分類は世につれ、世は分類につれ

(2023.05.13)
5月10日に総務省の第17回統計基準部会が開催されました。(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/toukei/kijun/kaigi/02shingi05_02000633.html)

そもそも3月に総務大臣から「日本標準産業分類」の変更を諮問されたのを契機に、さまざまな分類の改定を議論することになりました。このような改定は、社会情勢の変化をふまえて、日本の経済活動の実態をより的確に把握するためです。
次の改定は「第14回改定」とよばれます。現在の分類は2013年10月に改定(2014年4月施行)されたものですので、かれこれ10年の間隔が開いています。

●産業分類の役割
「日本標準産業分類」は、行政機関等が作成する公的統計の相互比較と利用の向上を可能とするため、財又はサービスの生産と供給において類似した経済活動を産業別に分類したものです。
「産業」と「事業所」をきちんと定義しています。これがないと、いろいろな統計分析における分類が混乱してしまうことになります。この産業分類は、たとえば国勢調査などにも使用されます。

以下、第16回部会(4月6日)の資料(※1)から引用します。今回の第17回部会(5月10日)では前回の議論の整理と結論をまとめています。

●産業分類の構造
産業分類は、大・中・小・細の4段階で構成されています。
産業分類の構成は現行で大分類(20)、中分類(99)、小分類(530)、細分類(1,460)の4段階。
今回、小分類7項目、細分類19項目を改定することになりました。

●改定に向けた議論
たとえば、今まで「調剤薬局」という分類が使われていました。しかし、この言葉は(驚くべきことに)法令に定めがなく、分類名としては不適切との意見がありました。これは、根拠法にある「薬局」に修正となります。
このように分類の名称や定義を一つ一つ見直してゆきます。その結果、次のような新しい項目や修正される項目が出てきました。

(産業動向を踏まえた新設項目)

  • 電気炉・電熱装置製造業
  • レッカー・ロードサービス業....自動車の搬送や故障対応業
  • 食料品スーパーマーケット....これまでは各種食料品小売業に包含(土産物店やたばこ屋店と同じ枠)
  • 小売業の分類を再編成....「均一価格店」(「ワンプライスショップ」)の新設など
  • 施設給食業....現行の配達飲食サービス業を、配達飲食サービス業(宅配ピザや仕出し料理のデリバリー)と施設給食業に分割
  • ペストコントロール業....ねずみ、シロアリ、ダニ、ハチなど有害生物の駆除業

(制度改正にともなう新設項目)
主にインフラ系の事業制度が変更されたことによる分類変更です。

  • 電気業の「発電所」「変電所」を「発電業」「送配電業」「電気小売業」「電気卸供給業」
  • ガス小売業
  • 醸造酒類製造業等  etc.

●主な議論
前回(4月6日)の部会では、次のような意見が出ました。(以下、議事録(※2)から要約)

  • 国際分類と整合をとるべき。日本国内の従来分類との継続性も重要だが、国際分類とできるだけ合わせる必要がある。ただし国際分類は統計制度が整備されていない国でも調査ができることを重要視しているので、絶対正しいわけではない。
  • 分類項目の見直しについては、その活用と回答者負担も考慮すべきである。実際には小分類レベルまでしか使われていないのではないか。
  • 今後伸びるデジタル産業の扱いが未定である。デジタルと非デジタル産業を分離することは難しい。
  • 理論的には、産業分類を供給側のみから再構築することが望ましいが、現実に実行することはまだ難しい。継続検討を課題としておくべきである。

●不易流行
統計、特にその基準についてはいろいろ奥が深いようです。まだいろいろ勉強が必要だということを実感しました。
今回の改定項目にしても、この10年間でどういう業種が産業として大きくなってきたかがよくわかります。デリバリ業などはCOVID-19の影響ですっかり定着しました。
それにしても、こういう分類に用いる用語は、大まかすぎず、細かすぎず、不易流行を備えていなければならず、となかなか難しいものです。■

※1 第16回統計基準部会(2023年4月6日)資料3 日本標準産業分類の変更について https://www.soumu.go.jp/main_content/000874847.pdf
※2 同上 議事録 https://www.soumu.go.jp/main_content/000874847.pdf

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