女性が希望を持てる産業政策

(2023.03.17)
3月14日に「産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会」第13回が開催されました。(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/013.html)
ここでの議題は「健康社会」と「地域の包摂的成長」の2つでしたが、特に後者が気になったので、これを取り上げます。
資料のタイトルは「地域の包摂的成長-地域の活力が生み出す若者・女性の「希望」の回復と少子化社会の克服-」というたいへん長いものです。
●若者が希望を持てる産業政策を目指す
少子高齢化の中で地域の力がどんどん低下しつつあることは事実です。これを打破するために、地方での「良質な雇用機会」と「豊かな暮らし」が持続的だと思える環境を目指す、という目標を掲げています。
特に深刻な若い女性の流出に対して、女性が希望を持って地方で暮らせる環境を実現するための産業政策を考えようとしています。

●若者・女性が東京に流出する理由
まず挙がるのは「希望する職種や賃金等の待遇が良い仕事が見つからない」というものです。統計で見ると、2007年以降15年間の転入超過数の累計で、女性92.4万人、男性74.6万人が東京圏に流入しており、女性のほうが多い状況です。
なぜ女性の方が流出しているのか。
理由の一つは「地方で求められる職種における女性活躍が、地方では不十分」という点です。「生産工程」や「建設・採掘」等の職種をみると、東京圏のほうが女性比率が高いという調査結果があります。これらの職種は地方の女性には不人気ということです。
●東京圏の住みづらさ
逆に東京圏ではさまざまなデメリットもあります。まず東京圏の可処分所得の順位はずっと下位です。また東京圏の可処分時間も短い。つまり時間に追われながら稼いだ金も自由に使える余裕がないという状況です。東京圏では、仕事の魅力は多いものの、けっして豊かではないと言えます。
●子育て世代に向けた政策
就職を乗り越えたとして、女性にとって次の壁は結婚、子育ての壁です。
岡山県N町の例が印象的でした。人口6千人のこの町では出生率2.95を達成しています。仕事・雇用の取組として「しごとコンビニ」を実施。町内の個人・企業・役場が切り出した細かい仕事を、子育て世代と高齢者が一緒に行い報酬を得る形が地域のつながりをつくり、高齢者が子育て世代の悩みや不安に共感し、世代間相互理解に役立っているといいます。こういうちょっとした工夫で、地域社会が円滑になっていく可能性を秘めています。

●要するに地域の中堅・中核企業が重要
若者に魅力的な仕事を提供できるかは、地域の企業にかかっています。現に新しい発想でビジネスを始めたりする企業も増えつつあるようです。地域の企業がさまざまな分野で挑戦して、さらに従業員の満足度も高いという事例は、中小企業庁の事例集の中にはふんだんに見つかります。
今回の資料では2024年度に地方と東京圏との転出入を均衡させる、という数値目標を出していますが、現実には難しそうです。しかしいろいろな政策をこの課題解決に向けて集中させることによって、その方向に少しでも近づいていくことは大切です。
●若手有志の熱意が伝わる資料
発表者は「地域の包摂的成長」検討チームという、経産省系の人たちの集まりです。もう少し詳しく読むと、このチームは計50人(うち地方経済産業局職員: 16人、20代以下職員: 19人、30代職員: 25人)の若手集団です。この人たちの頭脳を結集して作成した資料は熱い。■

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