遠ざかるサンマ
(2023.04.09)
4月7日に水産庁は「サンマの不漁要因と海洋環境との関係について(調査・研究の進捗)」を発表しました。
(https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/230407.html)
国立研究開発法人水産研究・教育機構の研究をまとめたもので、近年のサンマの不漁要因及び環境変動の関係について、得られた科学的知見を報告したものです。
(この科学的知見という響きがいいですね! 忖度もねつ造もありません。)
●サンマ漁の現状
サンマの漁獲量は35.5万トン(2008年)をピークに、2万トン(2021年)まで減少しました。どんどん漁場も沖合に移っているため、今やほとんどが公海上で漁をしています。小型漁船は出漁できず、サンマ漁から撤退する船が増えている状況です。
図は2008年、2017年、2021年の漁場を表したもので、日本沿岸から遠のくとともに漁獲量が減っていることがわかります(青線より東は公海)。図は資料※1の中の図を改変したもの。
●他の魚介類も不漁
2021年に水産庁「不漁問題に関する検討会」(※2)が開催され、近年のイカ、サンマ、サケの不漁にみられるように、従来獲れていた魚が獲れず、獲れていなかった魚が獲れるといった状態が何年も続いていることを問題視し、その要因分析と今後の施策のあり方を検討し始めていました。
今回の研究発表は、水産庁の研究委託を受けた水産研究・教育機構が、検討会で取り上げられた仮説を科学的に立証したものといえます。
●サンマ不漁の要因(要約したもの)
- (きっかけ)2010年にサンマの分布が突然沖合に移動したことが原因
- (海水温の上昇)沖合化の背景として、親潮の弱化とそれに伴う道東・三陸沖の水温の上昇があると考えられる
- (餌条件の悪化)サンマの分布域が沖合に偏ったために産卵場や生育場も、餌条件が良くない沖合に移動している
- (生育の悪化)沖合の方が餌の密度が低いため、生育場の沖合化は、成長の低下を招くだけではなく、成熟にも悪影響を及ぼしている
- (他種の影響)日本に近い海域では、他の浮魚類が増加したことにより、サンマが日本の近くに回遊しにくくなっている可能性が考えられる
その他、いろいろな要因が複雑に関係しています。
もちろん外国籍の漁船が増加している影響も無視できませんが、全体の中では一部の問題にとどまっているようです。上図からわかるように、日本のサンマ漁獲量の95%が公海上ですから、他国を責めるわけにもゆきません。国際的な資源管理機関によって漁獲量制限もおこなわれています(※3)。
これらの原因が地球温暖化によるものなのか、自然の周期なのかは、はっきりわかりません。いずれにせよ、自然のふるまいに人間社会が左右されていることは事実です。
サンマは私たちの食卓からも遠のいてゆきます。■
※1 「サンマの不漁要因解明について」 https://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr2023/20230407_col/20230407col_press.pdf
※2 水産庁「不漁問題に関する検討会」(2021年4月~6月) https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/furyou_kenntokai.html
※3 北太平洋漁業委員会(NPFC):日本、カナダ、ロシア、中国、韓国、米国、バヌアツ、台湾、EU(9ヶ国・地域)が参加