができるシミュレーションツールととらえることもできます。
もう遅いかもしれませんが、若い頃から確定申告の中身、すなわち所得や控除、税金の仕組みを自分のこととして身につけておけばよかったな、と感じています。
給料をもらっただけで日々ぼんやりと過ごしていると、お金に対する感度が鈍ってしまうようです。
日々、金策を考えている自営業の人との感度の差は大きいでしょう。
●給与より資産の時代か
上で書いたように、わが国では、
「給与所得者」と「自営業者」といった対比よりも、
「給与だけに依存している人」と「資産を持っている人」という対比
のほうが経済活動の違いが鮮明になるのではないかと思います。
NISA(新NISA)の制度ができて、若いうちから金融資産の形成が促されている時代です。
確定申告の状況もじょじょに変化していくものと予想します。■
[1] 「特集 令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」、財務省 広報誌「ファイナンス」8月号(2026年8月19日) https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202608/pdf/202608c.pdf
.jpg)
