スポーツDX
(2023.05.02)
3月23日に開催された第2期スポーツ未来開拓会議(第4回)の資料が5月近くになって公開されました。
(https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/027_index/siryo/jsa_00004.html)
今回のテーマは「スポーツDX」、すなわちデジタル技術を活用したスポーツ産業の変革です。
「見る」:新しい観戦体験、ファンエンゲージメントの拡大など
「する」:コンディション情報の可視化、審判技術の向上など
「ささえる」:チケットの販路拡大など
の3つの側面から、スポーツ界を革新できる可能性があります。
●テクノロジーへの期待
選手の強化にデジタルデータを利用するなどの他に、オンラインチケット(感染追跡も兼ねる)、デジタル選手カードの販売など、デジタル技術によって新たなビジネス開拓が可能となります。
スポーツというと、どうもリアルな観戦しかイメージを思い浮かべませんが、野球などは昔からテレビ放映はあたり前でした。すでにこれは立派に放映権ビジネスです。最近では技術が進んで、さらにメディア融合の可能性が高まっています。
●インテグリティ対策
そのようなスポーツDXの陽の面だけでなく、陰の面も押さえておく必要があります。ここではインテグリティ対策と総称しておきます。
- スポーツデータの財産権....選手個人の成績データ、運動データなどの所有権の問題があります。米国では、成績データのように公表されているものは基本的にはパブリックなものとされています。また身体データのようなものは、選手と所属リーグとの契約しだいとなります。また無許可のデータ取得や再販も起り得ます。日本国内でもデータの取扱いについてガイドラインが必要とされます。
- NFT(Non-Fungible Token)による二次流通市場....日本でもガイドラインが公表されていますが、今後、引退選手なども含めて、二次流通市場の適切な利益還元モデルを作る必要があります。
- ファンタジースポーツ(実在選手による仮想チームのシミュレーション)....ユーザー課金からの賞金提供による賭博成立を避けるようなビジネスモデルが必要となります。
- スポーツベッティング....デジタル化によって、世界中のスポーツは賭けの対象となり得ます。欧米では賭けは合法となっています。日本のスポーツに対する海外からのベッティングは5兆円規模で、そのまま日本の逸失利益となっています。さらに八百長対策は必須です。国内の法制度の整備が急がれます。
●無形資産としてのスポーツ
このように見てくると、これからのスポーツはデジタル化によって、無形資産としての価値をますます高めていくと思われます。これまで観戦だけであった楽しみ方が、選手個人への応援ツールや仮想ゲーム化まで拡がって、コンテンツとして大きな利益源となる可能性を秘めています。そのための仕組み作りを早めにおこなうことが必要です。幸い、一歩先を進んでいる米国の事例などを参考にすることができますから、日本に合った形で整備していくことは可能と思います。
そのような無形資産にもとづくビジネスを展開するためには、日本のコンテンツホルダー(競技リーグや選手会など)が積極的なガイドライン整備やビジネスモデル作りをしていくことが大事です。スポーツが稼げるビジネスになれば、それをめざすスポーツ選手の層も厚くなっていくはずです。■