社会教育士
(2023.05.27)
5月26日に、文科省で社会教育人材部会(第1回)が開催されました。
(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/013/giji_list/mext_01450.html)
この部会は中央教育審議会の生涯学習分科会に属する部会として、”社会教育人材の養成及び社会教育士の活躍機会の拡充”について議論するため、2年間の活動をおこなうことになっています。
「社会教育士」は、社会教育の制度や仕組み、基礎的な知識に加え、”ファシリテーション能力”、”プレゼンテーション能力”、”コーディネート能力”の専門的な課程や講習を修了した人たちの称号です。
社会教育士は2020年度から始まった制度ですが、もともと「社会教育主事」という、社会教育を行う者に対する専門的技術的な助言・指導に当たる専門的教育職員の制度があり、社会教育法に基づいて教育委員会に置くこととされています。社会教育士制度は、この社会教育主事になるために修得すべき科目等を定めた社会教育主事講習等規程の一部改正によってできた制度です(※1、※2)。
つまり、教育委員会からの発令が必要である社会教育主事制度はそのまま従来通り継続されますが、”発令がなくても名乗れる”社会教育士が地域の「学びのオーガナイザー」として活躍することが期待されています。
●制度発足の事情
2012年7月、全国市長会から、社会教育主事の必置義務の廃止の要望が提出されました(※3)。
実は各教育委員会の社会教育主事の配置は6,796人(1996年)から1,451人(2021年)まで減少し、配置率は3割程度まで低下しています。その理由としては、この間に平成の市町村合併によって教育委員会の数自体が減ったことと、1997年度で社会教育主事の給与費補助制度が終了したことが挙げられます。
そもそも社会教育主事という役割が曖昧であり、職務に関する首長、あるいは地域住民の認知度が低いという認識を文科省自ら持っていました(※4)。
そこで、教育委員会の社会教育主事の制度はそのまま維持した上で、”社会教育主事”の素養を持った人を増やし、民間活動を実行しやすくするために、社会教育士の認定制度を作りました。
社会教育士の資格は、講習(4科目8単位)か大学養成課程(6科目24単位)によって得られます。
●これからの社会教育
社会教育士の称号付与者は、主事講習と養成課程の両方合わせて4,500人を越えました。
今や社会教育士に期待されている役割として、次のような多岐にわたる事柄が示されています。
・地域に精通したコーディネート
・地域課題や住民ニーズの把握・分析
・行政の関係部署との連携・調整
・いろいろな手法での資金調達
・主体的な参加を促すファシリテーション
・納得を引き出すプレゼンテーション
・多様な特性に応じた学習支援
この社会教育人材部会で議論すべきテーマは、社会教育士の役割定義、能力向上策、活躍促進策などにあります。
●社会教育士の役割
もう一度、上記の期待項目を眺めてみると、もはや教育の範囲を越えて、社会活動全般の役割と見てよいでしょう。
もともと教育活動に閉じた役割だったものを、社会活動全般に拡大したため、民間人として幅広い活動が可能となった反面、資格の特徴が依然としてはっきりしないという声もあります(社会教育士へのアンケート調査(上記部会資料)より)。
これからはこども家庭庁の政策とも関連を深めるべきだろうと思います。学校や保育所の当事者だけでは、地域のステークホルダーを調整することは難しいといえます。また形骸化したPTA活動のあり方にも社会教育士が関与できる可能性があると考えます。
「地域」と「教育」との接点になれるのではないかと思います。
●先生の再定義
なぜ社会教育主事という制度が残ったままなのか疑問ですが、将来的には社会教育士の人材プールの中から社会教育主事が選ばれて任用されるという形が自然な気がします。これは情報教育や金融教育など、民間のほうに人材の厚みがあるような分野でも同様でしょう。専門知識があり、教えることに長けた人は、学校の教師や教育委員会以外にもたくさんいます。それでは生え抜きのプロ教師に求められる専門スキルは何でしょうか。■
※1 社会教育士ホームページ https://www.mext.go.jp/a_menu/01_l/08052911/mext_00667.html
※2 「社会教育主事養成の見直しについて」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/gakugei/1399077.htm
※3 全国市長会「さらなる「基礎自治体への権限移譲」及び「義務付け・枠付けの見直し」について【提案】」(2012年7月24日) https://www.mayors.or.jp/p_opinion/documents/240724gimuwaku_teian.pdf
※4 生涯学習分科会(第72回)議事録(2013年9月17日) https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11293659/www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/siryou/1341521.htm