仮設住宅

(2026.05.20)
地震、津波、台風、山火事といった”災害のデパート”のようなわが国には、絶対安全と言えるような土地はありません。
人ごとではなく、誰もが災害の被災者になって住居を失う可能性があるということです。

その際に仮住まいがすみやかに見つかることが被災者にとって安心の大前提となります。
大規模災害の被災者に対しては、
 「賃貸型応急住宅」(既存の住宅を借り上げ)
 「建設型応急住宅」(新規に建設)
の二つのタイプの住宅が用意されることになっています。
いずれも住宅が「全壊」「全焼」「流失」した場合に提供され、入居費は無料、原則2年間の居住となります[1]。

その他、被災者支援についての広範な情報は内閣府のポータルサイトに掲載されています[2]。

このような応急仮設住宅の状況について、5月13日に総務省より、「災害時における応急仮設住宅の提供等に関する調査<結果に基づく通知>」が発表されました。
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/hyouka_260513000189758.html

●調査結果の概要[3]
要約すると次のようになります。
<背景>
・近年の大規模災害では、多数の家屋が損害を受け、応急仮設住宅の提供に時間がかかっている
・南海トラフ地震や首都直下地震では、これまでより多くの応急仮設住宅が必要になるとの想定なので、この問題への対応が必要となっている
・そのために総務省行政評価局が中心となって応急仮設住宅調査を実施
 - 調査期間:2025年5月~2026年5月に実施
 - 対象地域:熊本地震(2016年)、能登半島地震(2024年)の被災地、南海トラフ地震や首都直下地震が想定されている地域(12都道府県他)の地方公共団体に問い合わせ

<調査結果>
①事前に必要⼾数や供給可能戸数を推計することが必要だが、地方公共団体による推計の精度にばらつきがある

②「賃貸型応急住宅」は3者間契約方式(被災者、物件所有者、地方公共団体による契約方式)が基本とされているが、大規模災害時には被災者が早期に住まいを確保できる「遡及契約方式」※による入居が相当数ある
(事例)遡及契約方式による入居が、熊本地震で約5割、能登半島地震で7割超

※被災者と物件所有者が締結した賃貸契約を後に地方公共団体を加えた契約に切り替え、遡って賃貸型応急住宅とする方式。既存契約の解除やこれに伴う家賃の返金が発生

③「建設型応急住宅」の建設用地は原則として公有地を利用することとされているものの、大規模災害時には候補地が被災したため民有地も多く利用されている
(事例)能登半島地震では想定以上に民有地の利用あり(想定2.8%→実績13.9%)、大規模災害想定地域では、建設型応急住宅の建設候補地のうち民有地の割合は4.2%

<調査結果にもとづく対応>
内閣府に対し、①遡及契約方式の例外的位置付けを改め、遡及契約方式に係る事例等の提供情報の充実を図ること、②建設候補地に民有地を活用している事例を収集・提供するなどにより、更なる検討を促進することなど、必要な措置を講ずるよう要請。

●災害時の行政の働き
災害対策に対しては「災害対策基本法」(1961年)を基本として、体制作り、計画、実行の役割を定めています。
災害発生直後の対応については「災害救助法」が適用されて、避難所の設置、応急仮設住宅の供与、炊き出しその他による食品の給与、被災した住宅の応急修理等が実施されます。
さらに復旧・復興の段階になると、「被災者生活再建支援法」(1998年)にもとづいて、被災者生活再建支援金の支給等がおこなわれることになっています。

●現場での混乱
地方公共団体はまず事前に、応急仮設住宅の必要戸数と供給可能戸数を推計しておく必要があります。
内閣府から「被災者の住まいの確保に関する取組事例集」(2021年5月)[4]が提供されて、その中の「シミュレーションシート」によって必要戸数と確保戸数が推定できるようになっています。

しかし現実には地方公共団体によってその推計方法がバラバラであることが今回の調査で判明しました。
たとえば必要な仮設戸数が全半壊・焼失戸数に対して2割~4割の幅で変動したり、「棟数」と「戸数」が混在していたりしていました。
(そもそも事例集においても、阪神・淡路大震災では棟数、東日本大震災では戸数で示されていて、混乱の元になっています。)

また2割~4割という比率についても、別資料※では地方公共団体や地域ごとに妥当性の確認が望ましいとされていますが、シミュレーションシートではその記載がありません。

※国土交通省「応急仮設必携」(2012年5月)

いずれにせよ、現場である地方公共団体の判断任せとなっているのが実態です。
地方公共団体の現場の声として、
発災後に供給可能戸数等を把握することで足りると考えているため(推計は不必要)」、
推計にそれ以上の手間をかける意味はあるのかと疑問に思う
といった率直な意見も出ました。

●地方公共団体の課題
災害対応に限らず、行政サービスはまず市町村がそれぞれの責任で実施し、それでは対応しきれない場合に都道府県で対応するという基本的な考え方があります(地方自治法第二条)。
しかし人口減少、過疎化のために地方の市町村規模がどんどん縮小してきて、単独での行政サービス維持が難しくなりつつあります。そのためには自然と近隣の自治体が足並みを揃える必要が生じます。

上の調査結果からは、災害時の応急仮設住宅についても、もはや地方の市や県のレベルでは対応できないという現状が読み取れます。

また、
賃貸契約では「宅建士をして、重要な事項について、書面を交付して説明をさせなければならない」(宅建業法)ため、もともと宅建士が少ない地域では一度に多数の物件を処理できない
とか、
業務がひっ迫している中、ライフラインの途絶に係る多くの資料を作成し提出するよう求められた
といった悲鳴も取り上げられています。

●行政としての評価
今回の調査は総務省の行政評価局が実施しました。
応急仮設住宅について、国からの指導や情報提供が地方公共団体の現場にうまく届いているかを、行政評価の立場から分析している点にこの調査報告書の価値があります。
国の思惑どおりうまく仮設住宅の準備・手配が進んでいる部分と、現場に合わない部分や丸投げしている部分なども洗い出しされています。

もう一つ、国から提示するものと、地方の現場で受け取るものとの”粒度”や”感度”の差にも留意することが求められます。
上に挙げた宅建士の件などは現場の事情にうまく合っていなかった例でしょう。

防災対策には終わりはありません。
うまくいっていない部分を直す、足りない部分を補う、といった改善を粛々と続けることが必要です。人手不足の折、なるべく手をかけずに、という条件付きですが。
ちょうど「地方制度調査会」の開催が議論されています。国、地方の行政の枠組みを考え直すよい時期でしょう。

自分自身が被災者になって応急住宅のお世話になるかならないかは運しだいです。防災情報[2]には一度目を通しておこうかと思います。■

[1] 内閣府「2 応急仮設住宅の供与」 https://www.bousai.go.jp/oyakudachi/pdf/kyuujo_c2.pdf
[2] 内閣府 防災情報のページ https://www.bousai.go.jp/index.html
[3] 総務省「災害時における応急仮設住宅の提供等に関する調査結果」結果報告書(2026年5月) https://www.soumu.go.jp/main_content/001072266.pdf
[4] 内閣府「被災者の住まいの確保に関する取組事例集」 https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/pdf/kakuho_zenpen.pdf

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