子に教わる

(2026.05.05)
こどもの日ということでこの話題を取り上げます。
今、世界各国で青少年のSNS利用規制が拡がっています[1]。
オーストラリアでは16歳未満の利用制限が始まりました(2025年12月)。その他、次の国々でも同様の規制が計画されていると言われます。インドネシア、イギリス、フランス、オーストリア、スペイン、ギリシャ、トルコ、アイルランド、デンマーク、アメリカ・フロリダ州、等々。
国内では愛知県豊明市がスマートフォンの利用を1日2時間以内とする条例を成立させて話題となりました。
規制の理由として心身両面で健康を損なう恐れがあること、特に依存性(中毒性)が挙げられます。さらにインターネット上の偏ったあるいは有害なコンテンツによって、成長期の子どもの心理が歪められる恐れもあります。
●政府のさまざまな対応
この問題に対しては、わが国では基本的な法律(「青少年インターネット環境整備法」※)をすでに2008年に作っています。18歳未満の青少年にフィルタリング機能を提供することを携帯電話事業者等に対して義務づけたものです。
※正式には「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」
こども家庭庁[2]では青少年インターネット環境の整備等に関する検討会等を定期的に開催して、有識者及び各省庁と議論を重ねています。
文部科学省[3]は教育の面から、経済産業省[4]は民間企業を通じた啓発活動の面から、総務省[5][6]は情報ネットワーク利用での青少年保護の面から政策を推進しています。
●測る尺度
各省で取り組んでいるさまざまな青少年に対する啓発活動の効果を測る必要があります。そのための尺度として「インターネット・リテラシー指標(ILAS※)」が作られました。
※ILAS(Internet Literacy Assessment indicator for Students)=青少年がインターネットを安全に安心して活用するためのリテラシー指標
4月30日に総務省が2025年度青少年のインターネット・リテラシー指標等に係る調査結果を公表しました。
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu20_02000001_00032.html
2012年度より毎年度、高校1年生を対象に、青少年のインターネット・リテラシーを測るテストとインターネット等の利用状況に関するアンケートをILAS調査として実施してきました。
テストはすべてコンピューター回答で、次の7項目について合計49問(高校生向けの場合)を質問しています。

経済協力開発機構(OECD)では、子供と保護者のインターネット・リテラシーのレベルを定期的に評価することを奨励するなどの勧告が出ており、ILAS調査はこのような国際的な動向にも関係しています。
●正答率の傾向と啓発の効果
2025年度の結果では、
2c「不適切利用リスク(過大消費、ネット依存等)」の正答率(79.5%)が最も高い
2b「不適正取引リスク(フィッシングやネット上の売買等)」の正答率(62.9%)が最も低い
この傾向は2012年度のILAS開始時から変わっていないようです。
図1は2012年度からの各項目の回答率を示しています。
(ただし2022年度に質問の改定がおこなわれたため、2021年度以前は参考情報として見る必要があります。)
それでも、
1b「有害情報リスク(不適切投稿、炎上等)」
2b「不適正取引リスク(フィッシングやネット上の売買等)」
3b「セキュリティリスク(ID・パスワード、ウイルス対策等)」
はこの14年間で大きく回答率が伸びているので、青少年への啓発はそれなりに効果を上げているといえます。

●アンケート結果
調査ではこの他に家庭環境とILAS正答率のクロス分析もおこなっています。
家庭でネット利用のルールを決めている(”ペアレンタルコントロール”)かつフィルタリング利用をしている場合には、ILAS正答率も高いという傾向が見られました。
また最近、学校から「生成AI」や「長時間利用」の危なさについて指導されたという回答が増えていました。「生成AI」自体に対しては「学習効率や効果があがる」という前向きな反応が最も高かったようです。
逆に、フェイクニュースに対して他の言及を確認するとか情報源を確認する等の対応をとったという回答が低下していました。

●中学校、小学校はどうか
2025年度では高校生だけでなく、中学生、小学校高学年、小学校低学年の生徒も調査しました。それぞれ同様の質問を年齢に応じて表現を変えて、質問数も各14問ずつとしました。
その正答率のレーダーチャートを図2~図5に示します。
全体としては、学校で指導された事柄については意識が高くなり、ILASの正答率にも反映されているようです。
ただし小学校低学年では著作権やセキュリティ等が理解できない、小学校高学年では有害情報やプライバシーのリスクについて深い理解がない、中学生では有害情報リスクの意識が低い、といった違いが見受けられます。
その意味では青少年の成長度合いに応じた指導教育が必要といえます。




●大人も必要な知識
小中高の生徒だけでなく、インターネット利用についての良識は大人にも求められます。
いまだにネット詐欺にあったとか、PCを乗っ取られたとか騒ぐ大人が跡を絶たない状況をみると、学校できちんとインターネット・リテラシーを学んでいる子どものほうが意識は高いようです。
少なくとも高校生と同レベルの正答率は必要とされると思いますが、いかがでしょう。子どもや孫からインターネット・リテラシーを教わる時代となりました。■


[1] こども家庭庁「インターネットの利用を巡る青少年の保護の在り方に関するワーキンググループ」第2回(2026年2月12日)資料1-2 諸外国における青少年のインターネットの利用を巡る課題と対策について https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/02dc20e9-a1af-4dd4-ac4f-a4a1a7308146/23e3a264/20250213_councils_internet-kaigi_02dc20e9_02.pdf
[2] こども家庭庁「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会等」 https://www.cfa.go.jp/councils/internet-kaigi
[3] 文部科学省「情報モラル教育ポータルサイト」 https://www.mext.go.jp/zyoukatsu/moral/
[4] 経済産業省「青少年のインターネット利用環境整備」 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/policy/filtering.html
[5] 総務省「青少年のインターネット利用環境整備」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/seishonen.html
[6] 総務省「インターネットトラブル事例集」 https://www.soumu.go.jp/use_the_internet_wisely/trouble/
[7] 総務省「2025年度青少年のインターネット・リテラシー指標等に係る調査結果」 https://www.soumu.go.jp/main_content/001070857.pdf
.jpg)
