郵便ポスト その2

(2026.08.31 No.219)
8月20日に総務省は情報通信審議会に対して、「郵便事業の安定的・持続的な運営を確保するための方策及び郵便局が地域を支援する役割を果たすためのサービス提供の在り方」について、諮問しました。
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu14_02000171.html
●審議会の体制変更
同日開催の情報通信審議会郵政政策部会はこの諮問を受けて、これまでの郵政政策部会「郵便局活性化委員会」の役割を二つの委員会で分担するようになりました。
従来からの「郵便局活性化委員会」は地域を支援する役割について、また新設された「郵便事業政策委員会」は本業の安定的な運営を議論する場となりました(下表)。
8月26日にこの「郵便事業政策委員会」第1回が開催されました。
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/yuseijigyo_seisakuiinkai/02ryutsu14_04000218.html
| 郵政政策部会の委員会 | 審議する内容 | 総務省の担当課 |
| 郵便局活性化委員会【変更】 | 郵便局が地域を支援する役割を果たすためのサービス提供の在り方に関する事項 (これまでの”郵便局の利便性向上の在り方~”を変更) | 情報流通行政局郵政行政部郵便局活用課 |
| 郵便事業政策委員会【新設】 | 郵便事業の安定的・持続的な運営を確保するための方策に関する事項 | 情報流通行政局郵政行政部郵便課 |
●郵便事業の課題
先に「郵便ポスト」(2023年4月15日)という記事でも触れたように、全国にユニバーサルサービスを提供する義務を負っている郵便局にとって事業運営はますます厳しくなっています。
日本郵便の事業では郵便業務(13,356億円)>荷物業務(8,484億円)>銀行業務(4,873億円)>保険業務(1,402億円)の順で営業利益が大きいのですが、2025年度については郵便業務、銀行業務、保険業務の3つが赤字状態で、全業務合計でも赤字でした。
郵便業務は2022年度以降赤字が連続しています。
2024年10月に郵便料金が改定されましたが、それでも2026年度以降も赤字が拡大する見込みです。
この3年間のうちに、社会のオンライン化が加速するとともに、消費者物価の上昇、人手不足による人件費上昇という要因が加わりました。
ますます本業の郵便業務を維持することが難しくなってきました。

●法律改正
そこで何とか郵便事業や郵便局ネットワークを維持するために、2026年6月に郵便事業をてこ入れする法律改正をおこないました(「郵政民営化法等の一部を改正する法律(令和8年法律第50号)」)。
●自助努力?!
この法律改正は日本郵便に対して、デジタル技術活用等の業務効率化や経営資源の有効活用の取り組みを”義務づけ”しています。
企業経営の上では、言われなくても当たり前の事柄ですが、最近の日本郵政で生じたさまざまなトラブル(郵便物の誤配・放棄・隠匿、運送事業の許可取り消し等々)に対する管理責任をあらためて確認しているのだと考えられます。
●郵政三事業の再確認
三事業のユニバーサルサービスを確保するために、株式保有や相互の業務契約・窓口契約について見直しをおこなっています。
●権利消滅金で交付金拡充
2018年度より郵便局窓口事業の全費用(約8,500億円)を維持するために、銀行事業と保険事業から交付金(約3,200億円)が渡っています。
今回の法律改正では郵便事業等を安定化させるために、さらに650億円の交付金を追加します。その財源の中には旧郵便貯金の”権利消滅金”を利用します(※)。
※2007年以前に預けられた旧郵便貯金は2027年には払戻し権利が消滅します[2]。ずっと払戻し権が残るいわゆる”休眠預金”と異なる点です。

●インフラ事業を維持するということ
もはや、はがきや封書をどんどん使う時代には戻りません。
年賀はがきですら大幅に減少しています。
そういう時代にあって、日本全国に展開している郵便局ネットワークをどのように維持していくか、は国民全体で考える宿題だと思います。
それは旧国鉄のローカル線や、上下水道の整備も同じかもしれません。
誰しも必要とは言うが、その維持費の負担は避けたい。
ユニバーサルサービスを堅持するためには、理屈の上では相応の国費も投入しなければならなくなります。
ではどこまでのサービスを維持すべきか。
それをこの委員会で議論していくことになります。
議論のまとめは1年後を予定しているそうです。
●郵便局+地域振興
拡大一辺倒だった高度成長期の逆をたどるわけですから、郵便、銀行、保険、配送の4事業を1つの郵便局で再統合するのは、自然な発想かもしれません。
前回(2023年4月15日)に触れたように、わが国の郵便局配置はコンビニのように幹線道路沿いに偏在しないで、面的にバランスよく配置されています。
こういう既存のネットワークを地域振興と組み合わせて新しく活用するアイデアこそ、イノベーションなのではないかと思います。■
[1] 郵便事業政策委員会第1回(2026年8月26日)資料1-3 事務局説明資料 https://www.soumu.go.jp/main_content/001088874.pdf
[2] 総務省「郵便貯金の権利消滅に関するお知らせ」 https://www.soumu.go.jp/yusei/yuucyo_kenri.html
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