正々堂々
(2023.06.03)
5月30日に、スポーツ庁で「スポーツ審議会スポーツ・インテグリティ部会(第2回)」が開催されました。
(https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/001_index/bunkabukai007/jsa_00135.html)
この部会は各スポーツ団体のスポーツ・インテグリティ(スポーツが様々な脅威により欠けるところなく、価値ある高潔な状態)が確保されるように、コードのあり方を議論することを目的としています。
●ガバナンスコード
すでにスポーツ庁は「スポーツ団体ガバナンスコード」(2018年6月)を策定して、スポーツ団体が組織として守るべき原則(13項目)を掲げています。
東京オリンピック・パラリンピックを頂点として、多くのスポーツ団体が結成され、国の補助金も増加している状況があります。スポーツの振興はたいへん重要ですが、組織としての運営が正しくおこなわれているか、監査する機能も必要です。最近、発覚したいろいろなスポーツ団体の不祥事もそのようなガバナンス機能の見直しの契機となっています。
●スポーツ庁の問題意識(※1より引用)
スポーツ団体におけるガバナンス向上への意識は着実に向上しています。しかしながら、コードを遵守すること自体が目的となり、規定は整備されていても適切な運用がなされていないなど、形式的な対応に留まっている団体の存在も指摘されています。
また、依然として一部のスポーツ団体においてスポーツの価値を脅かす不祥事事案が発生しており、スポーツ団体の事業運営の適正性の確保に対する社会的要請は依然として高いものです。
●今回の重点議題
第2回の部会の議題は、ガバナンスコードの中にある次の項目について、スポーツ団体の声を聴くことにありました。
- 外部理事の目標割合(25%以上)及び女性理事の目標割合(40%以上)
- 理事在任期間の上限を10年(例外措置として14年(1期又は2期の延長))とする原則
- 役員候補者選考委員会の独立性を担保するため、具体的な基準
- 専門人材(法務、会計等)の確保を行う上で、それぞれの役割の明確化
- 中央競技団体(NF)(※2)の負担軽減や知見共有の観点
●主要なスポーツ団体からの報告
日本オリンピック委員会(JOC)、日本バトミントン協会、日本トライアスロン連合、日本ライフル射撃協会、日本視覚障害者柔道連盟などから、組織運営(役員構成、窓口体制など)の説明がおこなわれました。
スポーツ庁がコードとして要求している条件が、各団体によってどのように受け取られているか、それぞれ色合いが異なりました。
- JOCはさすがに各スポーツ団体を総括する立場でもあり、コードは広く受け入れています。アスリート委員も男女各1名とし、理事の再任上限は5期10年と規定して、継続的に新陳代謝をはかろうとしています。なおJOC加盟団体66のうち、再任回数の上限設定は38団体。
- バトミントン協会では、選手の男女構成が1:1にもかかわらず、評議員は50:3のアンバランスがあること、また理事会のほぼ全員がバトミントン出身者で閉鎖的であることを課題として認識。その他、事務局機能やガバナンス機能の弱さなども自覚しています。
- トライアスロン連合は国内組織と国際組織の連携において、国内の再任上限が国際組織と合わないことを指摘。何らかの対処策が必要としています。
- ライフル射撃協会も同様に、国内組織と国際組織の任期の違いや、一律の男女比目標や、組織外の法律相談者設置についても善処を望んでいます。
●しがらみの世界
各スポーツ団体は小規模なボランティア活動から始まって、じょじょに拡大し、国際的なつきあいもおこなうようになった経緯があります。そのため、特定の人に依存した活動にならざるを得ず、大きな組織体制となってから、いろいろな矛盾やしがらみが残ることになりました。また日本特有の縦型(先輩・後輩、先生・生徒、上司・部下)の人間関係も色濃く残っているでしょう。
しかし少なくとも国の税金でスポーツ振興をしている範囲では、組織運営に透明性が必要です。”スポーツマンシップに則り、正々堂々と”を標榜する以上、その活動組織もクリーンであることが期待されます。ぜひ、これからもこのインテグリティの確保に努めてほしいと思います。■
※1 スポーツ審議会(第34回)(2023年3月29日)「スポーツ団体ガバナンスコードの今後の在り方について(諮問)」
※2 国内において特定のスポーツを統括して広範な役割を担い,そのスポーツに関わる人々の拠りどころとなる団体を指します。