不登校
(2023.04.13)
4月6日に、文科省より「不登校に関する調査研究協力者会議(第6回)」(2月14日開催)の議事要旨が公開されました。
(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/108/001/gijiroku/mext_00005.html)
1月31日に永岡文部科学大臣が記者会見において、不登校児童生徒への対策を年度内に検討することを表明して、この協力者会議が開催されました。
この前に、岐阜市の「不登校特例校」(特別な教育課程を編成する学校 ※1)を永岡大臣が訪問したことがきっかけになっています。
●不登校の実態
2021年度の統計では、小中学校の不登校児童生徒数は約24.5万人で、1年で4.8万人増加。これは9年連続の増加で、過去最多の人数。
学年が上がるほど人数が増え、中3では5.8万人に達しています。このうち、90日以上の欠席者数は13.4万人。
不登校の理由としては、(いじめを除く)友人関係(9.7%)、勉強関係(5.2%)、親子の関わり方(8.0%)、自分の生活の乱れ(11.7%)と無気力(49.7%)が目立ちます。理由は一人一人かなり違うものと考えられます。いじめ(0.2%)というのは意外と少ない印象です。
参考として、高校の不登校は約5万人です。
●支援体制の実態
2023年度予算によって、スクールカウンセラーの全公立小中学校への配置(27,500校、週4時間)、スクールソーシャルワーカーの全中学校区への配置(10,000中学校区、週3時間)がようやく実現されます。
しかし教育委員会へのヒアリングでは「不十分」という回答が100%となっており、現場ではさらなるカウンセラー常勤化が必要と認識されているようです。
●道半ば
不登校を巡る施策はいくつも手を打たれてきましたが、まだ道のりは半ばという状況です。
最近では、2021年に設置された「不登校に関する調査研究協力者会議」の報告書(※2)が公表され、その中で10項目の対応策が提示されています。その筆頭に掲げられているのが、”教育機会確保法及び基本指針の学校現場への周知・浸透”です。すでに2017年に施行されている確保法の趣旨が、いまだに現場に浸透していないという問題意識です。
●方向性は?
2月14日に開催された協力者会議では、永岡大臣自ら出席して、議論の方向性について4つの項目を示しました。
①30万人の不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びを継続する。
②心の小さな SOS を見逃さず、「チーム学校」で支援する。
③学校を「みんなが安心して学べる」場所にする。
④「不登校」を科学的に把握する。
これらの文科省の考え方について、出席した協力者委員からはいくつか注文が出ました。特に”学校中心主義”に回帰した点は不評のようでした。その他、教員の働き方改革の視点も指摘されました。(以下、議事要旨から一部を抜粋。)
- 【委員】子供が出すSOSは不登校に限ったことではない。様々なSOSに対してどのように対応するか明確にすべき。教職員も忙しいと思うが、一人一人の対応も保護者としては期待したい。(後略)
- 【委員】不登校は問題行動ではないというこれまでの前提から、退行した印象さえも抱くような危機感も感じた。学校というのは困難を乗り越えることを美徳とするなどこれまで子供たちにSOSを出してはいけないような学校風土があったかと思う。(後略)
- 【委員】4つの項目の方向性はなぜ今のタイミングで出されたのか、また、不登校のみならずいじめの問題にも置き換えても成り立つ部分が多いと考えられ、いじめも不登校も、様々学校が抱えている課題の中で共通することが多々ある。(後略)
- 【委員】学校が過度な役割を期待されると教職員の負担が大きくなると感じた。(後略)
●大人の問題より難しい
成長途上にあるこどもの問題は、大人の問題よりも解決は難しいと思います。こどもには外部からの作用が、後々どのような心理的な影響を残すか、わからないからです。大人のうつ病も社会問題化していますが、いろいろな理由で不登校になってしまったこどもへの対応は、さらに繊細さを要求されます。保護者や学校の教師ですら、自信を持てません。
先にテレワークに関連して、”なぜ会社に出勤するのか”を問い直すと書いたことがありますが、不登校に対しては”なぜ学校に行かなければならないのか”を大人がきちんと答えなければいけないと思います。あるいは、こういう問いかけでもよいでしょう。
”学校がなくなったら、何に困るのか”■
※1 不登校特例校の設置者一覧 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1387004.htm
※2 「不登校に関する調査研究協力者会議報告書~今後の不登校児童生徒への学習機会と支援の在り方について~」について(通知)(2022年6月10日) https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/108/001/toushin/mext_01151.html