リサイクルボックス
(2023.05.04)
4月28日に環境省から「自動販売機横リサイクルボックスへの効果的な異物混入防止に関する実証事業の結果について」という発表がありました。
(https://www.env.go.jp/press/press_01537.html)
今回は政策といっても、少し軽めの話題です。
自動販売機の横には、その自販機業者が設置したリサイクルボックス(RB)が設置されていることが多いと思います。カンやペットボトルなどに区分けされた専用の入れ物です。
しかし、そのRBに異物(ゴミ類)も投棄されることがあり、それによってリサイクルの際の作業や品質に影響が出ています。
それをどうすれば減らすことができるか、を調べるために、2022年10月~12月にかけて2ヶ月間、川崎市、調布市の2ヶ所で実施した調査の結果です。
次の3種類の実験をおこないました。
(1)2種類のメッセージ
「強いメッセージ」(違法性を強調)と「弱いメッセージ」(リサイクルへの協力要請)の掲示を比較すると、弱いメッセージで異物低減効果が見られました。
(2)RB自体を撤去した場合
7ヶ所中、4ヶ所でごみ散乱の減少、2ヶ所で増加、1ヶ所で変化なし(ごみ散乱状態)となりました。
(3)新型RBを設置した場合
新型RBは投入口の位置と角度を変え、色もゴミ箱感を払拭したもの(※1)。76%の場所で異物低減効果が見られました。ただし、RBに入らない容器類が路上に放棄されていた例が見られました。(写真は※1から引用したもの。)
●ユーザー・インタフェース
機械と人間に係わる面白い実験だと思います。
(1)の実験は、対象とする装置は変えずにメッセージだけを変えています。強いメッセージよりも、弱いメッセージのほうが人が前向きになるような動機付けができるという意味でしょう。法律でおどされるよりも、”あなたの協力に期待します”と言われるほうが気分がよいわけです。
(2)の実験では、はっきりと”捨てるな”という意味を込めています。その結果はまちまちで、効果の有無ははっきりしません。現実に、自販機で飲料を購入したのはよいとして、その場で飲み終わっても空き容器を持ち帰らなければならないのは、少ししんどい気がします。ポケットに入れて帰るというわけにもゆきませんし。
(3)の実験では、アフォーダンス(モノがヒトを誘う効果)を狙っているのかと思います。従来のRBは口が少し上に向いているため、何でもポンと放り込めそうな雰囲気をしています。新型RBは下の口から少し上向きに入れる必要があるため、あたかも”意思を持って入れてください”とRBが示しています。そのわずかな差が効果を生むのだろうと思います。
自販機は便利な存在ではありますが、ゴミの面では難しさも持っています。日本の都市では、多くの公共的な場所でゴミ箱がありません。したがって、ゴミは自分で持ち帰ることになります。しかし自販機で新しいゴミが発生すると、人はさまざまな行動をとります。ずっと屋外で仕事をしている人にとっては大きな問題でしょう。規則を持ち出す以前に、どういう理由でゴミを捨てていくのか、問いかけるのが先ではないかと思います。■
※1 新機能リサイクルボックス実証実験結果報告(広島県での実験結果) https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/eco/recyclebox.html