地震、雷、火事、親父

(消防庁資料[3]より引用)

(2025.12.28)
世の中の怖いものを並べたこの言葉は、最近あまり聞かれなくなりました。親父だけは他の単語と並びがおかしいのですが、実は「台風(おおやまじ)」が変化したものとも言われます。
そうなると4つの単語とも自然による災害を指すことになります。
火事の原因は人災の面も多いですが、風にあおられて広範囲に被害が拡がるとなると自然災害と言ってもよいでしょう。地震も雷もある意味では火事の元になります。

特に冬の季節には火事が多い印象があります。
消防庁の発表[1][2]から下図のような月別の火災発生件数がわかります。やはり12月~3月の期間は他の季節よりも件数が高めになっています。石油コンロなど暖房器具の使用が増えるためと想像されます。

図1. 火災発生件数(月別)([1][2]より筆者作成)

いずれにせよ、これらの災害に運悪く遭遇してしまった被災者となると気の毒です。寒空の下ですべてを失った人に対して、どのような声をかけても無力な気がしてなりません。

◆大分市の大規模火災検討会
総務省は12月25日に「大分市大規模火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」第1回[3]を開催しました。
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/post-186.html

11月18日に大分市佐賀関地区田中で発生した大規模火災を教訓として、密集住宅市街地における大規模火災に対して、火災予防、消防活動、避難行動、装備・技術の充実強化のあり方を議論することを目的としています。
今年度中に報告書をまとめる予定となっています。
総務省消防庁と国土交通省住宅局が事務局を担当しています。

この検討会では今回の火災を多方面から調査・分析しています。
以下、この検討会の資料[3]に沿って眺めることにします。

◆火災の概況(資料1による)
まず火災の全体像を見てみます。

(火災の発生) 2025年11月18日17:43分頃("覚知”した時刻)
あくまでも消防局が火災を知った時刻です。本当の発生時刻は調査中とのことです。
(その後の経過)
11月20日14:00 半島部は鎮圧状態
11月28日13:30 半島部は鎮火、蔦島は鎮圧状態
12月4日14:00 全域鎮火
当面の火災は3日間で抑えましたが、周辺地域の鎮火には2週間以上を要しました。
(焼失面積) 約48,900m2(概数) この面積はほぼ東京ドーム1個分に相当します。
(人的被害) 死者1名(火元住人)、負傷者1名
(建物被害※)
・全焼164棟、半焼5棟、部分焼3棟、ぼや12棟
・火災エリアに存在した空家63件(うち全焼49件、半焼1件、部分焼2件、ぼや3件)
※国土地理院の地図情報に基づくデータ(大分市消防局の公表値と若干の差がある)
(出動)
大分市消防局21台(88名)、消防団28台(144名)、県内応援隊7台(31名)、航空部隊(大分県、熊本県、福岡市、自衛隊のヘリコプター)

図2. 佐賀関火災の延焼状況(資料1より引用)

◆当日の天候(資料2による)
天候については、過去30日間にまとまった雨がなく、降水量は平年の37%にすぎなかったとされています。
また当日、強い北西の風が吹いていて、強風注意報と乾燥注意報が出ていました。

◆建物の状況(資料3-1による)
大半が住宅用途で、2階建て以下の建物、かつ木造・土蔵造が多かったようです。
大半が昭和56年以前の旧耐震建築物であり、古い建物が多かった。
また幅員4m未満の道路が多く、消防車等が入れない状況でした。

◆街作りの状況(資料3-2による)
・2021年に大分市との合併に伴い、佐賀関都市計画区域が廃止され、被災地(田中地区)は準都市計画区域指定となりました。
・そのため用途地域の指定や、防火地域及び準防火地域の指定はありませんでした。
・さらに建築基準法に基づく22条区域(市街地の火災延焼を防ぐため、建築物の屋根や外壁に不燃化などの防火措置が義務)指定もありませんでした。
・大分市消防局は木造家屋が多く、強風が多いこの地域を延焼警戒区域に指定していました。

◆住民構成(資料3-2による)
田中地区の世帯数は2005年と比較して4割減少、人口は6割減少しています。
65歳以上の高齢化率7割以上(佐賀関地区全体や大分市よりも高い)。

◆消火活動の実際(資料4による)
傾斜地が多く、道も狭いため、消火活動上の負担が大きかったと報告されています。
また「飛び火」によって複数方向に延焼したことも、被害面積が増えた原因となりました。また飛び火によって山林や島に燃え移ったため、鎮火に時間がかかることになりました。

◆日本全国に共通した課題
海寄りの狭隘な住宅街で、古い木造家屋が多く、住民も高齢化して空き家率も高い、となると、全国いたるところが同じ条件に当てはまります。海寄りで風が強いというのも同じです。

過去10年間の住宅火災での死者数をまとめたものが下図です。全体としても死者数が増加していることと、65歳以上の高齢者の比率が75%にもなり、さらに増加している点も注目すべき点です。
すなわち単に住人が高齢化しているだけでなく、助けを求められない独居者が増えている可能性があります。
高齢化の進展によって、これからもこの傾向は続くのではないでしょうか。

図3. 過去10年間の住宅火災における死者(放火自殺者を除く。)数の推移([2]より引用)

◆根本的な課題は残ったまま
消防庁ではこれまでにも大規模火災が発生するたびに検討会を開催してきました。
・「大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」(2025年4月11日~8月22日)
・「輪島市大規模火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」(2024年3月18日~6月28日)
・「より効果的な林野火災の消火に関する検討会」(2021年5月27日~2022年2月22日)(足利林野火災の件)
・「糸魚川市大規模火災を踏まえた今後の消防のあり方に関する検討会」(2017年1月27日~3月24日)

以上の中で輪島市と糸魚川市の例は市街地での火災、大船渡市と足利市の例は山火事です。
いずれの検討会での結論も、消防活動の充実や避難行動の啓発などにとどまっているのが現実です。
それは住宅の難燃化、住宅区域の再整理など根本的な防火対策が打ちづらいためです。手入れが行き届かない山林の放置も課題のままです。

◆厳しい現実
人口減少と高齢化によって衰退している地域は、大規模な災害によって一気に消滅する危機に直面します。能登半島沖地震で被災した地域が2年たっても回復していないのを見ると、復興の厳しさがわかります。
残念ながら国も地方公共団体もそれらの地域を復活させる決め手を持ち合わせていません。その土地に生まれ育ち、そこに住み続けたいと望む住民にとっては辛い状況です。
これが縮み始めたわが国の現実の姿です。■

[1] 消防庁「令和5年(1~12月)における火災の状況(確定値)について」 https://www.fdma.go.jp/pressrelease/statistics/items/d0ce6161610fa99185c6f04a1ded7960c9399fb4.pdf
[2] 消防庁「令和6年(1~12月)における火災の状況(確定値)について」 https://www.fdma.go.jp/pressrelease/statistics/items/cfff9e3173795eb802e15902ab9b9a348f3259ad.pdf
[3] 「大分市大規模火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」第1回 資料1~資料5、参考資料1~参考資料4 https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/post-186.html

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