Cool ?
(2023.04.22)
3月27日に知的財産戦略本部の「Create Japan ワーキンググループ」第1回が開催されました。
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kousou/create_japan_wg2023/dai1/gijisidai.html)
知的財産戦略本部(以下、知財本と略します)では、知的財産推進計画を毎年度策定することが「知的財産基本法」第23条に定められています。それにしたがって、今年度の「知的財産推進計画2023」を立案するにあたり、計画の柱となるテーマとして、デジタル時代のコンテンツ戦略と、日本の魅力を発信するクールジャパン戦略の二つを取り上げ、それぞれのワーキンググループに分かれて、議論をおこなうことになりました。
●バズワード化した Cool Japan
こちらのCreate Japan ワーキンググループ(CJWGと略します)の趣旨説明書では、クールジャパンの推進のために、”世界の視線を起点としつつ、日本人及び外国人の協働の下で日本の魅力を発掘し、発信するなどにより世界からの共感を得るための方策について、必要な議論を行う”ことを目的としています。外国人5名を含めた14名の委員から構成されています。
クールジャパンという言葉はすでに2000年初頭に出回り始めて、経産省が「クールジャパン機構」を強く推進するなどしたため、バズワード化(※)してしまった気がします。そういう雰囲気もあって、ここでは"Create Japan"という新造語を用いたのではないかと推測します。
●日本の魅力とは
4月19日に公表された当日のCJWG議事録を読むと、出席した各委員の意見は必ずしも楽観的な見方だけではありませんでした。
以下、議事録の中から、興味深いものをおおまかに拾って、原田が集約したポイントを並べてみます。それぞれの発言を尊重しつつ、たぶんこういう意味ではないかと書き直しています。
発見する外部の人 | ・若い世代、そしてリピーターだけでなく、初来日の人の視点も大切、むしろそういう人たちの感想こそ、日本人が知らない日本の魅力をとらえている ・日本の魅力は「よそ者」が見つけることが多く、日本人の方がその良さを分からない状態になっている |
魅力の発見方法 | ・埋もれた日本の発掘は重要であるだが、見つけ方のノウハウや視点を体系化するとさらに魅力を見つけやすく、広がりやすくなる ・日本に居続ける理由はいつも何か新しいものを発掘できるからであり、また、一回理解したものであっても、その奥深さがあるのは好奇心が刺激される。大事な資源であり、活かした方がよい ・魅力の発掘の仕方もコミュニティの作り方もトップダウンとボトムアップの両方でできればよい |
人材発掘 | ・地方の ALT(外国語指導助手)、留学生、外国人を巻き込んで良さを伝えるアイデアはよい。若さがあると新鮮な視点が得られるが、メディアのプロではないので、上手にプロデュースしないと効果が期待できない |
地方振興の問題点 | ・地方振興の事例はよいが、それが際立ちすぎると日本の魅力発信としてはバランスが悪い ・地方の盛り上げの部分が浮いている感じがする。国内を旅行すると地方差が大きく、通りを走るだけでも見える光景が全然違う。街並みが整っている地方もあれば、国道沿いに全国チェーンの店が並ぶ地方もある。地方自治体がどのように何を考えて振興すべきか打ち出すべきである。景観規制も含めて、自治体が一生懸命にならないと改善しない |
地方連携の重要性 | ・まずはネットワーク、地域の交流が重要。一つの自治体の中で取り組もうとすると難しい。ネットワークはなるべくリアルで広域に作り、ワンパターンにならないようにする必要がある。自治体の連携は欠かせない ・各地で売りの点をシェアし、エリアでシナリオを作って打ち出すという意味で自治体の連携は大事である。例えば、四国のお遍路は88カ所全すべてが素晴らしい観光地というわけではないが、集まるとキャラの立った観光地ができる |
視点の変更 | ・SDGSがIDGS(Inner Development Goals)に代わってきている。経済的指標よりも自分たちがどう思うかが大切になってきている。クールジャパンにどのようなインナーバリューが求められるか考える必要がある |
●数少ない日本の競争力源
日本の文化遺産や観光資源は、わが国にとって残り少ない、競争力のある資産といえます。これをいたずらに消耗させずに、末永く引き継いでいくことが重要なことになります。
CJWGでは、まだまだいろいろな意見が出そうですが、知財計画としてどの水準でまとめるかは、事務局の力量しだいとなりそうです。
この手のテーマを扱うにあたっては、次はCreate Japanの議論の要素を分解し、ある視座(あるいは座標軸)に沿って再構成してみる必要がありそうです。特にCJWGの役割としては今後の知財本の計画について議論すべきでしょうから、まず”こうありたい”というビジョンを語らないと始まらないと思います。観光、地域振興、文化など、多様な見方とステークホルダーが存在しますので、ビジョンも総花的なものに終わってしまわないように祈ります。
5月中には知財計画の骨子案を作るスケジュールなので、時間が足りるかどうか。こういう文化的な、柔らかい議論は、政策の場ではなかなか遭遇しないので、本当はもっと多くの検討時間がほしいところです。■
※ Buzzword:もっともらしいが実際には意味があいまいな用語のこと。(Wikipediaより)