YOUのクレームは何?

(2024.08.17)
8月7日に、国民生活センターから「2023年度 訪日観光客消費者相談の状況」という発表がありました(※1)。
国民生活センターは、日本を訪れた外国人観光客が、日本滞在中に消費者トラブルにあった場合に相談できる電話相談窓口として「訪日観光客消費者ホットライン(Consumer Hotline for Tourists)」を2018年12月に開設しました。
この窓口では、電話による三者間通訳サービスを利用して、英語、中国語、韓国語、タイ語、ベトナム語、フランス語の6か国語対応をしています。
実際の相談件数や主な相談内容の状況が毎年度公表されています。

●「中国語」が最多
2020年度~2022年度の3年間はCOVID-19の流行による観光客減少が続きましたが、2023年度は一気に回復しています(図1)。
相談件数全体は305件でしたが、そのうち訪日観光客からは227件、在日の外国人から56件、在外の人やその他の人が22件という内訳です。相談を受けた言語は中国語が半分近く、ついで英語、日本語、韓国語の順でした(図2)。このうち日本語には相談者の知り合いが本人に代わって日本語を使ったという場合も含まれます。

図1. 相談件数の推移
図2. 相談の対応言語割合

●「宿泊施設」の相談が最多
相談内容別では、「宿泊施設」56 件、「外食」21 件、「商品一般」13 件が上位です。
「宿泊施設」については、次のように相談内容を分類しています。
(サービス品質について)
 “宿泊予約サイトの掲載内容に比べて実際の宿泊施設の質が低い(部屋が狭いなど)”
 “十分な清掃がされていない”等
(接客対応について)
 “荷物預かりを拒否された”
 “スタッフが不在で手続や入室ができない”等
(価格や料金について)
 “予約と事前決済が完了したはずなのに現地で予約がないと言われて二重払いになった”
 “利用人数変更や子供料金について追加請求をされた”
 “キャンセルしたが返金不可だった”等
等、価格・料金に関する相談がみられました。

●クレームの分類
サービス品質や接客対応については、いずこの国の観光地でもクレームが出やすい項目ですし、主観や習慣の差も大きく現れるものです。言い方を変えれば、どのように改善しても常に文句が出る事柄かもしれません。
しかし、価格や料金については金銭の損害が生じかねないため、きちんとした対応が必要です。国民生活センターは、”事業者の説明不足がうかがえるもの”や、”宿泊約款の取消し規定(キャンセルポリシー)や返金不可プランへの相談者の認識不足がうかがえるもの”もあったと述べています。これらに対しては、ホームページやパンフレットへ説明をしっかり記載することや、オンライン予約の際に何度も確認をうながすこと等を、丁寧に継続することが一番でしょう。

●文化の違いがクレームを生む
他にも、「外食」(飲食店)に関する相談で、“説明なく席料(お通し代)を請求された”、“日本語メニューと外国語メニューで料金が異なる”、“メニューや案内が分かりにくく請求に納得できない”などの相談がみられるそうです。
「お通し」については、日本人ですら疑義を抱く人もいるくらいなので、昔の狭い範囲の社会でのみ通用する習慣と言えます。それ自体は一つの文化かもしれませんが、それならばしっかりと掲示しておくべきことでしょう。日本人向け、外国人向けの「二重価格」の問題も同様です。それを運用することが店のポリシーならば、はっきりと文章にして明確化すれば、行き違いを少なくできると思われます。

●クレームは宝物?
顧客の不満に対処することで、売り上げに変えることができるという「グッドマンの法則」があります(※2)。サービス提供者にとって、クレームは宝物と言われる由縁です。
日本の商習慣の中に根付いている暗黙のルールが、外国人からのクレームによって明らかにされます。つまり従来ならば、たとえ不合理であっても日本人同士の中で納得していた習慣が、外国人にはうまく理解されないという事態になっています。
この解決策は二つしかないと思われます。第一はその日本特有の習慣をきちんと外国人に説明することです。郷に入れば郷に従うことを勧めるのです。
第ニはそもそも不合理な習慣自体を止めてしまうことです。「お通し」だけでなく、賃貸住宅の「礼金」等、昔の習慣がそのまま継続しているものは多いでしょう。存在意義がなくなったものを捨てることも選択肢に入ります。
そういう意味で、外国人からのクレームは日本に根付いている文化(または不合理な習慣)に気づくよい機会になります。そしてわれわれ自身が、それを保つのか捨てるのか判断しなければなりません。
YOUはどんなクレームを付けてくれますか?■

※1 2023年度訪日観光客消費者相談の状況-訪日観光客消費者ホットラインより- https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20240807_5.html
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20240807_5.pdf
※2 「グッドマンの法則とは?クレームを売り上げに変える事例を紹介」 https://emotion-tech.co.jp/column/2018/what_is_theory_of_goodman/

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