センシングのセンス
(2023.05.16)
5月11日に内閣府より「景気ウォッチャー調査(令和5年4月調査)」が公表されました。
(https://www5.cao.go.jp/keizai3/watcher_index.html)
この景気ウォッチャー調査はれっきとした統計法に基づく一般統計調査です。地域ごとの景気動向を的確かつ迅速に把握して、景気動向判断の基礎資料とすることを目的としています。
●景気ウォッチャー調査の特徴
特徴は、地域の景気に関連の深い動きを観察できる立場にある人々の協力を得て、実感を回答してもらうこと、毎月1回実施することによって、他の統計調査よりもはるかに調査頻度が高いという点にあります。
●調査協力者
家計動向、企業動向、雇用等、代表的な経済活動項目の動向を敏感に反映する現象を観察できる業種の適当な職種の中から選定した2,050人の協力によります。つまり2,050人による経済活動の定点観測といえます。
●調査対象地域
対象は日本全国ですが、北海道、東北、北関東、南関東、甲信越、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の12地域に分けて調査します。これにより、地域ごと、職種ごとの微妙な差異を知ることができます。
●調査時期
毎月の状況を尋ねます。調査期間は毎月25日から月末です。
●調査項目
次の5点を尋ねます。回答はオンラインシステムを用いて電話もしくはWebサイト、もしくは電子メールを利用します。
(1) 景気の現状に対する判断(方向性)
(2) (1)の理由
(3) (2)の追加説明及び具体的状況の説明
(4) 景気の先行きに対する判断(方向性)
(5) (4)の理由
●4月の状況
毎月、調査結果が公表されます。
4月の現状判断DI(季節調整値)は、前月差1.3ポイント上昇の54.6となりました。
(DIは「景気動向指数」とよばれるもので、景気の動向が上向きか下向きかを示すものです。目安として50%より上が景気がよい、下が景気が悪い、と判断します。)
また、家計動向関連DIは、小売関連等が上昇したことから上昇。企業動向関連DIは、非製造業が上昇したことから上昇。雇用関連DIについてはも上昇。
総合して、今回の調査結果から「景気は、持ち直している。先行きについては、価格上昇の影響等を懸念しつつも、持ち直しが続くとみている。」との見方を示しています。
●地域、時期、業種の差異は興味深い
業種(建設業)を固定して、地域の差(北海道、沖縄)と時期の差(2022年11月、2023年4月)を比較した表は下です。
地域 | 時期 | 判断 | 回答者 | 判断の理由 |
北海道 | 2022年11月 | 変わらず | 建設業(役員) | <受注量や販売量の動き>道内各地で平年よりも初雪が遅いこともあって、今のところ、各建設工事現場では降雪の影響もみられず、順調に工事追い込み期を迎えている。完工高、利益共に、受注済みの手持ち工事で年度計画達成が確実となった。 |
北海道 | 2023年4月 | やや良 | 建設業(役員) | <受注量や販売量の動き>前年度からの繰越し工事と4月着工の新規工事の受注で新年度前半の工事量を確保できている。技術職員の現場配置がフル稼働の状態で新年度がスタートしている。 |
沖縄 | 2022年11月 | 変わらず | 建設業(経営者) | <受注量や販売量の動き>新規の契約がない。 |
沖縄 | 2023年4月 | やや良 | 建設業(経営者) | <受注量や販売量の動き>高額リフォームの相談、契約が増えてきている。 |
これらの2地域のそれぞれの建設業経営者(同一人物かは不明)はこの半年間で少し景気上向きの感触を持っているようです。
このように地域、時期、業種の差異をかなり細かいレベルまで1ヶ月単位で見ることができるので、地域ごとの温度差や傾向の違いを知ることができます。DIのような経済指標を求めるために、これらの調査結果を平均化しますが、一人一人の回答を見るとマーケティングの目的にも利用できそうな気がします。
●きっかけは堺屋太一氏
この景気ウォッチャー調査の始まりは当時の経済企画庁長官だった堺屋太一氏の指示だったそうです(※1)。庶民感覚で、かつ先見の明を持った人だったといえます。今どきならば、さしづめビッグデータを用いた政策企画という言葉になるでしょうか。■
※1 堺屋太一氏と「景気ウォッチャー調査」誕生秘話 https://www5.cao.go.jp/keizai3/watcher/watcher_sakaiya.html