人口と地域(3)~聖職者メンタリティー
(2023.05.09)
4月28日の財政制度分科会の話題の続き(その3)です。
(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20230428zaiseia.html)
●主な議題
この分科会では、次の3つのサブテーマが討議されました。
- 少子化総論
- 東京一極集中・税源偏在と地方財政に関する課題
- 少子化が進展する中での教育の質の向上
今回の記事では「3. 少子化が進展する中での教育の質の向上」の内容に絞って書くことにします。
●財務省の問題意識
- これまで、児童生徒数の減少ほど教職員定数は減少しておらず、教員の「量」的充実度は既に先進国の中でも高い水準
- 一方、採用倍率は大幅に低下しており、教員の「質」の確保が課題
- 教員環境において、教員の仕事時間はOECD比較で日本は最も長く、また授業以外の業務に多くの時間が費やされている
- 「特別非常勤講師」や「特別免許状」の制度ができたが、採用は低調。免許制度や採用制度も再考すべき。「教員免許の有無による教員の質の差はかなり小さい」という研究結果もある
- 離職者や休職者の状況は公務員全般と差はない。教員補充にあたり、免許制度が障壁になっているのであれば、再考が必要ではないか
- 教員の付加価値向上をめざした研修制度はあるが、その効果測定はおこなわれていない
と、まあ指摘事項、満載です。
●「聖職」と呼ばれた頃も
教育社会学者の内田良氏(名古屋大学)は、いまだに「聖職者メンタリティー」が教員の負担軽減を阻んでいると指摘しています(※1)。
外の世界の者が見ると、教員の聖職者イメージなぞは完全に失せていますが、学校内部にいる人、特に年季の入った人たちの気分は依然、聖職者の気持ちのままなのかもしれません。
教職については、”ブラック職場”とか”やりがい搾取”とか、まあいろいろな、しかしぴったりな悪口が次々に出てきます。国家公務員も同様ですが、実態以上にこういう悪いイメージが一人歩きして、忌避されつつあるのは問題です。ちまたでは人手不足倒産という話を聞きますが、このままでは教師の数が急減して、学校自体が成り立たなくなるのは早いかもしれません。
文科省肝入りの「#教師のバトン」プロジェクト(※2)の効果は如何に。■
※1 「教員の負担軽減阻む『聖職者メンタリティー』の罠」、東洋経済ONLINE(2022年1月11日) https://toyokeizai.net/articles/-/476982
※2 文科省「#教師のバトン」プロジェクトについて https://www.mext.go.jp/mext_01301.html