旅行と観光

(2025.03.01)
2月28日に観光庁から「宿泊旅行統計調査(2024年(令和6年)12月・第2次速報、2025年(令和7年)1月・第1次速報)及び(2024年(令和6年)・年間値(速報値))」が公表されました[1]。
◆宿泊者数を毎月調べている
観光庁の宿泊旅行統計調査では、毎月の宿泊者数やその居住地、国籍などについて、宿泊施設への問い合わせ調査をおこなっています。
2024年の宿泊施設数は66,763、そのうち調査対象施設は20,562です。
さらに2024年の回答率は50.8%でした。
つまり6万施設の状況を約1万施設からの回答によって推定していることになります。
統計調査では、多くの場合には前年度との比較でプラス/マイナスを示します。
しかし旅行関係は2020年以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の打撃により、件数や金額の減少幅が大きかったため、前年度と比べてもあまり意味をなしません。
そこでCOVID-19以降は「2019年との比較」をおこなっています。
◆規模の小さい宿泊施設も集計に加える
施設の従業者数に応じて、
・10人以上の事業所は全数調査
・5人~10人未満の事業所は1/3のサンプル調査
・5人未満の事業所は1/9のサンプル調査
としています。
実は2009年度までは従業員10人以上の宿泊施設しか調査していませんでしたが、2010年度からはより規模の小さい宿泊施設も調査対象に加えました。実際に2024年時点では全数66,763のうち、従業員10人未満は52,971を占めています。小規模な、家族経営の旅館が多いのではないかと見られます。
◆宿泊施設のタイプ分け
また、施設のタイプ別に、
・旅館
・リゾートホテル(主に観光客を対象)
・ビジネスホテル(主に出張者を対象)
・シティホテル(リゾート、ビジネス用途を除く都市部のホテル)
・簡易宿所(山小屋、カプセルホテルなど)
・会社・団体の宿泊所(保養所、ユースホステルなど)
に分類しています。
これにより、かなり細かい動向を知ることができます。

◆日本人が減って、インバウンドで”爆上げ”
2024年の宿泊者数は6億5,028万人泊(2019年比+9.1%)となりましたが、そのうち
・日本人は4億8,668万人泊(前年比-2.6%)
・外国人は1億6,360万人泊(前年比+38.9%)
でした。
やはり外国人の宿泊が全体を押し上げていることがわかります。
特に東京都での外国人宿泊は+94.9%(2019年比)、+31.1%(前年比)となっているのはすごいです。
さらに石川県では外国人宿泊が+131.5%(2019年比)、+121.8%(前年比)という驚異的な伸びを示しています。新幹線の開通効果でしょうか。
◆宿泊者の国籍分布
国籍別にみると下図のようになります。
(※ただしこの図の総数1億3,610万人泊は、上に書いた1億6,360万人泊より数値が小さくなっています。これは前者が従業員数10人未満の施設からの回答を含めていないためです。)

外国人の国籍をみると、中国・台湾・韓国・香港の人で約半分、アジア圏全体で約6割以上を占めています。
年ごとの推移をグラフにしたのが下図です。

COVID-19の落ち込みからいち早く回復していることがわかります。
特に中国の急伸が目立ちます。また台湾、米国の増加も大きいようです。
◆宿泊施設の需要と供給

調査対象とする施設数は2019年12月時点で58,950、その後、2024年は66,763となっています。
これらの客室稼働率(※)を見ると、2019年差ではまだマイナスですが、前年差ではすべてプラスになっています。
全体として施設数(キャパシティ)が増えたことが、宿泊者数の増加にも余裕を持って対応できていると考えられます。2019年の頃のような混み具内にはならず、しかし施設の稼ぎはようやく保てるレベルに戻ってきたようです。
(※)客室稼働率(Occupancy rate:OCC)=宿泊利用された客室数÷販売可能な客室数

ただし地域差はあります。
東京、京都・大阪、名古屋近辺の稼働率が高いのは実感と合います。
長野県は稼働率平均では最下位の値ですが、ビジネスホテルやシティホテルの稼働率では全国平均より上位に位置します。
その地域の宿泊施設の分布や泊まり客の目的によって、違いが出てきます。

◆仕事と観光
旅行の目的は観光だけではなく、仕事(出張)であることも多いはずです。
今回の調査では、2024年の実宿泊者数は約4億5千万人、そのうち観光目的の宿泊者が5割未満(つまりビジネス客が多い)の施設に泊まったのは約2億人とありますから、その半分(1億人)は仕事での出張者と想像できます(※)。
(※この調査は利用者に宿泊目的を質問するものではなく、あくまでも宿泊施設への質問であるため、推定となります。)
COVID-19以降、テレワークが普及したものの、やはり現地に行かないと仕事ができないことはまだまだ残っています。
地方から東京に出張しても、ビジネスホテルが満杯になっているとか、宿泊料金がめっぽう高くなって困った、という話をよく聞くようになりました。
需要と供給のバランスによって価格が決定される、という理屈は正しいでしょうが、宿泊の問題は短期間のうちに供給量の調整ができないということです。インバウンド需要がそのアンバランスに拍車をかけている状況です。少なくとも低収入の日本人にとっては辛い日が続くことになりそうです。■
[1] https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00032.html
[2] 2024年(令和6年)調査結果(年間値(速報値)) https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001867097.pdf
