消費者団体・・・とは

(2023.04.23)
4月21日に消費者庁から消費者委員会本会議(第399回)の資料が公表されました。
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2023/399/shiryou/index.html

消費者委員会は、独立した第三者機関として、さまざまな消費者問題について、調査・審議を行い、消費者庁を含む関係省庁の消費者行政全般に対して意見を述べる組織です。10人の委員から構成されます。
一口に消費者問題といっても、食品はじめ公共料金やデジタル技術に至る幅広い分野を対象とするため、いくつかの専門の調査部会を作って議論をしています。4/7に話題として挙げた「デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ」はこの消費者委員会の作業グループの一つです。

今回の議題は「消費者団体」についてです。

●意外と知らない消費者団体
事典の記述を引用します。
”消費行動を通じて侵害される権利を回復し,またその利益を守るために,消費者によって自主的に組織された団体。1950年代後半,大衆消費時代のなかで高まった消費者の生活防衛意識を背景に,便乗値上げや誇大広告の問題に対処するためにいくつかの団体が結成された。近年取り上げる主題も環境問題や地域社会の問題など多様化し,特に 1994年6月の製造物責任法 (PL法) 制定には 350万人以上の署名を集める大きな原動力となった。”(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より)

消費者団体として代表的なものは:
 主婦連合会(主婦連) 会員約27,000人
 全国地域婦人団体連絡協議会(全地婦連) 会員約500万人
 日本消費者連盟 会員約1,500人
 日本生活協同組合連合会(日生協) 会員約3,000万人
 全国消費者団体連絡会に登録している団体の一覧表があります(※1)

この他、独立行政法人国民生活センターが設置されています(1970年)。

●消費者団体も老いる
新川達郎氏(同志社大学)はこれまでの消費者委員会の委員も歴任されている専門家で、現在の消費者団体の状況を俯瞰して報告されています。
問題点として挙がったのは次のような項目です。

  • 組織の担い手不足資金不足の問題
  • そもそも消費者の意見を代表しているか、利益団体・圧力団体か
  • 政策提言機能(Advocacy活動)はあるか、多様化している意見を的確に反映させることができるか
  • 国民一人一人は社会問題への関心はあるが、組織(拘束)への忌避感も持つ
  • 新たに参加してもらうために必要なことは何かを議論する必要がある
  • 消費者保護を事業(お金)にする、ソーシャル・エンタープライズ(社会的起業)などもあり得る
  • 専門家や学識者が参加、協力、連携できる団体になるべき

また丸山千賀子氏(金城学院大学)は、日本では消費者向け施策は行政がすべて担当しているのに比べて、諸外国では消費者団体に政策提言をかなり任せている、との報告をしています。
日本では、消費者が能動的に政策提言をすることはほとんど見られません。せいぜい、個人のレベルで国民生活センターに苦情を伝えるくらいでしょうか。

最初に掲げた消費者団体の例では、会員数もバラついていますし、活動内容も異なります。歴史の長い団体も多いせいでしょうが、さすがに「主婦」という言葉は時代遅れと感じます。また、会員数が多いと見られる消費生活共同組合(生協)も、消費者団体として意識されることは少ないのではないかと思います。

●公式の消費者団体
”消費者団体の意見によると~~”などの文章表現を見ても、その団体の姿がなかなかイメージできないのですが、最初に挙げた消費者団体の例の他に、法律で定義された消費者団体というものは存在します。

適格消費者団体」:
消費者団体訴訟制度」があり、内閣総理大臣が認定した消費者団体が、消費者に代わって事業者に対して差し止め請求などの訴訟をすることができるものです。この内閣総理大臣の認定を受けた法人を「適格消費者団体」といいます。全国に23団体あります。
特定適格消費者団体」:
さらに適格消費者団体のうちから、集団的消費者被害回復の訴訟をすることができる団体として内閣総理大臣の認定を受けた法人を「特定適格消費者団体」といいます。全国に4団体あります。

いずれも「消費者契約法」「消費者契約法施行規則」「適格消費者団体の認定、監督等に関するガイドライン」に沿って、団体を運営していることが必要条件となります。また消費者団体として活動実績が必要です。

●国民意識の違い
日本の社会では、自らが個人として能動的に動いて、社会に影響を与えようとする意識が低い傾向があります(※2)。消費者活動のように、自分の問題意識からボランティアでおこなう活動が低調なのも説明がつきます。町内会、PTA活動などの組織維持が難しくなっているのも同じ線上にある話でしょう。
日本人一人一人は多くの問題意識を持ちながらも、結局は誰かがやってくれるだろうと期待だけする、他力本願になってしまっているのかもしれません。

第二次世界大戦後に、外から与えられた”民主主義”の賞味期限はとっくに切れてしまっているということでしょうか。
私はそうではないと思いたい。中高年の世代よりも、もっと若い(高校生から20歳台)世代の新鮮な考え方や行動力に、おおいに期待を持っています。■

※1 全国消費者団体連絡会 団体一覧表 http://www.shodanren.gr.jp/about/member.php
※2 「令和元年版 子供・若者白書」特集1 日本の若者意識の現状~国際比較からみえてくるもの~ https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r01honpen/pdf_index.html

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