異常気象

(2026.09.06 No.220)
今年の夏は例年以上に暑かった気がします。
それにとどまらず、千葉、石川、福井などで発生した大雨もありました。反対に西日本各地では記録的な渇水状況となっています。
7月28日に発生した熊本地震以来、日本列島の各地は自然災害にさんざんに翻弄されたといえます。

●「異常気象分析検討会」
9月1日に気象庁から「令和8年夏を対象とした異常気象分析検討会の結果について」が発表されました。
https://www.jma.go.jp/jma/press/2609/01c/kentoukai20260901.html

「異常気象分析検討会」(2007年6月~)は2006年豪雪のような社会経済に大きな影響を与える異常気象が発生した場合に、大学・研究機関等の専門家の協力を得て、異常気象に関する最新の科学的知見に基づく分析検討を行い、その発生要因等に関する見解を迅速に公表することを目的としています[1]。

今年(2026年)夏の天候は”異常だったか”を検討した結果です。

●「気候変動予測先端研究プログラム」
また同日、文部科学省から「令和8年7月中旬から8月上旬の西日本の記録的な高温に地球温暖化が寄与 -イベント・アトリビューションによる結果-」も発表されました。
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2026/mext_01681.html

この研究は文部科学省「気候変動予測先端研究プログラム」と気象庁気象研究所の合同で実施されました。
令和8年7月中旬から8月上旬の西日本の記録的な高温に対する地球温暖化の寄与を解析したところ、この期間の記録的な高温は地球温暖化の影響が無かったと仮定した場合はほぼ発生し得なかったことが分かりました。また、地球温暖化はこの期間の亜熱帯ジェット気流の北上及びそれに伴う気温上昇にも影響した可能性があります。

先に書いた「異常気象分析検討会」でもこの研究報告が採用されています。

図1. 2026年夏の大気状況(9月1日気象庁発表より引用)

●分析結果
気象庁発表の概要は図1に示されています。

偏西風の流れが南北に大きく2つに分かれ、南に分かれた偏西風と南海上に発生した”モンスーンジャイア”が8月の千葉豪雨を引き起こしたとされました。

また北に蛇行した偏西風によってチベット高気圧が西日本に張り出しました。この高気圧の下降気流が西日本の高温を生じさせました。
この西日本の高温については、

 ”地球温暖化がなかったと仮定するとほぼ発生し得ない”

ことが「イベント・アトリビューション」解析(下記参照)から示されました。

●”温暖化が原因と言えるのか?”
気象の研究者が熱波、大雪、大雨、干魃などの異常気象が発生すると必ず聞かれるのは「これは温暖化のせいですか?」という問いです[2]。

異常気象は、気候システムのなかの自然な揺らぎ「内部変動」によっても生じるので、個別の自然現象が人間活動のせいだと言うことは、原理的にできません。
これがこれまでの専門家の回答スタイルでした。

しかしこのような良心的な専門家の言葉を恣意的に使って、”温暖化のせいとは言えない”と主張する人も存在します。

●イベント・アトリビューション
目新しい言葉ですが、

 人間活動による気候変動が、観測されたような異常気象の発生確率や強度をどの程度変えてきたか

は定量評価できます。
すなわち気象モデルを直接議論する前に、人間活動による影響を推定しようとするものといえます。
この新しい手法が「イベント・アトリビューション」とよばれ、2011年以降、活発に研究がおこなわれています。

下図に示すように、人間活動によって「温暖化する地球」と「温暖化しない地球」それぞれの気候モデルでつくります。そして、産業革命によって二酸化炭素などの温室効果ガスが増えて、温暖化が始まったとされる19世紀から現在までの気温の変化を、それぞれの地球でシミュレーションします。シミュレーションは、それぞれの地球で100回ずつ行います。([3]より)

それらの結果、英国の洪水(2000年秋)、ロシアの熱波(2010年)、米西部の熱波(2013年)などが人間が発生活動を高めていた例とされます[4]。

図2. イベント・アトリビューションの説明([3]より引用)

●まだ欠点はある
イベント・アトリビューションによれば、学説をぶつけ合う泥仕合よりもマシな議論ができる気がします。

ただし論拠となる気候モデルの設定については、まだ批判される点あるいは曖昧な点が残っているようです[5]。
それに対する警戒の言葉も見られます[6]。

しかし昔と違って、最近のIT技術によれば膨大なデータの反復実験も可能になってきており、異なる学説のモデルを比較評価することも容易になります。
人間同士の意見対立をAIに裁定してもらう時代になるのでしょうか。■

[1] 気象庁 異常気象分析検討会ホームページ ttps://www.data.jma.go.jp/extreme/index.html
[2] 異常気象分析検討会(2015年2月23日)資料(2−2) 今田由紀子「イベントアトリビューション研究の現状と気象研究所における計画」 https://www.data.jma.go.jp/extreme/kaigi/2015/0223_teirei/h26gidai2-2.pdf
[3] JAMSTEC探訪「“100のパラレルワールド”で猛暑の原因を探る。「イベントアトリビューション」×「高解像度モデル」で地球温暖化の影響を評価するには」(2024.12.23) https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/explore-20241223/
[4] Wikipedia イベント・アトリビューション https://ja.wikipedia.org/wiki/イベント・アトリビューション
[5] Roger Pielke Jr."Tricks of the Trade"(2024.12.31) https://rogerpielkejr.substack.com/p/tricks-of-the-trade (邦訳「気候危機を煽るイベント・アトリビューション研究のトリック」(監訳:杉山大志、訳:木村史子) https://ieei.or.jp/2025/03/roger_20250318/)
[6] 江守正多「組織的な温暖化懐疑論・否定論にご用心」(2020.3.24) https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0c5ebe740e18e09a8c301999957745d1dbf0567d

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