作るは易く、捨てるは難く

(2023.04.28)
4月24日、経産省で「第1回 再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会」が開催されました。
(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/disposal_recycle/001.html)

その名の通り、太陽光発電など再生可能エネルギーの発電設備がそろそろ老朽化し、廃棄時期にきていることから、その廃棄・リサイクルのあり方を議論する会合です。

●どのような設備か
再生可能エネルギーの発電とされているのは、太陽光発電、風力発電、中小水力発電、地熱発電、バイオマス発電で、これらを合わせた発電量は2021年度に20.3%(2,095億kWh)に達しています。2011年度と比較すると倍増しています。
中でも設置しやすい太陽光発電は、0.4%(2011年度)⇒8.3%(2021年度)となり、さらに14~16%程度(2030年度)まで急増する見込みです。
再生可能エネルギーによる発電が増えてくることは、日本全体のエネルギー調達としては好ましい傾向と見られます。

●廃棄の問題
発電設備の廃棄処理の責任は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)等により、発電事業者等にあります。
NEDO(※1)による太陽光発電パネルの廃棄量試算では:
(仮定)
①発電設備の出力低下にともなって排出(廃棄)される
②買取期間終了後も設置場所の性質(自己所有、借地等)に応じて一定期間発電事業が継続されてから排出(廃棄)される
(予測)
2035~2037年頃に年間排出(廃棄)のピークがきて、年間約17~28万トン程度、産業廃棄物の最終処分量の1.7~2.7%に相当する量と予測。
環境省も同様の調査をおこなっており、将来の排出量は年間50~80万トンと予想。パネルの廃棄理由の80%は「災害等によるもの」(2020年度)。業者アンケートによると、リユースに7割、リサイクルに3割回っています。

●現実になり始めた懸念
経産省に寄せられた情報(※2)の中には、太陽光パネルに関するものが多く、全体の9割を占めています。懸念の種類としては:

  • パネルが一部破損したままで廃棄・修繕されていない(故障・管理不全)
  • 台風などの災害時に鉛などの有害物質が流出しないか(有害物質)
  • 個人事業者であるため、20年後に適切に廃棄されるか心配(将来の懸念)
  • 事業者からの説明が不十分で不信感が強く、将来廃棄されるか懸念(将来の懸念)

現実には、これらの写真のような状況が発生しています。(検討会の経産省資料より引用。)

●対策

  • 再エネ特措法(※3)の認定基準として、発電設備の廃棄についての計画が適切であることを求めています
  • 再エネ特措法の改正(※4)では、10kW以上の事業用太陽光発電設備について原則外部積立を行う積立制度により費用を担保しています

●少しやっかいな話

  • パネルの含有物質が不明であるため、廃棄パネルの引取りを断られる例があります
  • パネルのリサイクルのコストがまだ高いため、その低減に向けた技術的・制度的支援が必要とされます
  • 太陽光発電の場合、大規模な設備を地上に置いているケースと、個人の自宅屋根に置いているケースがあり、それぞれ事業形態や排出の契機が異なるため、一律の施策では対応できないかもしれません
  • 地方公共団体が行政代執行を行う場合、電気系統の接続が切れていても太陽光パネルは発電可能な状態が継続されるため、ただちに「廃棄物」には該当しないということもあり得ます

●これまでの経験
製品として市場に出回ったものを、法律によって製造業者が責任を持ってリユース/リサイクルしている例として、自動車、家電などがあります。このような先行例を参考にすることも検討されています。
自動車も家電も長い経験があるので、リユースやリサイクルの環境が整っています。しかし太陽光パネルのようなものは、まだ取扱い業者も少なく、リサイクル技術も開発の余地があります。まだまだ、知恵を絞る必要がありそうです。■

※1 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
※2 再生可能エネルギー事業の不適切案件に関する情報提供フォーム https://saiene.go.jp/register/
※3 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(2012年7月施行)
※4 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(2022年4月施行)

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