痛勤電車と言っていた時代も
(2023.05.25)
5月18日に国交省より「鉄道輸送統計月報」(2023年2月分)が公表されました。
(https://www.mlit.go.jp/report/press/joho05_hh_000742.html)
この月報は統計法に基づいて、鉄道、軌道及び索道の各事業者に対して毎月調査した結果です。
データは、列車に乗った人を数えた「旅客数量(人)」と、どれだけの人がどれだけの距離を乗車したかを見る「旅客人キロ」です。交通サービスでは運んだ人の数と運んだ距離に応じてコストがかかります。それを見るのが旅客人キロの単位です。
貨物輸送量も同様に測定して、貨物量を見る「貨物数量(トン)」と、距離を含めた「貨物トンキロ」の二つの数値を調べています。
そして、それぞれの数値を前年同月比で比較しています。またCOVID-19以前の2019年と比べています。
●2023年2月の実績
- 旅客数量総合計:16億3270 万人(前年同月比18.2%増、2019年同月比15.4%減)
- 旅客人キロ総合計:276億人キロ(前年同月比33.7%増、2019年同月比16.8%減)
- 貨物数量総合計:335万トン(前年同月比5.3%増、2019年同月比10.4%減)
- 貨物トンキロ総合計:15億トンキロ(前年同月比10.4%増、2019年同月比13.3%減)
●状況は復旧したか
上図は統計月報からのデータを元に年単位でグラフ化したものです。COVID-19禍によって2019年から大幅に乗客が減少したことは、強く実感されました。2022年の時点では、まだ2019年のレベルから見て9割に達していない状況です。
COVID-19によって、通勤者と旅行者が大幅に減少したことが理由と考えられますが、貨物輸送のほうも同様に減っています。
下図は統計月報から引用したもので、コンテナと車扱(※)のそれぞれの貨物数量と貨物トンキロについて、2020年以降と2019年同月を比較したグラフです。いずれも、ほとんどが0%以下で2019年レベルに戻っていない中で、なぜか毎年10月頃に突出しているという不思議な現象が見られます。
(※車扱:鉄道貨物の輸送形態(列車形態)で、貨車を1車単位で貸し切って輸送する形態。)
●今後はどうなるか
JRも民鉄も、旅客の戻りに期待しつつも、いろいろな対策を立てていることと思います。
ポイントの第一は、COVID-19の第五類移行を受けて、国内旅行が大きく増えるかどうか、です。個人やグループ旅行の機運は上向きでしょうが、修学旅行のような団体旅行にはまだ用心深くなるでしょう。
ポイントの第二は、通勤者の減少です。仮にCOVID-19への警戒がなくなったとしても、新しい働き方としてのテレワークはそのまま残るはずです。国としても、通勤時間をなくして生活のゆとり感を増加させる施策を出してくるでしょう。また人材確保のために、勤務条件としてテレワークの導入圧力は増すはずです。そもそも労働力人口の減少がありますので、いずれにせよ、通勤者の数は確実に減ります。
すでに都市部の民鉄では、減便を進めつつあります。COVID-19対応の一時的なものというより、長期的なトレンドを踏まえているのではないかと考えます。都市部でも鉄道の廃線をまじめに考える時代になってきたのではないでしょうか。■