地方の民主主義

(2023.04.12)
統一地方選挙が4月9日に実施されました。
しかし地方議会の状況は民主主義のあり方としては問題がありそうです。
”選挙のある41道府県議会の総定数は2,260で、うち565人が無投票で当選。特に山梨は6割を超えている。”
”投票機会が失われた選挙区は全体の37%の348に上る。岐阜、和歌山、徳島は6割を超える選挙区で論戦が行われない。”(日経新聞4月2日社説)

選挙以前の問題として、地方議会の議員立候補者が満足に集まらない現状が見えます。

●今後の地方制度はどうあるべきか
4月11日に総務省の「地方制度調査会」専門小委員会第13回が開催されました。
2022年2月に第1回が開催され、以降、今回までに13回の議論がおこなわれてきました。
本来、この専門小委員会の役目は、
「デジタル・トランスフォーメーション(DX)と新型コロナウイルス感染症対応で直面した課題等を踏まえ」、
「ポストコロナの経済社会に的確に対応する観点から」、
国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の関係その他の必要な地方制度のあり方
を検討することです。
この中では、行政のデジタル化や地方公共団体の広域連携などの議論と並行して、「地方議会」のあり方についても議論が進められました。その結果は答申の形でまとめられました(※1)。

●地方議会の課題
この答申の中で、地方議会についてのいくつかの課題を挙げています。

  • 女性議員の割合】都道府県11.8%、市17.5%、町村11.7%
  • 60歳以上の議員の割合】都道府県43.0%、市56.5%、町村76.9%
  • 無投票当選者割合】都道府県26.9%、指定都市3.4%、市2.7%、町村23.3%
  • 無投票当選の傾向】女性議員が少ない議会や議員の平均年齢が高い議会において無投票当選となる割合が高い傾向
  • 議員の構成は、性別や年齢構成の面で多様性を欠いている、また一部の議員の不適切な行為(ハラスメント等)が見られる ⇒住民の議会に対する関心を低下させ、住民から見た議会の魅力を失わせている ⇒議員のなり手不足の原因の一つにもなっている

少子高齢化の波が地方議会に押し寄せているだけでなく、議会そのものの姿が古すぎることが問題のようです。
たとえば女性や若者の参画がもっと増えても然るべきでしょうし、育児や介護に追われている人も議会で意見を述べる機会があることが望ましいでしょう。
そういうところから地方議会の改革が必要なようです。

●そもそも地方議会の位置付けがあいまい
全国の都道府県議会・市議会・町村議会の議長会から出された要請文によると、驚いたことに、そもそも「地方自治法」では「議会の位置付けが明確に定まっていない」そうです。

  • 日本国憲法 第九十三条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
  • 地方自治法 第八十九条 普通地方公共団体に議会を置く。

まず議会や議員の役割や責任を明文化することが必要なようです。

●議会の改革案
次のような案が検討されています。

(多様な人材の参画)

  • 夜間・休日等の議会開催 ⇒勤労者の参画
  • ハラスメント相談窓口の設置 ⇒女性や若者の参画
  • 会議規則での育児・介護の取り扱い明確化 ⇒育児・介護にたずさわる人の参画
  • 小規模市町村での処遇改善(議員報酬の水準見直し)
  • デジタル技術の活用 ⇒SNS等を使った情報発信、ペーパーレス化

(立候補環境の整備)

  • 立候補のための休暇制度、議員との副業・兼業

(議会のデジタル化)

  • 本会議へのオンライン出席対応(本人確認、第三者の関与ないことの担保等)

単なるデジタル化ではなく、「政治参加機会の拡大」と「議会制度の革新」の両方を狙った改革を進めようとしています。ただしこのようなデジタル改革を進めるために、特に小規模な市町村には財政的な支援も必要となります。
切迫している地方議会からどんどん改革が進み、横並び志向の強い地方がそれに追随していく形になるのではないでしょうか。

赤ん坊を抱きながら、議会にオンライン出席する議員がいてもよいと思います。■

※1 第33次地方制度調査会「多様な人材が参画し住民に開かれた地方議会の実現に向けた対応方策に関する答申」(2022年12月28日) https://www.soumu.go.jp/main_content/000854239.pdf

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