新しい時代の働き方

(2023.05.26)
5月25日に厚労省で第7回「新しい時代の働き方に関する研究会」が開催されました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33310.html

この研究会は、厚生労働省労働基準局長が主催して、働き方や職業キャリアに関するニーズ等を把握しつつ、新しい時代を見据えた労働基準関係法制度の課題を整理することを目的として、今年3月から連続的に開催されてきました。

この研究会のおおまかな議題は次の通りです。
① 働く方の働き方や職業キャリアに関するニーズの変容について
② 企業の意識、人材の管理・活用等の変容について
③ 働く方の健康確保と働きがいの促進について
④ デジタル技術を活用した働く方の保護について
⑤ ①から④までを踏まえた、法制度の基本的在り方について

第7回は中村天江氏(公益財団法人連合総合生活開発研究所)からの情報提供でした。
これからの働き方について、特に労使関係の面から考察しています。

●日本人の価値観
諸外国と比べて、日本は「不確実性の回避」「長期志向」「集団主義」「人生の楽しみ方が抑制的」の価値観が強いという調査結果が出ています。
そういう日本人が持っている価値観が働き方にも大きな影響を与えることを前提として、政策を考える必要があります。

●労使のコミュニケーション不足
労使関係についても国際比較すると、日本の特徴が明らかになってきます。すなわち、日本の労使関係は、組合組織率が低いだけでなく、それを補う社会制度や個人レベルの労使コミュニケーションも脆弱あること、また働き方や労働条件についての職場内コミュニケーションも減少しているとの結果です。

●必要な情報開示
わが国では人的資本の情報開示は急整備されたものの、労働政策の観点で精査がつくされていない状況があります。それについて、今後開示が必要な情報として次の4つを挙げています。
①心理的安全性を高める取組み
②「1on1ミーティング」の実施状況
③テレワーク利用率・利用日数
④雇用形態別の研修時間・研修費用

●労働基準監督も改善が必要
働き方が多様化し、地域差も生じている中で、労働基準監督業務の質の向上も求められています。しかし国際的にみて労働基準監督官の数が少ないことが指摘されます。民間の事業所は約640万ある中で、年間の監督数は約15万にすぎません。立入検査なしでも、企業が就業管理の質を高める仕組みが望ましいとされます。
「自主的な取組みをおこなっている企業は優遇」して検査数を抑えるとともに、デジタル化による効率化と精度向上を目指すという方策が考えられます。

●労働組合も改善が必要
組合組織率は減少が続き、2022年は16.5%と過去最低となりました(厚労省「令和4年労働組合基礎調査」)。
また組合役員にとって組合活動と仕事の両立の負担は重く、多くの労働組合が組合役員のなり手不足に直面しているという現実があります。さらに非正規化が進んだため、組合費が減少し、専従役員をおけない組合も増加しています。このように労働組合自体が機能不全になりかかっています。
これに対する解決策として、日本でも就業時間中の組合活動を認める(賃金が支払われる)変更や、従業員代表の取締役会レベルへの参加という案も考えられます。いずれも海外の事例があります。

●労働とは何か
このように労働者の位置付けや働き方を見直してみると、さまざまな論点が浮かび上がってきます。高度成長期には想像されなかった事態が、少子高齢化とともに新しい問題として浮かび上がってきます。
”雇用”とか”社員”という言葉の定義がだんだん曖昧になり、再定義が必要になってきていると思われます。■

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