あなたに似た人

(2023.03.18)
ロアルド・ダールの有名な短編集のタイトルを真似てみました。もちろん内容はまったく違います。
もし、あなたの顔にそっくりなアバターが、メタバース空間の中を歩き回っているのを見たとき、あなたはどう思いますか?
3月16日に知的財産戦略本部の「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題への対応に関する官民連携会議」(第2回)が開催されました。(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kanmin_renkei/kaisai/dai2/gijisidai.html)
メタバースは仮想空間内のコミュニケーション・サービス全般を指すもので、これまでのインターネット上のさまざまな法的トラブルに加えて、3次元仮想物の「モノ」や「アバター」についてのトラブルが増えそうな気配です。それに対応するために、官民の有識者が集まって、法的課題を議論しています。

●現実世界を前提とした法律
現行の法律は現実世界の中の「モノ」や「人」の存在を前提としています。家屋や土地の所有権も、実体があることで明確です。また商品デザインも実際の商品が前提です。
一方、メタバース空間内の「モノ」は何でしょうか。それは誰のものでしょうか。考えるほど、たいへんややこしいことがわかると思います。
この連携会議では、課題を3つに分けて、それぞれ分科会を設置して議論しています。第一は現実と仮想にまたがる知的財産、デザインについて、第二はアバターの肖像権について、第三は仮想オブジェクトやアバターに対する行為について、です。
●さまざまなトラブル
起こりうる事例として次のようなものが想定されています。
・現実世界のデザインを仮想空間内で真似された
・現実世界の著作物ライセンス条項が仮想空間のユーザーには適用されない
・現実の人の顔写真をアバターに勝手に利用された
・他のアバターの容姿を真似た「なりすましアバター」
・アバターに対する誹謗中傷、つきまとい、仮想暴力
たしかに言われてみれば、現実世界と同じようなことが発生します。しかも仮想世界ではとても低いコストでできてしまう。アバターのサイズを巨大化して、相手の視線をさえぎる、といった現実にはあり得ないことも問題になります。

●現実世界の法律を拡大するのか、それとも・・・
検討はまだ続いている段階です。現行の法律をそのまま仮想世界にも適用する、新たな法律を作る、運営業者の運営規則(ソフトローとよびます)で対応する、などいくつかのやり方が考えられています。
さらにメタバースは全世界のネットワークにまたがっているので、その対応は国内にとどまらず、海外の情勢も気にする必要があります。
●あなたは誰?
メタバースの仮想3次元空間の中で歩き回っているアバターにしても、それが生身の人間が操っているものかは判然としません。言語生成AIが自動的に会話しているだけかもしれません。AIが操作しているロボット・アバター同士が、無難で無意味な会話をあちこちで勝手におこなっている様を眺める時代になるのでしょうか。■

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