日本の学会

(2023.03.21)
日本には多くの学会、すなわち同じ分野を研究している研究者が集まり、情報交換をしたり、学術発表をおこなう団体があります。society とか academic association と英語で表現されるものです。明確な定義がないので困るのですが、いちおう日本を代表する学術団体「日本学術会議」に協力している団体(協力学術研究団体とよばれる)を学会とよぶことにします。個人会員数が100人以上、定期的に学術誌を発行しているなど、一定の基準を満たすと、日本学術会議から指定されます。
(https://www.scj.go.jp/ja/group/dantai/index.html)

日本の学会の状況
少し前の情報になりますが、2022年3月時点で、学会数は2,097団体、そのうち人文・社会科学系は1,070団体自然科学系は1,027団体となっています。
だからどうした、という声が出てきそうですが、単純な団体数だけでは日本の学会の動向を知るには不十分です。そこで、次に各学会に所属する個人会員数を調べてみることにしました。半分は仕事のため、半分は個人的な興味のためです。

学会の会員数は
個人(研究者)は特定の学会に入会するだけでなく、その研究分野に近い別の学会にも入会することがあります(むしろそういう人が多い)。したがって学会の個人会員数を単純に足し合わせると、重複した人数となることに注意しなければなりません。
そうして各学会の個人会員数を調べると、全学会で約332万人、うち人文学・社会科学系の会員数は約54万人でした(いずれも2019年度時点)。つまり人文・社会科学系と自然科学系と分けたとき、学会数では半々くらいですから、一学会あたりの会員規模は自然科学系のほうが大きいという結果です。(単純に考えると、人文系500人程度、自然科学系2,700人程度)
世の中の変化と学会
さいわい2015年度からの変遷も調べることができたので、個人会員数について2019年度との差を見てみました。会員数が1,000人以上の学会で、この5年間で会員数が1.5倍以上に増えたのは、「マーケティング」、「歯科技工」、「女性医学」、「地理情報」、「ペット栄養学」、「不整脈心電」、「認知症」、「人工知能」、「老年看護」など、17学会もありました。つまりこういうキーワードの研究が世の中で求められていて、研究者が増えている分野と言えます。
いろいろな事情
会員数が減っている学会も多くあります。学会を設立した当初の会員が引退して、若手研究者が入会しなければ会員数は減少していきます。さらに解散した学会も数十にのぼります。世代交代がうまくゆかなかった、あるいは社会的使命を終えたことが想像されます。特に人文系ではもともと規模の小さい学会が多いため、そのような傾向が強く現れています。

時代とともに変わる学会
しかし中には、近隣分野の学会同士が合併して再出発する事例、学会の名称を時代に合わせて新しくした事例も見かけます。
たとえば「日本真空学会」と「日本表面科学会」が合併して「日本表面真空学会」になり、今や半導体製造の最先端研究を担っています。
また「産業考古学会」は「産業遺産学会」へ、「日本産業カウンセリング学会」は「日本キャリア・カウンセリング学会」へと改称して、時代にマッチした看板に付け直しています。
学会とはいえ、個人研究者の集まりですから、時代の風を敏感に感じています。学会の動静を見ることによって、日本の研究力とその活性度を推し量ることができるのではないかと考えています。■

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