研究力
(2023.05.15)
5月10日に科学技術・学術審議会の「大学研究力強化委員会」(第11回)が開催されました。
(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu32/siryo/000017833_00011.html)
この委員会は2021年10月に設置され、主として「大学ファンド」と「地域の中核となる大学の機能強化に向けたパッケージ」に関わる議論を進める役割を持っています。どちらも文科省ならびに総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が肝入りで企画推進しているテーマですので、今最も期待と責任が重い委員会といえます。
2022年8月までに「国際卓越研究大学法に基づく基本方針(素案)」をまとめた後、パブリックコメントを募集しました。
「国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律」(2022年5月成立、11月施行)もでき、3月には具体的な国際卓越研究大学の募集が始まり、計10件の応募がありました。これから審査やヒアリングをおこない、年度内に決定する予定です。
●委員会の議事内容
次の2つのテーマが議論されました。
- 多様な研究大学群の形成に向けて
- 大学の研究力強化に向けた取組について
1は「国際卓越研究大学」を含む研究大学の全体像の説明、
2は「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」を中心とした説明です。
ともかく「国際卓越研究大学」によって国際的に競争力(人材、資金の獲得力)を持った一握りのトップ大学を作ること、地域の特色ある研究大学の特長を強化すること、の2軸で大学の研究力を向上させることを狙っています。
●さまざまな意見
当然、これだけ規模の大きな構想について、大筋はともかく、実行段階になってから、いろいろな課題が浮かび上がってくるのは当然です。
一つは前々から言われていたように、国際卓越研究大学とそれ以外の大学との格差拡大の懸念です。
もともと、国際卓越研究大学に応募できるのはそれなりの規模を持った大学となりますから、それ以外の大学は規模や総合性ではなく、独自性を打ち出すようにしなければなりません。経営基盤が脆弱な地方大学が自らの特徴を出すためには、かなりの工夫と努力が必要となります。
総合振興パッケージでは、各大学の立ち位置を、「多様性と卓越性」、「社会実装イノベーション」、「地域貢献」、「研究環境」、「マネジメント力」の5つの軸で振り返り、自らのミッションに応じたポートフォリオを組むことを提案しています。これらの指標を参考として、各大学は知恵を絞ることになります。
●ビジョン?
以前の記事で書いたように、研究力とか人材育成などのテーマはすぐ成果が出るわけでなく、また数値として測ることも難しいものです。
大学の研究力を議論する際に、”どのような大学が望ましいのか”という根本的な問いが必要と思います。教育の質が良い大学、優秀な研究者がたくさんいる大学、個性的な大学、・・・等々。
同様に研究者のイメージも、基礎研究に地道に取り組んでいる人、応用に長けて企業の新製品に貢献している人、国際標準化をリードしている人、・・・等々。これらのタイプの異なる大学や研究者が、どのくらいの比率であればよいのか、どのくらいの予算を投入するべきか、についても、現在の審議会では議論されていません。
本来ならば、”日本をどう変えてゆきたいのか”を審議会だけでなく、政府、そして国民が議論すべきだろうと考えます。■