学校のDX

(2023.03.08)
ブログに何も記事がないと寂しいと思い、定期的に投稿できる素材を考えていましたが、元手をかけずに集められて、かつ常に新しい情報が提供されるものとして、政府系のニュースに着目してみました。
もちろんこういう政府の公表は、メディアの専門分野ごとの記者がこぞって集めて記事にしているはずなので、私ごときが新しい付加価値をつけることは容易ではありません。とはいえ、年相応の人生経験があり、特に過去数年間はシンクタンクの中でずっと科学技術政策を追ってきたので、少しは違った切り口で情報の断面を示すことはできるかもしれないと思い、書き始めてみました。

素材の取り上げ方や文章の書き方は特に決めていません。今日はたまたま目にした次の材料を使うことにしました。

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2023年3月8日公表
文部科学省「GIGAスクール構想の下での校務DXについて~教職員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/175/mext_01385.html

「GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議」という(長い名称の)会議が、初等中等教育局長名で2021年12月に設置されて、計11回の会合を重ねてきました。その討議まとめが上記の報告書です。

会議の委員は、教育関係者(教育委員会、学校の校長、塾など)、教育コンサルタント、教育関係の研究者、情報科学関係の研究者といった顔ぶれで、19名でした。
この会議の議題は「校務のDX化」です。

●GIGAスクールと先生
「GIGAスクール」構想の予算で、全国で生徒1人1台と高速通信ネットワークの整備が進みましたが、ようやくハードウェアのかたちが整ったという段階です。肝心の”どうやって使うか”というソフトウェアの話はまだこれからです。
さらに学校の先生方の負担になっているのが校務の事務処理です。これがブラック勤務を強いられている大きな要因です。これを改善、いや改革しないと、現場の先生方が疲弊して、GIGAスクールを運用することも不可能となります。
●校務の現状
学校の校務が今どういう状況かは、この報告書の頭に10項目も挙がっています。少し煩雑になりますが、全部書いてみましょう。
  ①校務処理の多くが職員室に限定され、働き方に選択肢が少ない
  ②紙ベースの業務が主流となっている
  ③汎用のクラウドツールと統合型校務支援システムの一部機能との整理
  ④教育委員会ごとにシステムが大きく異なり、人事異動の際の負担が大きい
  ⑤校務支援システムの導入コストが高く小規模な自治体の教育委員会で導入が進んでいない
  ⑥帳票類の標準化が道半ば
  ⑦学習系データと校務系データとの連携が困難
  ⑧教育行政系 ・ 福祉系データ等との連携が困難
  ⑨ほとんどの自治体で学校データを教育行政向けに可視化するインターフェイスがない
  ⑩校務支援システムが災害対策が不十分な自前サーバで稼働しており、大規模災害により業務の継続性が損なわれる危険性が高い
さらに、ここには教育者の働き方改革の話も重なってきます。
●共通する問題
ここまで書いてきましたが、上の項目を眺めて、”おや、これは中小企業のDXも同じではないか”と感じました。学習系とか校務系とかの話は、開発系と営業系と言い換えても通じそうですし、教育委員会ごとの云々の個所は、本社と支店の話とも言えます。

予算が乏しい、人員が少ない、ITのスキルが足りない、といった溜め息は、やはり同じです。国の補助金を使って、ベンダーに言われるままに、パソコンやネットワークを導入したのはよいが、それを使いこなせておらず、新しい教材を作ることもできない。DXのような高尚な話にはならず、職場にパソコンを導入するだけで力尽きてしまう。

規模の違いはあるものの、日本国中のいたるところで見られる光景のような気がします。
つまり、DXにまつわるこの種の問題については、私たちの職場には根底に共通した何かが存在していると見てよいでしょう。それを探るために、これからじょじょにいくつかの政策文書を取り上げて見ていきたいと思います。■

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