貿易保険
(2023.06.05)
6月2日、経産省は海外事業に挑戦する日本企業を支援する貿易保険制度を創設したと発表しました。(https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230602001/20230602001.html)
貿易保険法施行規則の一部を改正する省令を公布しました。
株式会社日本貿易保険(NEXI)は外国企業への融資に対し融資保険の提供を行うことが原則となっているところ、貿易保険法施行規則を改正し、
①サプライチェーン強靱化
②脱炭素(GX)
③スタートアップ企業の海外展開等
に資する事業を対象に、日本企業が日本の金融機関から必要な資金の融資を受ける場合についても融資保険の提供が可能となります。
改正された貿易保険法施行規則は2023年7月1日より施行され、同日よりNEXIから商品提供が開始される予定です。
●貿易保険とは
貿易保険とは、日本の企業が行う海外取引(輸出・投資・融資)において生じる民間保険では救済できないリスクをカバーする保険です(※1)。
下図にあるように、貿易の相手国のリスクや取引先のリスクに対して補償する保険です。「海上保険」がモノに対する保険(貨物保険)であるのに対して、貿易の取引(コト)に対する保険である点が異なります。
戦争・経済制裁といったことに対しても保険が効きます。
経産省が今回、貿易保険の規則を改正してまで導入しようとしたのは、最近のウクライナ情勢、米中対立などの国際的な緊張状況が背景にあることは間違いありません。
また資金面が脆弱なスタートアップ企業が海外にどんどん展開していくのを支援・加速させようという意図もあるでしょう。
●引受条件
国ごとの引受条件(一種の格付け)があります。リスクの大きさを昇順に並べてA~Hのランクを作っています(カントリー・リスクマップ)。欧州・米国の大半はAランクですが、アジア・ロシア・中南米などの国は高リスクに分類されています。
この分類に応じて、貿易保険を引き受ける条件が異なってきます。引受条件はその時々の国際情勢に応じて、頻繁に更新されます。
●転ばぬ先の保険
モノに対する保険だけでなく、コトに対する保険があるのは心強いと思います。知財に関する知的財産権等ライセンス保険というものもあります。海外とのビジネスに関するたいていの事象に対して、保険が用意されていると考えられます。
日本人および日本企業にとって、遠い外国で起るトラブルは対応が難しいものです。たしかに相応の保険料が発生しますが、その分は商売で取り戻すくらいの気概が必要なのでしょう。■
※1 MEXI貿易保険とは https://www.nexi.go.jp/service/