人口と地域(2)~フューチャー・デザイン

(2023.05.08)
4月28日の財政制度分科会の話題の続きです。
(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20230428zaiseia.html)

●主な議題
ここでは、次の3つのサブテーマが討議されました。

  1. 少子化総論
  2. 東京一極集中・税源偏在と地方財政に関する課題
  3. 少子化が進展する中での教育の質の向上

今回の記事では「2. 東京一極集中」の内容に絞って書くことにします。

●地方公共団体の状況

  • 収入源の一つである「地方交付税交付金等(地方交付税交付金+地方特例交付金)」は約16.4兆円(一般会計歳出の14.3%
  • 債務については、「建設地方債」、「臨時財政対策債」、「交付税特別会計借入金」などがあり、建設地方債の残高はかなり減少(106兆円)したが、臨時財政対策債(49兆円)と交付税特別会計借入金(28兆円)の償還は遅れている
  • 地方公共団体の職員数の減少は同時期の生産年齢人口(15~64歳)の減少割合と同程度
  • 行政効率化の一つとして「プッシュ型給付」が期待される(マイナンバーカード申請9,600万件、公金受取口座登録数5,000万件)
  • 人口減少の影響が上下水道事業の経営に影響。料金水準の適正化にあたり、住⺠との合意形成が重要。"Future Design"を活用して住民意識の変革をおこなった事例など(岩手県矢巾町)
  • 東京都と道府県との財政力(※1)は、東京都1.375、道府県0.568。10年間でこの差は0.561(2013年度)→0.807(2022年度)と拡大
  • 2021年度普通会計決算では、地方の財政状況はコロナ禍前より大幅に改善。(対前年度比で実質単年度収支の黒字額が増加、経常収支比率が低下、基金残高が増加。)

●フューチャー・デザイン
地方の事業において難しいのは、地域住民を含むステークホルダーの合意形成です。たとえば人口減少の影響により、上水道の維持管理が問題化しつつありますが、水道料金の値上げには住民の反対が強くて難航しがちです。
そこで”バックキャスト”の考え方をワークショップに持ち込んで、「現役世代」による合意形成ではなく、「将来世代」が現役世代に交渉する、という形の議論をおこないます。将来世代の利益をまず考えて、そこから今取り組むべき課題を見直すというものです。これがフューチャー・デザイン(※2)とよばれる手法です。
岩手県矢巾町ではこの手法で住民が議論し、住民自ら水道システムの維持のために水道料金の値上げを提案するに至りました(※3)。もちろんその結論に至るまでには、準備として町内でのアンケート調査や水道施設の見学会開催など、住民の参加意識の醸成も必要でした。
フューチャー・デザインの手法は矢巾町以外でも幅広く使われつつあります(※4)。

ちなみに、この分科会資料を見るかぎり、「2. 東京一極集中・税源偏在と地方財政に関する課題」の”一極集中と税源偏在”は何を指すのか判然としませんでした。■

※1 財政力=単年度の基準財政収入額と基準財政需要額の比 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/kouhu.html
※2 財政制度分科会(2023年2月17日)資料2「将来世代の視点(フューチャーデザイン)」 https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20230217/02.pdf
※3 「矢巾町における住民参加型水道事業ビジョン策定とフューチャー・デザイン」 https://www.hit-u.ac.jp/kenkyu/file/27forum3/YOSHIOKA.pdf
※4 高知工科大学フューチャー・デザイン研究所 http://www.souken.kochi-tech.ac.jp/seido/practice/index.html

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