後見、公権、貢献

(2026.07.29 No.210)
総務省は7月21日に「成年後見制度の利用促進に関する調査<結果に基づく通知>」を公表しました。
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/hyouka_260721000191194.html

●そもそも成年後見制度とは
成年後見制度自体は[1]のようなサイトでわかりやすく説明されています。
要するに
・認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方(被後見人)の
・財産管理(不動産や預貯金などの管理、遺産分割協議などの相続手続など)や
・身上保護(介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結、履行状況の確認など)等の
・法律行為を成年後見人等が支援する
制度です。
判断能力の程度に応じて、「後見」・「保佐」・「補助」の3種があります。
以上は「法定後見」ですが、それ以外に本人が後見人や後見の範囲をあらかじめ指定することができる「任意後見」という制度もあります。こちらは判断能力が十分なうちに事前に契約しておく必要があります。

これらの制度を「登記」で支援するのが法務省、「社会福祉」の立場から支援するのが厚生労働省、「後見人の選任」をおこなうのが裁判所といった役割分担になっています。

●成年後見制度の利用実態
2000年から「成年後見制度」は始まっていますが、26年を経てもまだ社会には十分浸透していない模様です。

図1は2000年~2025年の間の成年後見(後見、保佐、補助)の「申立件数」を図示したものです([2]の資料をさかのぼって編集)。
保佐・補助については緩やかに増加、後見は2012年以降はほぼ横ばいと見えます。
延べ利用者数は2025年末時点で約26万人とされていますが、高齢者の増加を考えると、利用は大きく増えているとはいえないでしょう。

図1. 開始申立件数(後見・保佐・補助)の推移([2]をさかのぼって筆者作成)

●制度の尻たたき(2016年)
2016年5月に施行された「成年後見制度の利用の促進に関する法律」は”成年後見制度がこれらの者を支える重要な手段であるにもかかわらず十分に利用されていないことに鑑み”(同法第1条)という反省のもとに、5年ごとに基本計画を策定して制度の利用促進を図っています。

厚生労働省は基本計画に沿った施策の実施状況を毎年度報告しています[3]。
図2は2025年における成年後見・保佐・補助の申告件数を都道府県別にまとめたものです。そのうち市区町村長が申し立てた件数とその比率をグラフに示しています。

都道府県によって市区町村長の申立件数比率に大きなばらつきがあります。それぞれの地域特有の理由があるでしょうが、各地域行政の取り組みの積極性も大きく反映しているものと思われます。

図2. 都道府県別の市区町村長申立件数([4]を元に筆者作成)

●10年間の効果を評価(2025年)
今回発表された調査は総務省行政評価局がおこなったものです。上の「促進法」の取り組みに対する、行政評価の一環です。

総務省としては、成年後見制度の利用促進に対する市区町村の取組状況等を調査しました。地域の実情を踏まえた計画的な取組の推進に役立てることがその目的です。

2025年8月~2026年7月の期間に、
・全国の47都道府県、
・1,741市区町村、
・全国の50家庭裁判所
を対象に書面調査を実施しました。
(回答率は都道府県100%、市区町村86.4%、家庭裁判所100%)。

その結果、
 ①市区町村の多くが制度の利用ニーズを把握していない
 ②相談支援機関の役割が十分に果たせていない
 ③市区町村と家庭裁判所の連携が不十分
などが確認されました[5][6]。

そして今回の発表では、総務省から厚生労働省に対して、それぞれの対策案を提示して実施を要請したというわけです。

●孤独者の増加
まず成年後見制度を”使わなければならない”人がこれまでは少なかったことが低調の理由の一つでしょう。

しかし核家族化が進み、少子高齢化の中で世話ができる人が減り、家族や親戚でもない人が社会福祉の立場から世話をする立場になる場合が増えてきます。
そのような場合、世話をする第三者は対象者の財産を対象者のために使いたいが使えないという状況になります。
これに対応するためには法律的な裏付けのある成年後見制度を使うしかありません。

●危ないケース
もう一つ、孤独な対象者の財産を狙って、狡猾な契約を持ちかけたり、詐欺がおこなわれるという恐れも増えています。
判断力の乏しい人の財産を守るという点では成年後見制度は強力な対策となります。

●信頼失墜
たいへん残念なことに、後見人となった専門職(弁護士や司法書士等)自身がそのような詐取をおこなうという犯罪も発生しています[7]。2025年に裁判所が把握した178件の不正のうち、専門職によるものが26件(約1億6千万円)ありました(他は親族による不正)。
このような事件がマスメディアに取り上げられて、成年後見制度全体への信頼性を下げてしまっていることも事実です。

●一般人と専門職の仲介
後見制度を使いたい、あるいは必要としている一般市民が最初に相談するのが市区町村の「相談支援機関」です。自治体窓口の他、地域包括支援センターや社会福祉協議会がそれにあたります。
しかし総務省の調査で明らかになったように、その担当者が必ずしも後見制度に詳しいとは限りません。また組織間の連携もまだ不十分のようです。
このような一般市民と専門職の間をつなぐ人を地道に育てていくことが今後、重要になります。

筆者も親族の成年後見制度に係わったことが数回あります。
素人にとっては、裁判所が用いる言葉がたいそう難解に聞こえました。そういうこともあって、つくづく間に入ってくれる人の存在をありがたく感じました。■

[1] 総務省・成年後見はやわかり https://guardianship.mhlw.go.jp/
[2] 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況―令和7年1月~12月―」 https://www.courts.go.jp/assets/20260316koukengaikyou-r7.pdf
[3] 第二期成年後見制度利用促進基本計画・施策の実施状況等 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202622_00017.html
[4] 成年後見制度の利用の促進に関する施策の実施の状況(令和8年7月) https://www.mhlw.go.jp/content/001720781.pdf
[5] 総務省「成年後見制度の利用促進に関する調査結果(概要)」 https://www.soumu.go.jp/main_content/001082907.pdf
[6] 総務省「成年後見制度の利用促進に関する調査 結果報告書」 https://www.soumu.go.jp/main_content/001082908.pdf
[7] 最高裁判所 後見人等による不正事例(平成23年から) https://www.courts.go.jp/assets/r7koukenhusei.pdf

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