郵便ポスト

(2023.04.15)
郵便ポストというと、つい赤くて円筒形のものを思い浮かべます。実際にはボックス形のものが最も多いそうですが、日本人にとっては、あの円筒形の赤いポストは完全にアイコンと化しています。最近ではレトロの風潮によって、わざと円筒形のものを保存する動きもあるそうです。

郵便ポストに関わる話として、4月12日に総務省で情報通信審議会郵政政策部会(第31回)が開催されました。(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/02tsushin10_04000558.html)

郵便事業は今、苦境に立っています(※1)。
私信の減少、ビジネスにおける紙媒体の減少により、取扱量が減った代わりに、配達先が増加しており、配達コストは減りません。労働力確保も難しい状況です。配達頻度、送達日数等のサービス水準の見直しが必要となっています。郵便の代名詞であった”全国一律のユニバーサル・サービス”の維持が課題です。

●郵便局の新しい展開
郵政政策部会では、いったん郵便事業をどのように立て直すかを答申した3年後に、もう少し具体的な出口を議論し始めました(※2)。
それは地域の郵便局という存在を、地域のサービスセンターとして位置付け直すという考え方です。
主なアイデアは次の3点です。
①郵便局を通じたマイナンバーカードの普及や活用
②郵便局における自治体事務受託の拡大
③郵便局と様々な公的基盤との連携の促進
その他、郵便局のDX・データを活かした地域貢献や、郵便局のスペース・人材を活用した地域おこしも論点に上がっています。
すでにこれらのサービスは各地で試行的に実施されているそうです。
最近の第31回部会(4月12日)では、マイナンバーカード普及活動はじめ、主に郵便局を活用した地方活性化・地域貢献の取組状況が報告されました(※3)。

●郵便局の存在感
地方公共団体の数は一定(1,741)でも、その支所・出張所の数が3%弱減少しており、地域の行政サービスの力がだんだん低下している状況があります。
一方、郵便局のほうは、日本郵便株式会社法と省令により、あまねく全国の市町村においても、一以上の郵便局を設置しなければならず、さらに過疎地においては、改正民営化法施行時の郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とする責務があります。つまり民営化後も郵便局数(簡易郵便局含む)24,000余をずっと維持し続けています。
また設置場所についても、コンビニ(全国5万店余)が都市部や幹線道路上に集中しているのに比べて、郵便局は密度が均一であることが特長です。(図は※2から引用。)

●民営化の歪み
明治以来の歴史的経緯があって、今の郵便局ネットワークがあるのですが、それを残したままの民営化は、どう見ても経営的に無理があります。公的な支援がなければユニバーサル・サービスは維持できません。
逆に、民間企業に脱皮しきれなかったために、地域との過度な密着(癒着)がときおり問題にもなっているようです。

●これからの姿
今の郵便局ネットワークの特色を生かし、行政サービスも部分的に担うかたちで、半ば公的な地域センターとして発展していってほしい、と個人的には思います。常に人が集まっている空間は、地域コミュニティにとって情報やモノが集まる場所というだけでなく、地域に住む人同士の情感も共有できそうです。

赤い郵便ポストがポツンと立っている姿に、なぜか心をひかれるのは、”必ず郵便物が届く”という長年にわたる郵便事業への信頼と、生活の記憶が紐付いているからでしょうか。■

※1 情報通信審議会郵政政策部会(第24回)(2019年9月10日)資料24-1「郵便サービスのあり方に関する検討 答申(案)」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000644088.pdf
※2 情報通信審議会郵政政策部会(第25回)(2022年10月14日) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/02tsushin10_04000527.html
※3 情報通信審議会郵政政策部会(第31回)(2023年4月12日) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/02tsushin10_04000558.html

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