チャイルドシート
(2024.09.18)
9月6日に、警察庁は「チャイルドシートの使用状況等について」という報道発表をおこないました。
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/img/childseat/2024CRS.pdf
道路交通法では6歳未満の幼児を自動車に乗せる場合にはチャイルドシート(法律では幼児用補助装置)を用いることを義務化しています。
チャイルドシートの正しい使用の徹底を図るため、警察庁及び一般社団法人日本自動車連盟(JAF)が、本年5月11日~5月26日に全国でチャイルドシート使用状況を調べた結果です。
●2割はチャイルドシートを使っていないという現状
全国99箇所・6歳未満の乳幼児13,035人を対象として、使用率78.2%という結果でした。これは前回比で+2.2%とか。
下図を見れば、たしかに年々、使用率が上がっていることが確認できます。地道な啓発活動のおかげでしょう。
また取付け・着座状況を調べたところ、下の表のようになっています(※2)。
区分 | 適切な取付け | 適切な着座 |
乳児用 | 77.6% | 53.3% |
幼児用 | 62.2% | 46.8% |
学童用 | - | 67.5% |
合計 | 69.8% | 55.7% |
「適切な取付け」ではない例として、チャイルドシートを座席に置いただけ、といった状況もあったようです。「適切な着座」ではない例としては、やはりハーネスの締め付け不適正が多いようです。
●幼児の問題
この調査で目立つのは、乳児より大きく、学童より小さい「幼児」の区分で、1/3が取り付けられていないという点です。
今年8月18日に、福岡市内で軽自動車と路線バスが正面衝突して、軽自動車の後部座席に坐っていた女児2名が亡くなったという事故がありました。女児は7歳と5歳で、学童と幼児ということになります。いずれもシートベルトだけを装着していたそうですが、ベルトが腹部を圧迫したのが亡くなった原因ではないかとされています。大人の身長を基準にしているシートベルトを、子供が装着すると、首や腹部に負担がかかってたいへん危険なことになります。
●子育ての現実
幼児を二人以上抱えている家庭で、車に人数分のチャイルドシートを装備することは相応の経済的負担になります。
さらに幼児を順番にシートに着座させることがいかにたいへんな作業であるか。子供はけっしてじっとしていません。
天候が悪いとき、あるいは子供を急いで病院へ連れていきたいとき、ワンオペの母親がイライラしながら子供たちを座らせることになります。つい、安易なやり方で車に乗せてしまいがちになるのもわかります。
●常に最悪を予想する
しかし、やはり車を運転する以上は最悪状態を予想しておくのが、保護者の心構えとして必要だと思います。
9月13日に大阪で発生した交通事故では、後部座席のチャイルドシートに乗っていた(とされる)乳児が亡くなっています(前部座席の大人は命に別状なし)。チャイルドシートがあっても、けっして安心できるわけではなく、ましてそれすらなければどうなるか。
●幼児を車に乗せることは必要か
車に子供を乗せることはよくあることです。
一方、交通事故自体は減少しつつあります(事故に遭う危険性は低くなった)が、いったん事故が起きると、一家全滅といった不幸にもつながりかねません。
ここで、乳幼児を本当に車に乗せる必要があるかどうか、他の手段はないか、立ち止まって考えてもよいのではないかと思います。
チャイルドシートがどのような状況で利用されるのかを想像することによって、現在の日本の家族の姿が浮き上がってくる気がします。■
※1 道路交通法第七十一条の三の3。ただし疾病等による例外は認める。
※2 8都道府県・計16箇所で調査。