デジタル通貨

(2023.05.29)
5月24日に財務省で、第2回「CBDC(中央銀行デジタル通貨)に関する有識者会議」が開催されました。
(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_cbdc/2cbdchaihu.html)

この有識者会議は4月に第1回が開催された後、月1回程度の頻度で討議される見込みです。

CBDC(Central Bank Digital Currency)とは、国の中央銀行が発行する電子貨幣です。日本銀行はCBDCの定義として、次の3点を満たすこととしています。
・デジタル化されていること
・中央銀行の負債として発行され、決済手段として機能するもの
・法定通貨建てで発行され、価値尺度として機能するもの

CBDCは現金に比べると、まず紙幣や硬貨を製造する必要がなく、発行、移動、保管のコストもなくなります。(ただし記録データを保存するシステムは必要。)
日本において、家計部門の通貨流通高が104兆円と一貫して増加傾向にあることから、CBDCの議論もまさしくこのような現金ならではのコスト問題が背景にあります。

CBDCには、当座預金用の「ホールセール型」と、銀行券の役割を持つ「一般利用型(リテール型)」があります。
ホールセール型の対象である中央銀行当座預金はすでに電子化されているので、CBDC化は技術的には容易です。
一方、リテール型は実際の使われ方がまだ十分議論されておらず、課題の洗い出しが必要となっています。

以下、第1回有識者会議(2023年4月21日)からの引用です(※1)。
●海外の動向

  • 米国でリテール型の研究がおこなわれているが、検討段階にとどまっている模様。「最終的にCBDCを進めていくには、政府と議会の両方からの承認が必要であり、これには少なくとも数年はかかる見込み」(パウエル議長、2022年9月27日)。
  • ユーロ圏では、全体的な制度設計などについて積極的な情報発信がおこなわれています。欧州委員会は2023年2Qにデジタルユーロ導入に向けた規則案を提案する方針。
  • 中国は早くからパイロット実験を実施しており、今後、法制度の整備も視野に入れている模様。「管理された匿名性(managed anonymity)」というコンセプトのもと、少額取引は匿名の扱いとするが、高額取引は追跡可能とすると言われています。

以下は第2回有識者会議資料より。
●金融庁の取組み
資金決済制度を中心に検討しています。
2010年から「前払式支払手段」と「資金移動業」を制度化。これにより、電子マネー発行や少額の為替取引が民間業者でおこなえるようになりました。
電子決済手段等(ステーブルコイン)に関する制度整備も準備中です。この中でやっかいなのは暗号資産型のものです。MT GOX社の破産(2014年)を契機に国際的な議論がおこなわれ、暗号資産の交換業者に登録制を導入しました(2017年)。その後も暗号資産の流出問題が発生して、利用者保護の確保やルールの明確化のための制度整備がおこなわれました(2020年)。
その後、前払式支払手段発行者、資金移動業者も増加して、国民生活のインフラになりつつあります。

●日銀の取組み
日銀ではCBDCについて、2021年から実証実験を進めています。2021年度に基本機能(台帳)の概念実証をおこない、2022年度に周辺機能(セーフガード、決済の利便性、外部との連携)の概念実証、2023年度から具体的なパイロット実験をおこなう計画です。パイロット実験では「CBDCフォーラム」を設置し、リテール決済に関わる民間事業者に参加してもらう予定です。

●CBDCの海外事例(明治大・小早川氏)
Sand Dollar(バハマ)、JAM-DEX(ジャマイカ)、デジタル人民元(中国)、e-Naira(ナイジェリア)の事例紹介。
全体の傾向として、既存の法定通貨を補完、民間マネーとの共存を指向、仲介機関を介した間接型のCBDC、などが挙げられています。だいたい一定の方向に議論が収れんしつつあるようです。
またインターネットが不通になった際に一次的なオフライン利用も考慮する必要があります。これは過疎地で、機器操作ができない人も想定しなければならないためです。

●日本人にとってCBDCとは
日本では現金主義がまだ優勢ですが、キャッシュレスは浸透しつつあります(4/10のブログ参照)。世代交代とともに、CBDCを受け入れる素地は整っていくでしょう。
高齢化が進行した時点で問題になるのは、膨大なタンス預金、あるいは所有者不明の銀行預金だろうと考えます。CBDC云々の以前に、お金の所有者とその家族がやるべきことはたくさんあります。■

※1 第1回有識者会議 https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_cbdc/cbdchaihu.html

Follow me!