地面のズレ

(2026.08.02 No.212)
国土地理院は7月29日に「2026年7月28日令和8年熊本地震に伴う地殻変動」を速報しました。
https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/20260728kumamoto.html
その後、7月31日に追加情報を発表しました[1]。
7月28日に熊本県南部で発生した「令和8年熊本地震」はマグニチュード7.1の大きな地震でした。熊本各地で大きな被害が出て、まだ救出されていない方々も多数おられる様子です。
●地面の動き
国土地理院の発表は地震そのものの情報ではありませんが、”地面がどう動いたか”を示しています。
地震発生の翌日に計算結果を発表しているのはけっこう早いと思われます。
●SAR干渉の原理
地表観測用の人工衛星から地表へマイクロ波(1GHz)を照射して、その反射波の波のずれ(位相)を計測します。
同じ場所を2回観測して位相の差があれば、その大地に変動が生じたということがわかります。(解説は[2][3]。)
●観測
「だいち2号」(2014年打ち上げ)、「だいち4号」(2024年打ち上げ)の2衛星によって、次のような観測をおこないました。
| 衛星 | 第1回観測日 | 第2回観測日 | 衛星進行方向 | 電波照射方向 | 入射角 |
| だいち2号 | 2025年8月12日 | 2026年7月28日 | 北行 | 西向き | 48.3° |
| だいち4号 | 2026年7月2日 | 2026年7月30日 | 北行 | 東向き | 34.6° |
その結果をまとめたものが図1です。
この結果から、「日奈久断層帯の北西部で最大約1mの東向きの変動、最大約50cmの沈降」が見られたとのことです。

●これまでの実績
今回に限らず、すでに何年も前から同様の解析がおこなわれて、発表されています[4]。
たとえば2016年(10年前)の熊本地震では、
・布田川断層帯の北側では最大1m 以上の沈降と東向きの変動、
・南側では最大30cm 以上の隆起と50cm 以上の西向きの変動
が生じたことが判明しました。
地震だけでなく、火山活動に対しても同様の解析がおこなわれています。
●技術の向上に期待
SAR干渉による地表のずれ検出は常時おこなうことが可能です。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と産業技術総合研究所は人工衛星の観測データをAI学習させることによって、大規模な土地変化を検出できる土台を作っています[5]。
将来的には地盤のゆがみや過去の地震発生データにもとづいて、地震の発生可能性を示すことができるかもしれません。
地中深くを精密に観測することは難しいですが、地表のずれを時々刻々と分析できるのであれば、山崩れや地震の危険性が高まっていることを知ることができそうです。
大地は磐石(ばんじゃく)なものではなく、ふわふわした水面のようなものと考えておくのが、日本人として必要でしょう。■
[1] 国土地理院 「だいち2号」及び「だいち4号」観測データの2.5次元解析による令和8年熊本地震(2026年7月28日)に伴う地殻変動(2026年7月31日) https://www.gsi.go.jp/common/000279833.pdf
[2] 国土地理院 SAR(合成開口レーダー / Synthetic Aperture Radar)とは https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/sar_mechanism.html
[3] 国土地理院 2.5次元解析 https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/sar_3d.html
https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/sar_mechanism.html
[4] だいち2号・だいち4号による干渉SARの解析結果 https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/gsi_sar_ALOS2_seika.html
[5] JAXA「人工衛星「だいち2号」の観測データを活用して国土に特化したSAR基盤モデルを構築」(2025年6月3日) https://www.jaxa.jp/press/2025/06/20250603-1_j.html
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