クレジットカードの怖い話

(2024.11.09)
少し前の情報ですが、10月9日に国民生活センターから「国民生活センターADRの実施状況と結果概要について(令和6年度第2回)」が公表されました。
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20241009_1.pdf

●ADRとは
ADRとは「裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution)」を意味し、各地の消費生活センター等や国民生活センターへ寄せられた相談のうち、解決が見込めなかった案件について、国民生活センター紛争解決委員会へ和解の仲介や仲裁を申請することができます。
紛争解決委員会は、独立してその職権を行い、15人以内の委員から組織されます。委員は、法律や商品、役務の取引について、専門的な知識・経験を有する者のうちから選ばれ、内閣総理大臣の認可を受けて、国民生活センター理事長が任命します。

●ADRの実施状況
ADRは2009年4月から実施されていますので、すでに15年の歴史があります。令和に入ってから6年間で計807件(和解508件、和解不成立239件、取下げ等60件)が処理されました。
そこでは、生活におけるさまざまな案件が持ち込まれています。

クレジットカードの不正利用に関する紛争
美容整形手術の解約料に関する紛争
出張配管洗浄サービスの料金に関する紛争
ペットの販売契約に関する紛争
等々

●気になるクレジットカードの不正利用
これらの事例の中で、クレジットカードの不正利用に関するものが気になりました。
最近はオンライン取引等によってクレジットカードを使う機会も増えてきました。またセキュリティ技術も発達して、かなり安全に使用することができるようになりました。
しかし次に挙げるのは、安全なはずのクレジットカードが不正利用されてしまい、持ち主がその被害補償を受けられなかったという不穏な事例です。

●ケース1 紛失カードによる不正利用
電車の中で寝込んでしまった間に、クレジットカードが入っていた財布とスマートフォンが盗まれた。数時間後に目が覚め、帰宅後にカード会社へ連絡して利用を停止してもらった。
しかしそれより前にコンビニAの店舗で暗証番号が変更され、他のコンビニBの店舗を含めて約30万円の物品購入に使用された。
状況からみて他者による不正利用の可能性があるが、「暗証番号取引」であるため、補償はできない。

(コメント) 疑問は他人がどうやって暗証番号を知り得たか。持ち主は容易に推測できる番号ではないと言っている。暗証番号取引である以上、仮に他人が購入したと判明しても、持ち主から暗証番号を教えてもらった人と解釈されてしまうのが恐い。

●ケース2 海外でのカード不正利用
当人(A氏)と知人(B氏)が海外旅行中に同じホテルの別々の部屋に宿泊した。ホテルにはA氏のカード情報が部屋付け(宿泊費やホテル内利用費をまとめて決済する)として登録されていた。
B氏はA氏より先にホテルをチェックアウトした。B氏がホテルをチェックアウトした後の日に、ホテル内店舗で、A氏のカードにより約685万円の利用がおこなわれた。利用者はB氏の名前であった。
A氏はB氏にカードを貸与したことはなく、カード利用日にすでにB氏はチェックアウトしていたので、B氏が利用することはあり得ない。
カード会社側の主張として、カード利用者がB氏以外の第三者であったことを示す証拠がないこと、また届出日が利用日より100日後であり、補償期間である60日を越えていることから、補償には応じられない。

(コメント) 疑わしいのはホテルに登録したカード情報が盗まれて不正利用された可能性です。しかし、店舗での部屋付け利用にあたっては、身分証明書の提示と宿泊者名簿の照合によっておこなっているので、対面の確認をおこなっているはずです。現実には、海外での利用であるため、第三者が使用したことを立証することはきわめて難しいと予想されます。この例では数百万円もの被害は補償されていません。

●ケース3 覚えのないカード利用
カードによる物品購入(20万円)がマレーシアにておこなわれた。持ち主や家族はマレーシアに渡航したことはなく、カード自体も日常的には使わず、自宅内にしまっていた。物品購入された当日も在宅していた。
カード会社の調査では、対面利用であるが、非暗証番号による取引であることが確認された。

(コメント) 非暗証番号による取引であることから、ICチップのセキュリティは使われていません。おそらくカード番号と磁気ストライプ情報から不正利用された可能性があります。しかしそのカード情報がいつ盗用されたかがわかりません。

●教訓
残念ながら、上の3ケースのいずれも、当事者同士の事実認識に隔たりがあり、和解には至りませんでした。
特にケース3のような場合は、日本国内でごく控えめにカードを利用するだけだった人が、不正利用に巻き込まれて、しかも被害は補償されていません。
3件の事例の概要文からは、実際にどのようにカード情報が盗用されたかは推定できませんでした。まるで推理小説のトリックを考察するようなものです。

(教訓)
1. カードの暗証番号は類推しにくいものとし、絶対に他人には漏らさない
2. カードの対面利用の際にはカードを手離さない
3. カードの利用明細はこまめに確認し、見覚えのない利用履歴があれば早急にカード会社へ連絡すること

平凡でも、このような対策で自衛するしかありません。■

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